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夜会②

 あたしの婚約者の座を狙っている王子サマのことだから、二曲続けてとか言ってくるかなぁって思っていたけど、誘われなかった。そうか、王子サマは踊り狂じゃないのか。そこは、あたしと気が合うかもしれない。ダンスの必要性については、あたしも疑問に思っているよ。


「最後、踏まれ……気のせいか。バルコニーにでも行こうか? そのほうが、踊りながらよりも、ずっと、ものすごく、非常に、とてつもなく、話しやすいからね?」


「ありがとうございます」


 やっぱ王子サマもイヤイヤ踊ってたんだね。いいよ、話しやすいようにしてくれてありがとう。


(寿命が……縮んだ……)


お父様(パパ)ももう年なんだから、気を付けなよ?)


(ははは)






 エスコートされてバルコニーに出る。周囲には人もいないし、話しやすそう。道中、王子サマはワインを受け取り、あたしはジュースを頼む。ついでに食事も運んでくれた。王宮の飯、最高なんだよね。


「さてと、黒真珠のイヤリングについて、気にしていたよね? もしかして、ミシェル嬢は黒真珠が気に入ってくれたのかな? 黒真珠は王族しか手に入れられないからね。私の伴侶となってくれたら、いくらでも贈るよ?」


「まぁ」(困った顔)


 この王子サマ、物で釣ろうとしてくる。あたしがそんな単純だと思うか?


(お父様は、ミシェルちゃんが、物で釣れるくらい単純だと思うよ? お父様、心配……)


(……ナンニモキコエナイ)


 バルコニーのすぐ近くから、お父様(パパ)はこちらをちらちらとみていた。お母様(ママ)は様子を見ながら、笑顔で社交を行っている。さすがお母様(ママ)。しごでき。




「黒真珠は、本当に王族にしか手に入らないのかという顔だね? そうだよ、黒真珠は王家にすべて献上するように決まっているからね」


 なにこの王子サマキモい。一人語りし始めた。


「はは、わたくしの心の声が聞こえるの? って? 聞こえるわけないけど、愛おしい君の考えくらい、顔を見ればわかるよ」


(うざい、きもい、はげろ、吐きそう)


 あたしの手を取り、口づけを落とした王子サマ。そう何度も何度も手にキスをするなんて、欲求不満なの? あたしに懸想してる? きもいきもいきもい。


(み、ミシェルちゃぁあん、落ち着いて、大丈夫、それは怖くないよ? 大丈夫、あ、さりげなくふき取るな!?)


 そんなことより、、この王子サマが黒真珠を贈った黒幕だとどうやって証明するかな……。


「え!? 黒真珠を贈ったのが母上の事件の黒幕なのかい!? そんなことは知らなかったよ……」


(!? こいつまじで心の声、聞こえている!?)


(もしかして、お父様の心の声も聞こえているの!? まずいぞ……)


(こいつ曰く、「愛おしい君の考えくらいわかるよ」ってことだから、その理論で行くと、お父様(パパ)のことも愛おしいと……? きも)


(お父様もそれは嫌だなぁ……って、ミシェル! 心の声が聞こえているかもしれないのに、こいつとか言わない!)


(え、心の声まで制限される!? 言論の自由を求めまーす!!)


「まぁ、冗談はさておき。父上からたぶん概要は聞いているよ。側妃が母上の命を狙ったんだろう? ただ、不明な点が多くて、隣国からの介入があった可能性がある、と。その黒幕探しは継続して行っていく意向だって言っていたよ。よくわからないけど、黒真珠に気をつけろとは言われたな。そこから推察したんだよ」


(紛らわしいことしやがって)


(ミシェルに完全同意)


「私の予想は当たっていたかな? まぁ、私が君に黒真珠のイヤリングを贈ろうと思ったのは、ある方から助言をいただいたからだよ」


(それは)


(誰!?)


 あたしとお父様(パパ)の心の声が重なったとき、突風が吹き荒れた。


「第一王子! 一緒に来てもらおう!」


 そう言って、ふわふわな生き物に乗った黒ずくめの人間が、手を伸ばしてきた。


(危ない!)


 あたしは無意識に手を伸ばし、王子サマを突き飛ばした。あ、ムサルト。そう思って、自分の持っていたジュースを投げ捨て、王子サマのワインを奪い取る。


(ミシェル!?)


「ミシェルちゃん!?」


「ミシェル嬢!?」


 やば、あたし、臣下の鏡じゃん! とりま、ワインがこぼれないように魔法を使って……魔法で戻れる気がするけど、このもふもふの生き物が気になるからついていこーっと。ま、なんとでもなるっしょ!




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