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王サマとの謁見

「お待たせして申し訳ございません、父上」


 謁見の間に到着すると、王サマが偉そうに座っていた。


(相変わらず偉そうなおっさん)


(ミシェル! 陛下が偉そうなのではない、実際に偉いんだ)


(ほーい)


 嫌そうな顔で、ちらりとあたしたちを見た王子サマは、視線を王サマに戻した。それに合わせて、あたしたちも臣下の礼を取る。


「スターナー伯爵家も一緒だったな。何用だ?」


「先日、陛下に依頼を受けた、」


 お父様(パパ)がそこまで言ったところで、王サマが嬉しそうに身を乗り出した。


「おぉ! あの香水か! 楽しみに待っておったぞ!」


「父上、落ち着いてください」


(……うちの国の王族って、まともな人少なくない? 隣国の王子サマの方が優秀な気がするんだけど)


(ミシェル! 誰もが思ったことを口に出すな!)


(口には出してない。思っただけ)


(だが、我々の話が聞こえる殿下が、困った顔をしているぞ)


 そんな話をしながら、お父様(パパ)が執事長に指示して持ってこさせた箱を開け、中から香水を取り出す。「ふぉぉぉぉ」と、声を出しそうな顔をして、王サマがわくわくとしている様子が嫌でも目に入る。


「こちらをお納めいたします」


 お父様(パパ)の言葉を受けて、執事長が香水の中身を見せてから蓋を戻し、王サマ付きの人に渡した。王サマのわくわくに苦笑いした面々が、安全確認の魔術具を通過するのを確認し、ほっと息を吐いた。


「ふむ、これがにんにくとやらの香りの香水か」


 王サマが嬉しそうに受け取り、ワンプッシュすると、横にいたお付きの人が咳き込んだ。


「父上。無理をおっしゃったのですから、なにか褒美を与えてはいかがですか?」


「ふむ。そうだな……息子との結婚」


「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)


 不敬ととられるかもしれない。でも、王サマの言葉に被せて、思わずあたしがお断りの文句を放った。


(み、ミシェル!??)


 慌てた様子のお父様(パパ)に、王サマが豪快に笑って首肯した。


「そうだったわい。では、なにがいいだろうか……」


 そう言った王サマに、緊張した様子の王子サマが、しかし、余裕そうな表情を取り繕って口を開いた。


「魔法の塔への通行許可、なんていかがでしょうか?」


 控えていた人たちが息を呑む音が聞こえる。魔法の塔というのは、重要なところらしい。実際、家庭教師に勉強をかなり詰め込まれたはずのあたしも名前しか知らなかった。王家にとって大切なところなんだろう……めんどくさ

近づきたくねーな。

 朗らかに笑っていた王サマの目つきが鋭くなり、にこりと笑った。かと思うと、大きな声で指示を出した。


「皆の者、下がれ」


「しかし、陛下」

「それは」

「せめて、護衛の騎士を数名残してください」


 そう言って異議を申し立てる人たちに、王サマが一喝した。


「下がれと言っておる! どうしても護衛を置きたいというのならば、代替として、今すぐ防御用の魔術具を準備すればよかろう!」


 王サマの声に、バタバタと人々が動き、防御用の魔術具が残され、全員退出する。


「ふぅ……これで皆が消えたか」


 王サマは周囲を見渡すと、王子サマを見てニヤリと笑った。


「お前が魔法の塔の通行許可をスターナー伯爵家の者たちに与えようとするということは、正体がバレたのか?」


「え?」


 王サマの言葉に、王子サマが息を呑んだ。そして、その瞬間、首をとられぬように逃げ出そうとした。その後ろ姿に、王サマが制止をかける。


「まて。私はすべてをわかっていて、見逃している。逃げる必要はない」


 驚いて動きを止めた隙に、王サマは王子サマに何か魔法を使ったようだ。


「く、国王の固有魔術は、防御だけじゃないのか?」


「そうだ。しかし、努力によって身に着くものもある」


 そう笑った王サマは、嬉しそうにあたしたちを見渡した。


「ここにいるのが偽王子だと、スターナー伯爵家は見破ったのか。実に面白い。魔法の塔への通行許可を与えよう」


 そう言って、書類を一枚取り出し、何かサインを書いてこちらに向かって差し出した。小物代表お父様(パパ)が震えながら取りに行く。わかる。あたしも王サマこわいもん。


「なぜ、僕をみのがしたのですか?」


 何かの圧と戦いながら、王子サマが問いかける。豪快に笑った王サマが、何事もないように言った。


「なぜかって、魔法の研究ばかりに夢中な我が息子よりも、隣国の王家の血が入るものの我が王家の血も引いているお前の方が優秀だった。それだけだ。それに、お前の触れることのできる情報はこちらで制限をかけておったからな」


 そう言って笑った王サマが、思いついたように王子サマに問いかけた。


「かくいうお前こそ、隣国王家の駒として生きていたはずなのに、なぜスターナー伯爵家に下った? ミシェル嬢の美しさに本気で惚れておったのか?」


「ふ、僕が忠誠を誓っているのは、隣国王家ではなく、その聖獣ですよ。聖獣様がスターナー家に下ったというならば、僕もついていくだけだ」


 王子サマの言葉を受けて、王サマがぽかんとした。そして、意味が分からないと言わんばかりに、問いかけた。


「聖獣がスターナー伯爵家に……? 面白い冗談を言うな……え、まさか、本当か?」


 真剣に王子サマが頷き、嫌そうな顔でお父様(パパ)が頷き、お母様(ママ)とあたしも神妙に頭を下げる。仕方ない、ジュレちゃんを可視化させるか。


 あたしがそう思ったとき、お父様(パパ)から声が飛んだ。


(ミシェル。お前に聖獣が付いているとバレると、お前ごと王家に囲い込まれることが決定される。我が伯爵家についているということにしろ)


(確かに、そうかも? じゃ、ジュレちゃんよろ)


「陛下、可視化させておみせいたしましょう」


 お父様(パパ)のその声に従って、ジュレちゃんがあたしの肩から飛び降りて、お父様(パパ)の隣に並び立つ。


「こちらが、我がスターナー伯爵家と契約した聖獣です。……ちなみに、聖獣ということは、殿下とお話して先ほど判明いたしました」


 しれっと嘘を織り交ぜるお父様(パパ)。相変わらず小物感が半端ない。王子サマも嘘を黙っていてくれるし、ジュレちゃんも黙ってくれるようだ。さすがあたしのいい子ちゃん。





⦅我が元隣国の聖獣じゃ⦆



 胸を張って現れたジュレちゃんは、小型の姿だった。やべぇ、大きくなるの頼むの忘れてた。でも、ここで大きくなられても困るから、ま、いいか。

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