大臣からの手紙
「ミシェル! 大臣から手紙が届いたぞ!」
目撃者からの聞き取りを終えて、屋敷に戻ったあたしは、私室でのんびりくつろいでいた。カウチソファに横たわり、片足を背もたれに乗せる。背中の下には、ムサルトがせっせと詰め込んだクッションが敷いてあり、そのまま飲み物を飲んでもこぼれない絶妙な角度だ。
「ムサルト」
「かしこまりました。ミシェルお嬢様」
ムサルトはあたしが飲み終わったジュースを受け取り、柿ピーの皿を差し出す。
「本当、この柿ピーってやつを作った人は、天才だと思うわ」
「至極光栄にございます」
あたしが褒めると、ムサルトは嬉しそうに笑う。
「ミシェルもムサルトも、部屋に入ってきたお父様を無視しないで!?? ミシェル、だらけすぎじゃない!? ドレスの中見えちゃうんじゃない!?」
「変態親父。きも」
お父様を撃沈させたあたしは、仕方なく起き上がる。ドレスの中は見えないようにムサルトがなんとかしていた。
「で、手紙って何? まじめんど」
ジュースよりも柿ピーに合う飲み物がないか考えながら、あたしはお父様に声をかけた。
「そうだ。大臣から手紙が届いた。先日の話をもう少し詳しく聞きたいと頼んでおいたのだ」
お父様がえへんと胸を張る。だる。
「で、なんて書いてあったの?」
「ミシェルと一緒に開けようと思って、持ってきたのにー!!」
涙目のお父様を無視して、ムサルトが受け取った手紙をペーパーナイフで開けて読んでくれた。
「先日は取り乱してすまなかった。
決して怖がったわけではない。他言せぬように。他言したら、どうなるかわかっておるな?
ピンク髪のメイドの……幽霊を見た件についてだったな。
目撃した時の話は、あれで全てだ。皆、特に異常はないと言っておった。
実は、わしは、ピンク髪のメイドを養子にしようと考えていた。
そのため、わしの前に化けて出たのかもしれないと思ってな。心当たりはある。
養子にしようとした理由が気になるのなら、自力で探れ。
ミシェル嬢が殿下の妃になるにしても、ならないにしても、それくらいできなければ城ではやっていけないぞ。
追伸 あのピンク色の毛布は、除霊作用もある最高級の毛布だ。小さい頃、母がそう言っておった。別に幼い頃からあれがないと眠れないというわけではないからな!?」
「……絶対あの毛布ないと寝れないやつじゃん!?」
そう言ってお父様を見るとそっと目を逸らされ、ムサルトを見ると微笑を浮かべていた。
「こほん。何はともあれ、あのピンク髪のメイドと関わりのあるもののところに、ピンク髪のメイドの幽霊が現れているようだな」
「てか、ピンク髪のメイドを養子にしようとした理由って何?」
「それはお父様が調べておこう」
「あなた。ミシェルちゃん。お茶にいたしましょう?」
お母様が入ってきて、そう声をかけられた。あたしとお父様はそそくさとお母様の後に続いたのだった。




