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襲撃

「うわ、国のやつらっす」

「俺たちを処分しにきたのか!?」

「……」


 飛び出してきた黒づくめの男たちに、手下①②③が反応する。ん? ムサルト? ムサルトはもちろん、あたしの周りに防御結界を展開しているけど?


「ムサルト、いつの間に防御結界なんて……ていうか! 雇い主は私だ! 私も守ろうとする姿勢を見せろ!」


「ムサルト」


「は、ミシェルお嬢様の御心のままに」


 お父様(パパ)がうるさいから、ムサルトに防御結界の範囲を広げさせた。


「防御結界まではそう簡単に習得できないと思うんだけどな……」


 お父様(パパ)がぶつぶつ言っている。え、防御結界とかめっちゃ簡単じゃん? あたし、三歳くらいでできたことねーか?


「ミシェル……お前は天才児だから、例外だ」


「旦那様。私もミシェルお嬢様のことを想って鍛えれば、別にそこまで苦労しておりませんが……」


 遠慮がちに首を傾げるムサルトに、お父様(パパ)は大きくため息をつく。


「お前も天才側のようだな、ムサルト。本来魔力をほとんど持たない平民がそこまでの領域には、一生使っても届かないはずなのだが……お前たちはお似合いだな」


 あたしの婚約者になるためなら、それくらいできて当然じゃない?


「旦那様……私とミシェルお嬢様がお似合いだなんて、そんなそんな恐れ多い……ふは、はははは」


 ……ムサルト、魔王みたいな笑い方している。


「落ち着け、ムサルト。落ち着け!! 喜びのあまり、防御結界が周囲に攻撃魔法を放つという訳の分からないことが起こっている! 手下①②③が必死によけているぞ!!! ミシェルー! ムサルトをなんとかしろ!」


「ムサルト。あたしの婚約者なら、落ち着きな?」


「は、我がミシェルお嬢様」



 ムサルトは即座に攻撃魔法をおさめ、片膝を立ててしゃがんだ。




「……ご主人様の婚約者になるには、あれくらいの力が必要みたいだぞ」

「……あれ、本当に人間っすか?」

「……」


「恐怖のあまり、失神するな、ムゴン!!!」



⦅……我、ご主人様の使い魔になるには、力が足りない気がしてきたぞよ?⦆








「ごほ、ごほごほ……」


 めちゃくちゃになって木の破片が飛び散っている中から、黒づくめの男たちが飛び出てきた。


「……気を取り直して、三羽の鷹よ! よくも裏切ったな!?」


「うるせー! 先に裏切ったのは、国のほうだろ!」

「正当防衛っす!」


「何を言ってるのだ?」


 会話の成り立たない手下①②③と黒づくめの男たち。混乱しながらも、武器を構え合っている。


(ミシェル……お前のせいだぞ?)


(え、なんで!? あたし悪いことしてなくない!? ……まぁ、仕方ないなぁ。ムサルト、例のあれの予備ってある?)


「は、ミシェルお嬢様。こちらに」


 お父様(パパ)の目を盗み、ムサルトから例の毒薬を受け取りワイングラスに一滴落とす。正直、邪魔だったんだよね。このグラス。え? 指輪の中の薬を使えばいい? ……せっかくムサルトがくれた指輪を壊すなんて、嫌じゃん?


「ミシェルお嬢様……このムサルト、感涙にむせびてしまいます……うっ、」


 ……ちょいキモイ。そんなムサルトを置いておいて、ワイングラス片手に黒づくめの男たちにご挨拶をする。


「わたくし、スターナー伯爵家が長女、ミシェルと申しますわ」


 満面の笑みでそう挨拶して一歩近づくと、黒づくめの男たちはばたばたと倒れていった。まぁ、あたしの満面の笑みを受けたら、そうなるよね??


「こ、これはこれはご丁寧に……」


 生き残った二人に近寄りながら、微笑みを浮かべながらワイングラスを差し出し、微笑みを優しく見えるように変える。ちなみに、ムサルトは遠距離であたしにも防御結界を張っている。嫉妬に震えているけれど、あたしのやりたいことはなんでもやらせてくれる、いいしも……いい婚約者。


「あ、ありがとうございます」


 ポーッとしながら受け取った黒づくめの男の一人は、何も考えずにワイングラスに口をつける。仕方ない、残りの一人にも流し目を送った。


「か、貸せ!! 俺にも飲ませろ!!!」


 残り一人が、ワイングラスを持っている黒づくめの男から、ワイングラスを奪い取り、慌てて口をつける。あ、それ、王子サマが口をつけたやつだから、よかったね。


「が、がはぁ!」

「ぐっ!?」


 黒づくめの男たち二人は、胸を押さえて苦しみ始めた。


「……我が娘ながら、末恐ろしい」


「そうですか? ミシェルお嬢様の笑みを見ながら、死を迎える……奴らには過ぎたご褒美です。うらやましい」


「そ、そうか……?」


 悩むお父様(パパ)に、ムサルトはあたしの手を取り跪いた。


「ミシェルお嬢様、ぜひ、私めが不要となりましたら、微笑みを浮かべながら毒杯をお渡しください」


「りょ!」


「それでいいのか!? ムサルト!!!?」


 お父様(パパ)が混乱に陥り、ムサルトは感動している。




「……俺、ご主人様が地上で最強の人間兵器に見えてきた」

「俺もっす。たぶん、ご主人様についていけば、最強っす」

「……」


 こくりと頷いた手下③に、団結を深めた手下たち。よっしゃ! ハッピーエンド!


⦅……とりあえず、我は、ご主人様の魅力に倒れた黒づくめの男たちを拘束して、記憶を改謬しておくぞ?⦆


(ナイス! ジュレちゃん!! さすがあたしの使い魔!!)


 とてとてと歩いて行ったジュレちゃんは、黒づくめの男たちを拘束し、魔法でちゃちゃっとなんかしていた。あたしがジュレちゃんを褒めたせいで、ムサルトはきぃぃぃってなっている。


「ムサルトもあたしの婚約者として、よく頑張ったから、あと家までよろ!」


「承知いたしました。ミシェルお嬢様」



「あれ……? あの幼女、人間離れした力持ってないか?」

「まるで聖獣様みたいっすね! ま、ありえないっすけど!」

「……」


 聖獣の使いジュレちゃんということで、手下たちは納得したらしい。


「……フライアになんて説明しよう……。ミシェルが人間三人と聖獣一匹拾ったって言ったら、一緒にいた私が怒られかねん……」


 お父様(パパ)は頭を抱えていた。そんな悩むと禿げるよ?



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