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混沌の方向へ

気づけばもう夏も終わりに差し込んでいた。


夏の大会が終わってからはいつも通りの日常、いつも通りトレーニングを日々重ね、地方での大会やスポンサー主催の大会で三人は選手として、カイリは神器の件や能力の件、様々なことが騒がれているため選手としては出場せず、指導者として、みるみる成績を伸ばしていった。


次の地方大会に備えるため、夕方に一人国セン最寄りのショッピングセンターに向かうカイリ。


国センの周囲は東日本側は自然で、西側は街で綺麗に半分になっており、東日本側は練習用として。街は学生と住民の生活基盤であった。


(次の大会は北陸か~、みんなに力つけてもらって、頑張ってもらわなきゃ!そのためにも食料たくさん買って~♪、、、ん?)


国セン周りの街は碁盤目状に作られており、似た景色が多い。


「あ、これ絶対道間違えた。どこだったけなー」


スマホを取り出し、ながら歩きをしながらなんとかショッピングセンターへの道を見つけ出そうとしていた。


町の中心には国センが城のように大きくたたずみ、トレードマークになっている。しかし、カイリはそんなわかりやすい目印があってもなかなかたどり着くことができなかった。


(あれー?こっちじゃないの?だめだマップ見て歩くとなんか違うとこいるし、マップ見ないと普通に間違える!こんなに方向音痴だったっけ~?)


自分の、自分すら知らない弱点にウンザリしながらも歩き続けた。


少し国センから離れ、ちらちらとスマホを取り出し、確認しては曲がり角を曲がりまた歩く。しばらくそんな作業を繰り返し、また角を曲がると死体があった。


(え~?まっすぐ歩けば着くはずなんだけどな~?)


スマホをポケットに入れ、先に死体がある道を歩く。ようやく景色が開けてきた。安心の表情を見せ、鼻歌を歌いながら死体のほうを見る。何気ない夕焼けの中、スキップじみた歩き方から普通の歩き方に変え、なぜか血液のほうへ移動する。そこには何の変哲もない死体が転がっていた。四肢が道のそこら中にバラバラになり、家の壁にはあざやかな模様のように血がついていた。この町はどうやら普段とは何一つ変わっていないようだ。


これを除けば。


「え?」


鳥が鳴き、家の横に植えてある木からはセミの鳴き声が聞こえた。夕焼けが照らす静かな町。


カタンッ


スマホが血液に落ちた。靴にも気づけば染みわたる。血がとにかく多かったらしい、顔面の欠損もひどく、その人の顔を覚えるにはとても難しかった。


表情を引きつらせ、大した景観もないのに驚いたように後ずさるカイリ。


そのあとは、何かに気づいたように遠くを見つめた。


何ら変わらない町。すぐに買い物に行けばよいものを。カイリは後ずさった。驚くようなものもないのに。


人が向こう側の角から曲がってきているのが見えた。


視線が合う。


手からスマホを落とし、なぜか大きな悲鳴を上げた。



死体があった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大きな悲鳴が町に響き渡たる。


そこからは実に早かった。多くの人々がマンションや家から出てきては大きな声を響かせた。


「ぼ、僕はやってない、、、やってないってば!」


人が怖いもの見たさからか徐々にカイリを避けて円状に集まりだし聖教会や警察に連絡しようとする者も現れた。しかし、国センの方向から待ったの声が響く。


「静まりたまえ!」


その声の正体はユナであった。


彼女がそう発言すると民衆はカイリへの道を開け、ユナは歩きながらもカイリと死体、彼女自身を結界領域の中に入れた。


段々と暗い領域にのまれていく。その奥からはハナが民衆に色々と呼びかけていたのが見えた。


結界領域が完成した瞬間、目の前には鉄格子が現れ、カイリの周囲を囲んだ。


彼女の結界領域、一言で表せば地獄そのものであった。赤と黒の壁にそびえたつトーチ、大きな門の前には見たこともない怪物がその目を輝かせていた。


「、、、、、蛇?」


大蛇が赤いその目をかっぴらき、カイリを睨みつける。


しかし、カイリはそれに対し、臆するどころか驚きもしていなかった。ただ、膝から崩れ落ちる。


「僕はやってない、、、、、やってないのに、、、、、こんなことで、、、僕の学園生活は終わるの?、、、」


絶望のまま監獄の地面を眺め続けていた。火の音がパチパチとなり続け、地獄のような景色が続く中、彼だけは無であるようだった。


「、、、、、、、、、、、、、、、、、、」


釈明もしようとしなかった。ただ時間が過ぎていくのみ。カイリは自分自身、今何を考えているのかがわからないもぬけの殻、それだった。



しゅるる



大蛇がカイリのそばに近づいてくる。先ほどとは異なり、細い目だがどこか優しさを感じる視線を送った。鉄格子に頭をくっつける。


それを感じたのか、カイリはその顔をゆっくりと上げる。


彼の顔はどこか遠くを見ているようだった。少しも出ないその力を絞り出し、大蛇に手を伸ばす。


「ほんとにやってないんだよ?、、、、、誰が信じてくれるんだろう、、、、、なんですぐに気づけなかったんだろう。」


大蛇は頭を撫でられとてもご満悦のようであった。景色とは似合わない表情をする。


シュルル


「君は、、、信じてくれるのか、、、」


頭を縦に動かす大蛇。ようやくカイリの表情も少し動いた。


「私も信じるさ。」


その声は後ろから聞こえた。すぐに振り返ると後ろの鉄格子は外れており、先ほどの風景とは打って変わって、水面(みなも)のような美しい景色が広がっていた。


「ティティアにそれほど好まれるとは珍しいね」


再び振り返ると美しい景色の中、カイリのもとに顔をこすり合わせにくる蛇・ティティア。


「その蛇は人の信念が見えるんだ。本性がね。君はよほど美しく見えたらしい。」


遠くに浮かぶ太陽を眺め、背中でそう語りかけるユナ。


「、、、あの、、、僕はどうなるんですか?」


蛇をなでながらユナのほうを向き、この先の不安しか見えないカイリは期待せずにそう聞いた。


「群衆は全員帰らせた。記憶を消してね。」


その言葉にひどく驚くカイリ。


「そ、そんなことできるんですか。、、、で、でもそんなの情報隠蔽(じょうほういんぺい)とかで犯罪になるんじゃ、、、」


カイリの方を振り返り説明した。


「なーに、君はなにもやっていないじゃないか。ただ街に買い物をしに行っただけだ。それのどこが犯罪になるんだ?それに、誰も覚えてないんじゃ犯罪も犯罪にはならない。」


「、、、でも事件は起きてるじゃないですか!あの死体は!」


「あれは死体じゃない。」


「え?」


ユナの言葉に顔をゆがめるカイリ。続けて説明する。


「あれは決して死体なんかじゃない。あの体も血液もすべて結晶で作られたもの、結晶体だ。」


次々来る予想だにできない状況に、困惑を処理できないカイリ。


「え?、、、じゃあ、、、」


少し微笑みながらユナは話を閉じる。


「ここで話すのもなんだ。私の部屋で続きを語ろう。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

国センの本館の一番上、とてつもなく豪華だがどこか日本の美を感じられる部屋の中、二人は席に着いた。


「あ、あの、、、さっき言ってたことは、、、」


足をもじもじさせながらユナにそう聞く。


「まあ、言った通りだが、死体ではなく誰かが作った結晶体だ。つまり、事件も何も起きてない。あそこはただの結晶体がいた道だったんだよ。まあ、強いて言うなら私が記憶を消したことが唯一グレーゾーンかな?」


「よかったぁぁぁーーーーー」


肺の中の酸素をすべて使い、安堵するカイリ。それを見てユナも安心したような顔をする。


しかし、カイリは何かに気づいたようにすぐに顔を上げる。


「え、じゃあ誰があんなことを?」


肘置きにもたれかかり、あごに手を置くユナ。


「そこだ。何か身に覚えはないかい?」


ユナのように肘置きに肘をつくことなく、前のめりで指を絡め合わせ熟考する。


「、、、僕の能力と何か関係したりするんですかね。偽物の死体を発見させるなんて、、、」


ユナはそれを聞き、呟いた。


「あいつらではないのか。」


「? あのー、なにか?」


ごまかすようにユナは首を振った。


「いやいや、何もないよ。ところであの道で死体を発見した時、ほかに何か見なかったかい?」


少し微笑みながらそう聞いてくるユナに不思議がりながらも思い出そうとするカイリ。


「うーーーん、、、、、、、あっ」


過去の記憶がフラッシュバックする。死体を見て後ずさった後、遠くを眺めた。


「あの時、、、建物の上に、、、誰かがいたような気がします!」


ユナは表情を変えないまま首を細かく縦に振った。


「なるほど。それではその特徴とかは覚えているかな?」


「あ、えーと、確か、、、白い服を着ててー、仮面?みたいな。そのー顔が見えなくて、、、」


思い出すためによそを見ているカイリの顔をじっと見つめるユナ。どこか驚いているようであった。


「、、、なるほど。君は”ミル”をご存じかね?」


ユナは椅子から立ち上がり、窓の外を眺めながら聞いた。


「えーっと、どこかで聞いたことがあるような、、、」


なにもかもあやふやな回答をユナの背中に伝える。


「ははっ、そうか。今の子たちはあまり知らないか。」


カイリに背を向けたまま、説明を続ける。


「その”ミル”が今回関わっているかも知れない、自分でいろいろと調べてみてくれ。それと次、”彼女”がどんな行動を誰に行うのか、少し経過をまとう。それまでは私がカイリ君の身柄を守る。それでいいかい?」


「え?ミルが?、、、は、はい。わかりました」


最後の最後まで会話が導かれている気がしたが、勘違いだと言い聞かせ首を縦に振った。


扉に前で頭を下げ、廊下に出る。


(なんでこんなことに、、、)


不安に駆られながら、まばゆい夕焼けに照らされた長い廊下をカイリは歩き始めた。


「まずいことになりそう」

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