出発準備
ミル討伐のため、指導室で遠征の準備をする一同。
「まさかこんなことになるとはなー、、、」
「いやならついてこなくてもいいんだよ~、私たちだけでやるから」
(・。・)
「ごめんね、まきこんじゃって」
指導室にて狭い部屋に荷物を詰め込む四人。
「いいの、いいの~。こういう時のために強くなったんだから」
手の平を縦に振りながら答えるリオン
「なんでそんなウキウキなんだよ。一応命の危機もあり得るんだぞ。お前一回ぶっ飛ばされてるし」
朱莉はあきれながらその景色を見ていた。
「な~にあれはただの不意打ち。まさか負けると思ってんの?」
「思うだろ。結晶人だぞ」
(・。・)
突っ込みをしつつも準備を進めていた朱莉の手が止まる。
「おい、おーい。遊里ー、生きてるかー。遊里!」
( ゜д゜ )
ハッと驚く遊里。どうやらかなり上の空だったようだ。
「どうしたの~遊里君。ボーっとしてるけど」
頭を横にブンブンと振る。
「んま、大丈夫ならいいんだ」
全員が全員に気を遣う。あの事件以来、カイリはまともに表を歩けず、その仲間である彼らに対しての疑問の目も続いている。ミル討伐がとんでもない速度で進められている理由の一つだ。信頼を取り戻す。
「聖教会が来ると言っても心配になってきたな、、、結晶人だろ?」
パッキングがいち早く終わった朱莉が暇そうに質問する。
「勝てる戦力分つぎ込んでくれるでしょ、聖教会は。それに、侵略してきたときに行ってた言葉がほんとなら、私たちは自由に動けるしね」
その言葉で思い出したのか朱莉はカイリの顔を見た。
「お前、マジで死ぬなよ?オレらのためにもな」
荷物整理をひと段落させ立ち上がるカイリ。
「大丈夫。多分大丈夫。多分、、、多分、、、」
かなり心配している様子であった。
いつも通りすぎるの反応だったのか、逆に緊張がほどける。実際に、今気を引くのはカイリではなく遊里であった。
(・。・)
「なあ、ほんとに遊里は大丈夫なのか?ガチで心配になってきたぞ」
パッキングの腕は止まり、口をあけながら少し上を見続ける。虫に夢中になる少年のようであった。
ガタッ
話しかけられたことに遅れて気づく遊里。驚いたのか体をびくつかせ、顔をぶんぶんと振る。
(普段から何考えてんのかわかんねえけど、ここまで行くと理解不能だな)
この日の指導室はどこか静かであった。
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その夜、リオンは寮の屋上でグラウンドを眺めていた。
「、、、星空に練習風景。きれいで、ばえるな~。そう思わない?」
リオンはどうやら後ろから近づく朱莉に気付いているようだった。
「んだよ、気付いてたのか。驚かそうと思ってたのに、、、んまあ、綺麗だな」
屋上の柵に手を置く二人。しばらく風を感じていた。
「どうなるんだろうね、私たち。」
今まで元気な姿を見せていたリオンが不安を漏らす。
それに対し、朱莉は柵を後ろにし、
「さあな。やれ指導者は変だ、やれ事件には巻き込まれるは、、、でもジグザグってか割とスムーズな感じもするってか、、、どうなんだろうな」
と、少し笑みを浮かべながら答えた。
「謎が謎を呼んで、、、カイリ君とかかわった途端、ハチャメチャになっちゃったよ~。全部彼中心に動いてるっていうか、物語の主人公みたいっていうか」
「あー、それめっちゃわかるわ。あいつを立てるのに利用されてる感じ、、、って言ったら流石に失礼か」
下の通路を見るリオン。暗い中、仲睦まじく歩く生徒たちがいた。リオンにはどう映ったかはわからないが、彼らが通り過ぎた後、振り返る勢いで話し始めた。
「まあ、ここまで来たら利用されてみるか~」
伸びをしながら話すリオン。不安が少しでも収まったことを確認したのか朱莉も安堵する。
「だな。さ、温泉行くぞー」
地面に置いていた着替えの入った袋をぶんぶん振り回しながら屋上の出口へと向かう朱莉。リオンは少し、立ち止まっては今度は月を眺める。
「ミルの領域かぁ、、、行く価値がある。フッ、互いに利用し合うってのもいい関係かもね。温泉温泉♪」
ガチャ
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季節は気づけばもう秋になり、肌寒い中四人は国センの端っこ、人目のつかない場所で荷物を持ち待機していた。
「特に作戦もたてずここまで来たけどいけるのかね~」
リオンが遠くをじっと見つめセミの声に負けるボリュームで呟いた。
「わからないけどー、行けると思う、、、思う」
「結晶人以外なんも分かんねえんだから作戦もくそもないだろ。周りの視線のせいでまともにトレーニングできねえし、オレらが強いうちに行っとかねえとな」
文句を垂れるように話す朱莉。
「本当に迷惑かけたね」
「これからもかけるだろ、お前は」
(-"-)
「遊里君はー、、、なんでそんな震えてんの?」
緊張であまりに小さいカイリの声は車の音にかき消され、届いてすらいない。
「なんか、、、ごめんね」
どうやらこれから起きる激動の予感からか変な気まずさがあった。
ガチャ
裏口に一台の商用車が止まり、そのドアが開いた。
「うわすご〜。本物の聖教会だ」
「かっけーなー。初めて見るわ」
「あの服、東日本にいたら一度はあこがれるんだよねー」
特徴的なマスクと白のマントで身を包み、青の十字架が彩られた鎧を着る者。対能力犯罪者集団、聖教会だ。
誰もが聞いたことがある組織、東日本における非合法的ではあるが実質的な警察権を持っている彼ら。
カイリ達は負の感情に抗いながら静かにときめいた。
遊里を除いては。
「初めましてやね~みんな。テレビで見るのと変わらんわ」
関西弁を話す若手のリーダーのような人に遠くから手招きをされる四人。
朱莉は一度振り向いて国センにお辞儀をした。
「無事に帰ってこれるといいけどな、、、」
小さくそう呟いく。
朱莉の後に続いて三人も頭を下げた。そこに前例はなかったが、やらなければいけない気がしたのだ。
しばらくして振り返り、歩みを進める。
「よ~し!いっちょミル討伐と行きますか~!」
リオンがそう意気込んだ。その声は少しだけ大きく、少しだけ国センにこだました。




