討伐命令
結晶体が国センを襲撃した次の日。ニュースや新聞、SNSで多くのデマや噂が飛び交う。「政府の陰謀」だの「犯人は天使」だの。虚偽は広がり、真実へと変わろうとしていた。
しかし、その中でも特段、結晶体が放った言葉を生徒たちが広めたことによって注目を集めた記事がある「犯人はミルであり、事件の原因は、柊 カイリにある」というもの。
AIで作られた動画や音声が日本中、いや世界中に拡散され、世間の目は一気にカイリに集まり、その視線は凶器と化していた。
「取り返しのつかない事態になってしまったね。」
朝の保健室の中、リオンと遊里が寝ているベットの近くに当事者たちとユナ、ハルが集まっていた。
「、、、」
「、、、」
「、、、」
カイリ、朱莉、遊里は黙り込んでいる。誰も視線を合わせようとしない。全員何かしらの負の感情に打ちひしがれているようであった。
ただ、未だ眠り続けているリオンを心配そうに見つめる。
秒針が響く中、気まずさに耐えられなかったのか、風磨が独り言をつぶやいた。
「、、、あの仮面を付けた少女はなんだったんだ?」
風磨がその姿を知るはずもないミルの存在を告げたことで空気が一変した。
「ミルがいたのかい?」
ユナが真剣な眼差しでそう質問する。
「あぁ、まあ、はい。ミル、、、追放者ミル?あれが、、、そうだったのか」
事件の張本人と戦っていたことに気づき、驚いた表情を見せたが、次の瞬間には疑問を浮かべるようにあごに手を伸ばしていた。
「そっちにはミル本人がいたのかよ、、、クソッ」
この一連の騒動の犯人はミルであると報道が繰り返され、多くの人間が彼女を目の敵としていた。それは朱莉も例外ではない。
「ふざけんなよ、、、こんなにたくさんの人を巻き込みやがって。カイリが、、、リオンがなんかしたってのかよ、、、」
小さく、しかしながらも力強く、寄りかかるベットを握りしめ言葉にする。
もうだれも口を開かなかった。いや、開けなかった。
しばらくし、あごに手を当てていた風磨が口を開く。
「はあー、、、。違和感が、、、」
ほんの小言を言った風磨に視線が集まる。
「ミルと相対した時、とてつもない力の差を感じた、、、少しでも敵意があればリオン含め俺らは一瞬で殺されてたはずなのに。全部、、、わざと当ててこないような、もしくは弄ばれてたか。こっちが一方的に攻めて勝手にエネルギーを使い果たしただけ」
遊里が深く頷く。
「なにか突っかかるんだよ、、、」
「人を傷つけて楽しんでんのなら許せねぇ」
沸々と怒りが増していく朱莉。
「どっちでもいいよ。ただ真相は調べなくちゃ」
「起きたじゃねえか」
「おぉ!びっくりした!」
(゜o゜)
「、、、」
リオンが寝ころんだままそう言った。
「走ってた時に不意打ちドカン。くっそ~悔し~。私ミルに恨まれるようなことしてないと思うだけどな~」
思っていたよりも元気なリオンを見て一安心する一同。
「カイリ君はどう思う?」
口を閉じていたカイリにユナがそう聞く。
「、、、止めなきゃ、、、それ以外に道はないし、そうしなくちゃいられない。国センに」
表情を曇らせるユナ。
「そうか、、、」
その声は少し残念そうであった。
「オレも行く」
「でも」
「こんなことされて黙ってられるかよ。お留守番だけは勘弁だぜ」
もう止められそうになかった。
「私も、襲われた理由を知りたいな。それに負けっぱなしね~、、いやじゃん?」
(-_-)
風磨にも意見を聞くために元居た場所を振り替えると、そこにはもう姿はなかった。
「風磨、、、アイツどこまで無情なんだよ」
呆れた顔をする四人。カイリは特に。
再び沈黙が流れた後、ユナは決意を固めたように息を吐いた。
「はあー、、、分かった。君たちにはミルの討伐を依頼する。だけど、さすがに不安だその時には聖教会にもついてもらう。」
全員が納得し、顔を振る。ただ一人、ユナだけは不服そうであった。
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ユナの部屋へと移動する。
カイリとHigh Westの遊里は二回目、リオンと朱莉は初、かつ、この部屋に入る動機もかなりのモノ。四人の目は緊張からか泳いでいた。
カイリ達に関する書類を机の上に置き、それが宙を舞う。あまりに多くの書類に次々とサインと印鑑が押されていった。
「こんなに書類が必要なのか、、、すごいな」
「多分東日本に行くことになるかも。あの書類の量は」
「マジ!?ちょっと移動するだけでこんな確認が必要なのかよ」
紙の動く音にかき消されるような音量でこそこそと話す朱莉とリオン。
紙は次々と机に並べられていき、最後に残った一枚だけ机の中央にスッと滑り落された。
椅子に座ったユナが真剣な表情で四人を見つめる。唾をのみ覚悟するカイリ達。その真摯な表情を見た。
「君たちを東日本の命に従い、追放者・ミルのもとへ派遣する、、、、、健闘を祈る!」
ダンッ
力強く印鑑が押された。
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暗闇に包まれた国セン。ミルの討伐が言い渡された日の夜である。
遊里は遠征の準備を終え、寮の廊下を歩いていた。
トテッ
小さな足音がし、顔を上げる。
そこにはユナがいた。
(・。・)
頭をコクリと傾ける。ユナはゆっくりと遊里に近づき、耳元で彼にしか聞こえない声でささやいた。
「~~~~~~~~~~~。最悪、、、手に掛けたってかまわない」
その言葉に驚き、後ろを振り向く。
そこにユナの姿はなかった。




