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部屋へ突撃訪問

「こちらがアラン……いえ、王子殿下と言った方がいいでしょうか? 王子殿下の使っている部屋です」


 ローズちゃんがこんこんこん、と優しく扉をたたくと、中から扉が開かれた。そこには誰もおらず、こちらに一切視線を向けることなく、机に向かってなにか実験をしている男性がいた。杖だけで扉を開けたのは、彼のようだ。金髪の美しい髪は、ばさんばさんのぎとんぎとんに薄汚れており、ローブから異臭が漂ってきそうだ。


「……アラン。こまめに清浄魔法をかけないと塔から追い出すと、いつも言っていますよ?」


 ローズちゃんが絶対零度のオーラを放ってそう言うと、モノホンは目線は机から動かさず、杖だけ自分に向けてくるっと回した。


「これでいい? 総長」


「はぁ。よろしいです。ところで、貴方にお客様ですよ?」


 ローズちゃんの言葉に、目線を動かさないモノホンが、杖を後ろの簡易キッチンに向けた。縦に振り下ろすと、次々と紅茶やケーキ、茶菓子が運ばれてきた。


「……待ってて。もう終わるから」


「仕方ありませんね。申し訳ありませんが、少々待つことにいたしましょう。彼のしている研究は有益なものですから」


 ローズちゃんのその声を受けて、壮年の男性がローズちゃんの椅子をさっと引いて座らせる。……と思ったら、あたしもいつの間にかムサルトの手によって座らせられ、毒の確認を終えたムサルトが紅茶やケーキを取り分けていた。あたしの好みをばっちり把握して、乾き物やにんにくチップス……ってこれ、どこから出てきた!? ま、いっか。うまいから。

 あたしが満足げにぱりぽりと食べていると、若干引いた視線を周囲から感じた。


「……それ、前も思ったけど、すごい臭いだぞ?」


「まぁ」(困った顔)


「……ここまで言っても食べるのか」


 そんなことを言う王子サマに小首を傾げて微笑んだ。


「なぜでしょうか?」






「……ごめんなさい。少し、空気を換えますね」


 ローズちゃんがそう言って、窓に杖を向けて大きく開いた。どうなっているのか、窓を開けて風が吹くことがあっても、机の上の書類たちは飛ばない。あたしが不思議そうに見ていると、ローズちゃんが微笑んで教えてくれた。


「ミシェル様。こちらは魔力馬鹿がたくさん集まっております。その代わりに体力のない魔力馬鹿が書類拾いで疲弊させないためにも、無駄に余った魔力を様々な魔術式に入れて消費しているんです」


 そう微笑むローズちゃんとお菓子を食べながら歓談していると、モノホンがやってきた。


「……待たせたな。ところで、すごくいいにおいがするが、何の香りだ?」


 モノホンのそんな言葉に、全員の視線が集まった。


「……陛下にこちらのにんにくの香りの香水を献上いたしましたが?」


 作成者のムサルトが代表して答えると、モノホンがにやりと笑って言った。


「ふーん、今戻れば、僕の分のその香水ももらえるってことか?」


 その言葉に、全員が絶句したのだった。



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