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その頃の王宮

「ミシェル嬢が誘拐された!」


 衝撃のあまり、放心状態になっているスターナー伯爵夫妻に、王子が声をかける。


「すまない、私の責任だ」


「殿下……どうせあの阿呆娘は、あの生物が気になって、ついていったのでしょう。私どもが心配しているのは、誘拐犯のほうです」


「ええ、あなた……どうしましょう。あの方々が女性不信に陥ったら……」


「それくらいなら問題ないだろう、フライア。あの方が外国の方だったら……もしも、ミシェルが好き放題に暴れていたら、外交問題になりかねないぞ……」


 誘拐犯を想って、さめざめと泣くスターナー伯爵夫人に、頭を抱えるスターナー伯爵。







「その、誘拐犯はまず、ミシェル嬢の手足を魔力封じの枷で封印する可能性が高いから、いくら魔力の高いミシェル嬢といえども、非力な女性だ。そちらを心配するべきではないだろうか……?」


 王子の言葉を受け、白けた表情を浮かべたスターナー伯爵夫妻は、相談をつづける。




「どうする? ミシェルが外交問題を起こす前に、回収する方法はないだろうか?」


「あなた! ムサルトを使ったらどうかしら? あの子ならきっと、ミシェルの残り香をたどれば、あの子のところにたどり着けるわ! それに、常識的な方法でミシェルを回収するに決まっているわ!」


「そうだな。ムサルトなら、そこまでの境地に至っている可能性が高い。呼び出すか」


 スターナー伯爵夫妻がそう語っていると、王子は混乱した。


「ミシェル嬢の婚約者になるためには、残り香で跡をたどれないといけないのか……?」








 突然、会場の扉が開き、一人の男が入ってきた。


「旦那様、ミシェルお嬢様の危機を察知しました。ご無事でいらっしゃいますか?」


「ムサルト! ミシェルの危機を察知して、領地から飛び出してきてくれたんだね!?」


 スターナー伯爵の言葉を受けて、会場は騒ぎになる。



「領地から……? 何を言っているんだ? 最低でも馬を乗り換えて寝食を抜いても、三日はかかるだろう?」

「もしかして、王都のタウンハウスと勘違いなさっているのかもしれませんわ」

「そんなところに婚約者が待機しているなんておかしい。……誘拐は、伯爵の自作自演ではないか?」



 そんな中、王子はぼそりとつぶやく。


「ミシェル嬢の婚約者になるには、危機を察知したら領地から王宮まで数分で駆け付けられるようにしなければならないのか?」






「はい、旦那様。どこのどいつです? 私のミシェルお嬢様をあんなにも高揚させるなんて……ちょん切ってやりますよ」


「あぁ、やっぱり。高揚……ミシェルは、あの生き物に興味をもってついていったんだな」


「それなら、あの子が望むままにペットを買い与えるべきでしたわ」


「仕方ないよ、フライア。あの子はレッドドラゴンや魔人を山から拾って来ようとしていただろう? あれが庭にいては、支障が大きすぎる」


「普通の動物でも、与えるべきでしたわ」


「フライア、無理だっただろう? あの子の本性と魔力を察知して、動物は逃げてしまって買えなかったじゃないか」


「旦那様。ミシェルお嬢様を取り戻すためならば、私が変身魔法で魔獣になりましょうか?」


「ムサルト、気持ちはありがたいが、お前に魔力はほとんどないだろう? 身に着けるつもりか?」


「ミシェルお嬢様の婚約者になってから、少しでも追いつくことができるように鍛えました。今は、旦那様よりも多いはずです」


「貴族の中でも多い私よりも!? まあいい、ムサルト。ミシェルを追ってくれ」


「はっ」



 ムサルトがスターナー伯爵と駆けだそうとしたところ、王子が声をかける。


「ミシェル嬢の婚約者になるためには、魔力をスターナー伯爵以上に増やさなければいけないのか?……まて、私もつれていけ!」


 そんな王子に、ムサルトが返答する。


「恋敵として、答えさせていただきます。なぜ恋敵に塩を贈るようなことをせねばならないのでしょうか? それに、私はミシェルお嬢様で手一杯です。殿下の御身に何かあってはこまりますので。では、急ぎますので失礼いたします」





 一瞬で姿が見えなくなった。二人の姿に会場はしーんとなった。


「……もしかして、本当に領地からきたのかもしれないな」

「見間違いでなければ、スターナー伯爵が引きずられていたような……」

「あの速度で引きずられて、無事でいられるのか?」

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