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ムゴンの報告

「…………」


 ムゴンがペコリと頭を下げ、その横に手下②が立つ。なんでムゴンの心が読めるのか、マジ不思議。


(ミシェル、お父様(パパ)の心の声、聞こえているか?)


(聞こえてる!! やべぇ、お母様(ママ)、怒らせちゃった)


 そんなことを言っていると、お母様(ママ)の鋭い視線が飛んできて、あたしもお父様(パパ)も押し黙る。……あれ? あたしもお父様(パパ)お母様(ママ)も心の声、聞こえてね?


「ミシェル様……」


 何か言いたげな子犬のような目をしたムサルトがあたしをみてくる。ごめんごめん、ムサルトもあたしの心読めるか。


「……」


「こちらをみてほしいっす!」


 ムゴンの操作と手下②の説明で、ムゴンの報告が始まった。ムゴンの触角から、映像が浮かび上がる。



 天井裏から王子サマの部屋をのぞき込んでいる。人がいなくなったと同時に、音もなく部屋の真ん中あたりに着地した。

 寝室のようだ。大きなベットがどどーんと鎮座し、部屋の隅には大きなキャビネットがある。その向こうは、外に続くドア? こちらにあるのが、執務室に続くドア? ベッドからほど近い、執務室のドアの間に暖炉がある。寒くもないのに燃えカスが少し残っていて、王城のメイドも掃除の漏れがあるんだと思わずあたしがこぼした。横にいるムサルトが、人間ですから……といっても、この季節に整っていないのはおかしいですね、と同意してくれる。

 ムゴンは音もなく歩き回り、間取りが分かるようにあらかた映し終わったと思うと、キャビネットを漁り始めた。


「……」


「え、まって、なんでばれないの? これだけ大騒ぎしているのに!?」


 あたしが驚いて声を上げると、手下②が自慢げに胸を張る。


「ムゴンの才能なんすよ! ムゴンは音を立てないように動くのが得意で、なぜか人にも見つからないっす」


 照れたように頷くムゴン。あたしはそんな特殊能力持ちだったムゴンをまじまじと観察してしまった。


 メイドのものとは違ってとても大きなキャビネットは、人が何人も入れそうだった。服を次々と動かしていくムゴンは、小さな引き出しを見つけ出した。鍵がかかっていたが、ムゴンは素早く解錠した。すげぇ。

 一包ずつくるまれた粉薬が何個か入っており、ムゴンが粉薬をほんの少量とって、もとに戻す。


 ムゴンはその下の引き出しを開けた。中には、金色の粉が入っている。なにこれ?


「毛染め薬か? しかし、殿下は産まれた時から綺麗な金髪だったと聞くが……」


 お父様(パパ)が訝し気な表情を浮かべて顎に手を当て悩む。お母様(ママ)も困ったような表情で見つめている。


「王サマの実子じゃないとか?」


 あたしがそう言うと、全員がすごい表情でこっちを向いた。ムサルトに口を押えられ、思わずふがふがいってしまう。


「ミシェル! そんな恐ろしいこと、思ったとしても口にだすな!!」


 顔を青ざめさせたお父様(パパ)があたしを怒鳴りつける。ごめんごめん、思ったことが口から飛び出しただけだって。家だからリラックスしちゃってんの。


「もう少しするとお昼の鐘がなるから、執務室に行くっす」


 手下②がそう言ったかと思うと、鐘が鳴り響いた。扉の影にムゴンが隠れたかと思うと、執務室から寝室に荷物を取りに王子サマが入ってきた。


「ふぅ」


 そうため息を吐いた王子サマは、後ろを振り返り、後ろを振り返り!?


 あたしが思わず焦ると、映像の中の王子サマとばっちり目が合った気がした。



「やべえやべえ、ムゴン、逃げて!!」


 あたしが声を上げ、お父様(パパ)も立ち上がり、お母様(ママ)も息を呑む。しかし、なぜかムゴンに気がつくことのない王子サマが隣を通って外へと出ていった。


「なんでぇ!?」


 あたしが机を叩きながら立ち上がると、手下②が自慢げに言った。


「ムゴンはそう簡単には見つからないんすよ!」






 人がいなくなった隙に、どうやったのかわからないけど全く音も立てずにドアを開いたムゴンは、執務室へと忍び込む。

 王子サマが「ピンク頭のメイドが逃げた」と言っていた窓を探して、ムゴンが動く。


「あ、この窓が幽霊が逃げた窓っす」


 窓の手すりには、何かで擦ったような痕が残っていた。しかも、一度や二度ではなく何度も擦ったのだろう。


「あれ? ここって」


 下を覗き込んだムゴンの視界に映るのは、さっき、手下①の報告で見た、メイドチャンの部屋から見えた窓の外の風景に見える。


「そうっす! 真下がメイドたちの部屋っす!」


「その痕はなにかしら?」


 お母様(ママ)の問いに、手下②が手を挙げる。


「後ほど説明するっすけど、ここからピンク頭のメイドが出入りしていた姿を目撃している人がいたっす!」


「あら」


 お母様(ママ)が驚いたように口元に手を当てる。女遊びは手頃な近場で済ませるタイプの王子サマか。キモ。ていうか、死んでもピンク頭のメイドは、その出入口使ったってこと? なんか怖くね? 女の執念。


「さ、先ほどの、金色の粉については……」


 震えた様子で口を開くお父様(パパ)に、手下①が補足を加える。


「そちらは後ほど説明させていただく予定です」


「そうか……」


 何かを覚悟したかのようにごくりと唾を飲み込んだお父様(パパ)




 王子サマがキモい理由、どこいった?


 あたしがそう思うと、お父様(パパ)に思いっきり叩かれた。まぢ痛い。虐待だし。





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