固有魔法の閲覧②
「次の容疑者の固有魔法を確認するか」
そういって、お父様は次の本に手を伸ばした。よく見ると装丁が少し異なり、男性らしいものとなっている。
「大臣、か……」
(あの大臣の固有魔法とか、害がありそう)
(こら、ミシェル! 口を慎め!)
(口は慎んでる! むしろ、この部屋、部屋の前の警備もいないし、他に誰もいないんだから、素を出してもいいんじゃない?)
(そういう問題じゃない! 確かに、許可がないと立ち入ることができないから、警備の必要がないから近衛兵もいないが、家の外では素を出すことは禁じたはずだ!)
(へいへーい)
(返事ははい、だろ!)
(はいはーい)
(はいは一回!)
(はーい)
(伸ばさない!)
(はい。……お父様ってしつこいよね。しつこい男とかうざ)
(お父様、心が折れそう)
「あなた……」
ぐすんぐすんと泣き真似をするお父様をよしよしして慰めるお母様。え、お父様、まじで泣いてない? きも……。
(ぐすん、ぐすん)
「ミシェルちゃん? お父様に謝りなさい」
「まぁ」(困った顔)
「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)
「ミーシェールーちゃん???」
「申し訳ございません」(真剣な顔)
お母様の怖い顔を受けて、あたしは真剣に謝罪をした。まじこわい。鬼ばば……うぉっほん、ごほごほ、なんでもないもんねー。
涙をぬぐったお父様は姿勢を正した。
「気を取り戻して。大臣の固有魔法だが、注目魔法だ」
(注目魔法?)
「注目を集め、周囲の関心を自分に向かせたり、一か所に集めたりする魔法だな。大臣まで登り詰めるだけあるな」
(……思ったよりも害はない)
「……確か、王妃様が刺されたとき、一番に声を上げたのは大臣ではなかったかしら?」
お母様の言葉を受け、あたしは記憶をたどる。……確かに。大臣が最初に声を上げていた。それ以前はみんな大臣の話に集中していた気がする……。あたしも王サマに注目していたけど。そうこう話しているうちに、本がパタパタと飛んで行った。
「あとは、公爵様の固有魔法ね」
(あの好々爺でいけおじの公爵サマのい固有魔法は、国のためになりそうな魔法っしょ!)
(ミシェルに追随するようだが、公爵様の固有魔法はきっと素晴らしいものだろう)
全員の期待を背負って、お父様は最後の一冊に手を伸ばす。そっと掴んでぱらりと開く。
「公爵様の固有魔法は……記録魔法だ」
「記録魔法……」
(それって、公爵サマに聞けば、黒幕もわかるってこと?)
そう話していると、突然、固有魔法リスト保管室の扉が開いた。
「……驚かせてしまったか。調査のほうは進んだか?」
突然現れた王サマと宰相サマに、あたしは慌ててカーテシーをする。お父様も驚いた様子で頭を下げ、お母様はひどく思いつめた表情を浮かべたが一瞬で隠し、淑女の微笑を浮かべてカーテシーをした。




