手下三人組の活躍
「おっす! 俺たち手下三人組! 俺が手下①!」
「俺、手下②! あと、手下③のムゴンっす!」
「……」(こくり)
薄暗い空間で、小声で話す手下三人組。
自ら話すことはないが、静かに頭を下げるムゴン。
「って、先輩! 何やってるんすか!?」
「読者様に紹介を……って、あれ? 俺、何やってるんだ?」
「しっかりしてくださいよ、先輩! 今から、王宮に潜入調査なんすよ?」
「そうだった、そうだった。では、俺の考えた作戦通りに二人は動いてくれ。ムゴン、こちらの指示を頭に響かせるような魔術具はできているか?」
(こくり)
頷いたムゴンは、小さな箱を手下①に差し出す。
「お? つけてみるな?」
「先輩、俺もためしたいっす!!」
手下①、②が手に取った小さな触角のような見た目の物を頭に装着したのを確認し、ムゴンは魔力を通す。
「お? 手下②の声が聞こえてくるぞ? 先輩先輩って」
「すごいっす! 先輩の声がしっかりと聞こえるっす!」
こくりと頷いたムゴンが触角に触れると、二人の目の前に映像が現れた。
「お?」
「なんだこれ? ってさわれねーっす!」
「もしかして……手下②の見えている風景か?」
こくりと頷いたムゴンがさらになにか動作を加えると、また見えるものが増えたようだ。
「お? これ、もしかして王宮の地図か?」
頷いたムゴンが、その地図に触れて拡大すると、詳細な地図になり、行き交う人たちの動きも表示された。
「すげーじゃねーか! もしかして、前回潜入した時の記憶を頼りに作ったのか?」
「先輩! これ、俺たちの使った排水路や隙間とかも全部書いてあるっす!」
「下働きの服の置き場所とかも書いてあるじゃねーか!」
「……これ、作戦を終えたら、お嬢様に献上したら……喜ばれるんじゃないっすか?」
「……お嬢様は喜ぶだろうが、旦那様が困るかもしれねー。まぁ、今回の作戦が終わったら、まずはムサルト様に相談だ!」
「ところで、今回、奥様やお嬢様から、調べてくるものの指示ってあるんすか?」
「おう! 読み上げるぜ!
手下三人組
・ピンク頭のメイドと殿下の関係性について
・王家の秘密について(ミシェルより)
・ピンク頭のメイドを大臣が養子にしようとした理由(お父様からこっそりと頼まれてたっしょ?)
・同室のメイドチャンとピンク髪のメイドの関係性について
・メイドチャンたちの部屋について
・殿下の部屋の作りの確認
・王子サマがキモイ理由
」
「最後、お嬢様の私情が挟まっていた気がするんすけど……」
横から指示書をのぞき込んでいた手下②が、一番最後の行を見つめながら首を傾げた。
「それ以外にも気になるところがあったって顔をムゴンがしているぞ」
こくりと頷くムゴンを見た手下①②は、はっと気が付いたようにムゴンに問いかける。
「なぁ、ムゴン。この指示書が手元に残っていると、俺たちがへました時にお嬢様たちにご迷惑が掛かってしまう。なんかいい方法はないか?」
あごの下に手を当ててしばらく考える様子を見せたムゴンが、ぽんと手を打って触角に触った。
「おおっ!? 紙が消えて、目の前の地図の横に何かが現れたぞ!?」
「すごいっす! これ、触るとさっきの指示書が拡大されるっす!」
「……」
ムゴンが「忘れてた」というように手下②の触角の耳の横のボタンを押すと、手下②の見ていた光景が画像となり、保存された。手下①が「おぉ!?」と声をあげ、何かに触る。
「すごいぞ! 目の端のほうで軽く光ったと思って触ったら、ムゴンが今撮った画像が共有された!?」
少し自慢げに胸を張ったムゴンを手下②が頭を撫でまわして褒める。
「よし! じゃあ、予定通りに別れて調べてくるぞ!」
「うす!」
「……」
ムゴンが頷くのを確認した手下①の指示で、三人はちりじりになって散っていった。




