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告白


 お母様(ママ)の言葉を受け、王サマは笑い出した。


「はっはっはっ。すべて見抜いたうえで、推察として述べてくるとは……さすがスターナー伯爵家だな」


(え、お母様(ママ)じゃね?)


「恐れ入ります」


 礼を述べるお父様(パパ)お母様(ママ)


「ここまでお膳立てをしてもらったのならば、すべてを語ろうか」


 宰相サマがどこかから椅子を取り出し、王サマがその椅子に腰かける。……その椅子、いくらするんだろう? きらきらした石がたくさんついていて、豪華……。


「王妃に怪我をしてもらう必要はあったが、命を奪うつもりは本当になかったんだ。私の愛する女性は、王妃のみだ。……側妃の実家である大国からの圧力で、側妃を王妃にしようとする一派が現れていた。徐々に派閥の声は大きくなり、私は必死に王妃をかばっていた。……同時に王妃の命を狙うもの、第一王子の命を狙うものが増えた。……側妃として娶るだけでいいとあの女は言っていたのに。側妃に声をかけ、王妃を襲わせることで側妃と側妃派の大臣の失脚を狙った……。さすれば、側妃の疾病が原因で静養のために隣国に送り返すことも可能だと考えたのだ……あぁ、今考えると私も追い詰められていたのだ。同時に、私にも原因があることを第一王子に対して明らかにし、公爵にそれを立証させることで第一王子に跡を継がせる……そうすれば、隣国にはもう介入の余地がないだろう。……我が息子は優秀だ。私以上に施政者に向いている。私と王妃を療養という名目で王家の別邸に幽閉し、王座を奪い取ることくらい、平気でできる男だ。それに、」


 そういった王サマはちらりとあたしに視線を向けた。


「例え妻として望む者がミシェル嬢一人だとしても、愛するミシェル嬢を国の安定のために手放すこともいとわない、そんな男だ」


(え、そんな男との結婚、あたしはまじで嫌なんだけど?)


「我が息子に愛する者と結ばれてほしい、そんな私の親心から、ミシェル嬢に私たちの罪を暴かせようと思ったのだ……前王の過ちを明らかにした女性が王妃となれば、隣国も多くを責められなくなる」


(息子のことしか考えてないけど、大切な国民であるあたしの気持ちも考えてくださーい。というか、罪を暴いたのお母様(ママ)なんだけど?)


(……まさか、フライアを王子殿下の妻に狙っているのか!? 確かに親子ほどの年の差があっても、王子殿下の横に並んでも遜色ほどないほど、フライアは美しいが、我が妻は渡さないぞ!!)


(違う、お父様(パパ)、たぶん違う)


 お母様(ママ)を守るためにお母様(ママ)を自分の背の後ろに隠し、杖をかまえようとするお父様(パパ)。いや、違うと思うからぁ!


「……スターナー伯爵? どうしたのだ?」


「……陛下。王命であっても、我が妻を殿下にはお渡しいたしませんぞ!?」


「……何を勘違いしているのか知らないが、スターナー伯爵夫人を息子の妻にするつもりはないぞ?」


「陛下。あなたの罪を暴いたのが、我が妻フライアであっても、ですか?」


「あぁ。スターナー伯爵夫人が暴いたとしても、ミシェル嬢が母に頼んだことにするくらい、容易だろう? ……ミシェル嬢が新たな境地に達しそうだったため、我々は慌ててそなたらを襲ってしまった……すまなかったな」


 お父様(パパ)と王サマが、お互いのすれ違いを理解し終えたようだ。お母様は少し怖い顔をしている。


「陛下。私はあなたの退位を望みません。王子殿下に治世を任せるのではなく、あなたの力で安定した治世を作り上げてから、殿下に王位をお譲りください。……きっとそれがあなた様への一番の罰でしょう。もちろん、我が娘もあなた様を支え続けるでしょう」


「……それはそなたの考えではないのか、公爵? 私は治世者として向かぬ」


 意気消沈といった様子で、うなだれる王サマは、権威者ではなく、ちっぽけな一人の人間であった。


「確かに、王子殿下はとても優秀です。しかし、まだ子供です。あなたは責任を取って、王として生きねばならない、と私めも判断します」


 無言の宰相サマが口を開いた。


「……私が危害を加えたスターナー伯爵家の皆はどう考える?」


(え、これ。断ったら、我が家やべえやつじゃね?)


(……ミシェル。我が家の方針は?)


(長いものに巻かれろ……待って、あたしと王子サマの結婚だけは避けてよ?)


(我が家は権力は求めない。それに関しては、全力を尽くそう)


「陛下。我々スターナー伯爵家一同、陛下の治世を望みます」


 臣下の礼をとるお父様(パパ)を見て、慌ててあたしも真似する。


「ただ、娘ミシェルには領地に想い人がおります。すでに婚約を結んでいるので、殿下の隣にはふさわしくありません。ええ、我が娘ほど王妃にふさわしくない人間はいないでしょう、本当に」


 目をかっぴらいてそう発言するお父様(パパ)は、控えめに言ってイってる奴だ。王サマも宰相サマも公爵サマも引いている。


「……我が息子がミシェル嬢を口説き落とすことを祈っている」


(諦めわりーな、この親子)


(……それについては同意するが、ミシェル、もう少し口調を調えなさい。まったく、どこでそんな言葉使いを……)


(わかりましたわ、お父様♡)


(……寒気がした、やっぱり普通でいい)






「そうだ。言っておくが、私は黒真珠の贈り物のことは知らぬ。……あのピンク髪のメイドがなぜ巻き込まれたのかも、な」


「え?」


 驚いた様子のお母様(ママ)に、公爵サマも問いかける。


「私に黒真珠のアンクレットをくださったのは、陛下ではないのですか?」


 軽く首を振った王サマは続ける。


「私ではない。しかし、在位を続けよう。私が側妃を含めて大国の圧力をなんとかしようと誓おう」


 そう言った王サマは、頭を下げる一同に笑みを向けて、歩き始めた。

 あたしの横を通り過ぎるとき、小声であたしの耳元でつぶやいた。


「私の固有魔法は、防御魔法だ。精神魔法含めてすべての魔法から身を守ることができる……言っておくが、このことを知っているのは、私と君のみだ」


(……何言ってんだ? このおっさん。は! あたしが王族の固有魔法を調べたがっていたのに気が付いたのか!?)

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