表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/66

王子サマとの謁見に挑もう

「とりま、王子サマ(クソおとこ)に殴り込みにいかね?」


 あたしの提案に、頭を抱えたお父様(パパ)。しかし、大きくため息を吐いて言った。


「確かに殿下に話を聞かねばなるまいな、仕方ない。謁見許可をとってこよう」


 そう言って、お父様(パパ)が申請を出した。本来返答に数日かかるものなので覚悟していたが、即日即答で返ってきた。メイドチャンに何を聞いたのか気になるのかな? 自分の用意を終えて玄関ホールに着くと、ちょうど用意を終えてたお父様(パパ)が現れ、怖い顔で後ろに腕を組みながら、いつものように大声で言った。






「こほん、では、いつものように……」











「いいか。お父様との約束だ。復唱!」


「決められたセリフ以外、話さない!」


「決められたセリフ以外、話さない!」


「振る舞いはお淑やかに!」


「振る舞いはお淑やかに!」


「微笑みを絶やさない!」


「微笑みを絶やさない!」


「殿下に不敬を働かない!」


「……」


「ミシェルちゃん?」


 お母様(ママ)が手に持っていた扇がパキリと音を立てて崩れ落ちた。……ひぃっ。その扇、鉄製……お母様(ママ)付きのメイドがさっと新しい扇と濡れタオルを差し出す。準備良すぎじゃね!?




決められた台詞






「わたくし、スターナー伯爵家が長女、ミシェルと申しますわ」


「よろしくお願いいたします」


「また、両親に相談してお返事いたします」


「ありがとうございます」


「まぁ」(困った顔)


「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)


「申し訳ございません」(真剣な顔)


「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)


「光栄でございます」


「謹んでお受けいたします」


「お父様。お願いしますわ」


「お母様。お願いしますわ」


「なぜでしょうか?」







お父様(パパ)、王子サマにキモいって伝える言葉が足りなくね?」


「ミ―シェールー??」


「いて、いててて! ギブギブ!!」


 お父様(パパ)に頭ぐりぐりされたあたしは、ムサルトに髪を手早く直されて馬車に押し込まれた。


「ミシェル様。お気をつけて。ムサルト特製の簪を刺しておきますね?」


「ムサルト!? カンザシってなに!???」


 あたしの問いは答えを得る前に、無情にも扉を閉められた。

















 王宮に到着し、殿下の執務室に案内された。


「急に来てもらってすまないな……」


 笑顔で出迎えた王子サマが、あたしの肩を見て固まった。……なんでジュレちゃん見えてんだろ。あたしは思わず首を傾げた。


「すまない……ミシェル嬢の美しさに驚いてしまって」


「まぁ」(困った顔)



(ふふん、まあ、あたしの美しさは一朝一夕では慣れないよね)


(見た目だけは一級品なのにな……中身がな……)


お父様(パパ)きも、うざ)


(ぴえん超えてぱおん)


 あたしの冷たい視線を受けて、お父様(パパ)は気を取り戻した。


「愚娘をお褒めいただき、至極光栄にございます」


「美しいものを美しいと言ってしまうのは、当然のことだからね。さぁ、スターナー伯爵夫妻はあちらに座ってくれ。ミシェル嬢、僕の隣に腰かけてもいいんだよ?」


お父様(パパ)、断り文句いれろよ!? うざいから無理とかきもいから無理とか!!)


「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)



 お父様(パパ)を睨みつけながら、王子サマに断りをいれる。


「ははは、殿下。婚約者のいる女性に隣を薦めるなんて、はは、ユーモアに富んでいらっしゃいますな。ははは、さぁ、ミシェル。お父様とお母様の間においで」


 微笑みを浮かべてお父様(パパ)お母様(ママ)の間に腰かける。


(ミシェル……殿下の誘い文句のとき、カンザシとやらが赤く光っていたが……ムサルトはどんな機能をつけたんだ!?)


(知らないし! 聞こうとしたら馬車を出したのはお父様(パパ)じゃん!?)


 あたしたちが揉めている間に、お母様(ママ)が王子サマに謝っていた。


「王宮からメイドを呼びだしたにも関わらず、我が家内で行方不明にしてしまい……誠に申し訳ございませんでした。今、我が家の精鋭たちを使って捜索に当たっておりますので、どうかご容赦いただけると……」


「いや、いいよ。こちらこそ、うちのメイドが迷惑をかけてすまないね。あのメイドは虚言や問題行動があって、うちでも困っていたんだよ」


 爽やかな笑顔で王子サマがメイドチャンをディスる。なにこいつこわ。 そう思いながら、メイドが淹れたお茶に口をつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ