ジュレちゃんお披露目
「聖獣……?」
王サマが心底不思議そうにジュレちゃんを見つめた。
⦅なんじゃ? 我は隣国の安寧を守っていた聖獣じゃ!⦆
胸を張ったせいで、ジュレちゃんからも小物感が漂ってしまっている。
ていうか、この王サマ、結構なんでも知っていそうなのに……ジュレちゃんのこと、知らないとかまぢウケる。
「隣国の聖獣が消えうせたことは知っているが、隣国の聖獣のお姿はもっと大きく迫力のあるものだったと記憶しているが……」
眉を寄せた王サマがそう唸った。そこまでは知ってるんだ。あたしがそう思うと、王子サマが困ったように言った。
「秘匿とされた我が国の聖獣の御姿をご存じでしたか。僕も不思議ですが……しかし、こちらにおられる方は聖獣で間違いないです。隣国王家の血を引く僕がそう感じるのです」
「ふむ……」
納得したように顎をさすった王サマを見て、ジュレちゃんが不安そうにあたしたちを見た。
⦅我、一発芸とかするべきか?⦆
(……ジュレちゃん、一発芸なんてできんの? あたし、ちょっと見てみたいんだけど)
(ミ―シェール―!?)
お父様からあたしとジュレちゃんに怒りの念が送られてきた。仕方ないから、あたしとジュレちゃんは押し黙ることにした。……ジュレちゃんの一発芸という単語を聞いて、王サマがわくわくした顔で見ているのは、気が付かなかったことにして。
「……こほん、聖獣様の冗談は置いといて、父上……いえ、陛下」
「父上のままでよい」
そこまで言った王子サマに、王サマが訂正をいれた。
「お前には、うちの阿呆息子の代わりに働いてもらわないといけないからな」
にやりと笑みを浮かべた王サマに、お父様が真剣な顔をした。
(うちの阿呆娘の代わり……)
(お父様ぁ? あたしよりも問題なのは、引きこもりの弟じゃない!?)
(あの子は……お前さえいなければ、まともだ)
(なにそれ? どういう意味?)
あたしとお父様がバチバチとにらみ合っていると、お母様がこほんと咳払いをした。あたしとお父様は慌てて、姿勢を正す。
「そうでした。スターナー伯爵家の皆さまを本物の王子のもとへ案内しなければ……。スターナー伯爵家の皆さまにかかれば、王子を政務に着かせることも可能かもしれません。そうなれば、僕はお払い箱ですね」
さみしそうにそう言った王子サマを見て、豪快に笑った王サマが不敵に笑みを浮かべた。
「お前は、うちの阿呆息子のことを甘く見ているな?」
(そうだった! 早く王子サマのところに行かないと)
(なんでだ?)
あたしが思わずそう思うと、お父様が聞いてきた。お母様と王子サマも横目でこちらを見ている。
(あたしたちが気が付いたのだから、あの子も気が付いているよ。王子サマが偽物だと知った、消えた幽霊が次に現れる場所は、どこだと思う?)




