国王陛下へのヒアリング
「今日は、国王陛下に謁見しに伺うぞ!」
「あ、固有魔法について聞きにいくんだっけ? 王サマ、王妃サマと王子サマの固有魔法教えてくれるかな?」
ぱしりとあたしの頭を叩きながら、お父様は言った。
「どうしてそんなに、王子殿下と王妃殿下の固有魔法を知りたがる?! わが家を破滅させる機会を狙っているのか!?」
「え、単なる興味関心? 王子サマはあくどいの持ってそう」
ついにお母様に、手に持っていた扇子でぱしんとされた。お母様には、叩かれたことなかったのに……!
お父様が怖い顔で後ろに腕を組みながら、いつものように大声で言った。
「いいか。お父様との約束だ。復唱!」
「決められたセリフ以外、話さない!」
「決められたセリフ以外、話さない!」
「振る舞いはお淑やかに!」
「振る舞いはお淑やかに!」
「微笑みを絶やさない!」
「微笑みを絶やさない!」
「王子殿下と王妃殿下の固有魔法は?」
「悪どいやつ!」
「ミシェルちゃん……?」
「ひっ!?」
お母様の手元で扇子がゆらりと揺れた。あれ結構痛かったから、大人しくしとこっと。
決められた台詞
「わたくし、スターナー伯爵家が長女、ミシェルと申しますわ」
「よろしくお願いいたします」
「また、両親に相談してお返事いたします」
「ありがとうございます」
「まぁ」(困った顔)
「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)
「申し訳ございません」(真剣な顔)
「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)
「光栄でございます」
「謹んでお受けいたします」
「お父様。お願いしますわ」
「よく参ったな。ミシェル嬢にスターナー伯爵」
「スターナー伯爵家当主としてご挨拶申し上げます。本日はお忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございます」
「ありがとうございます」
あたしの決められた台詞じゃ、まともな挨拶できないからここで乗っかっておく。
「いやいや、こちらこそ依頼している件があるからな。その件できたのだろう?」
(相変わらず偉そうなジジイだな)
(阿呆娘!? 相変わらず不敬な美少女だな)
(へいへい。お褒めに預かり光栄でーすっ)
お父様との高度な心理戦を交わしつつ、王サマの話を聞く。あたしまじ優秀。そう思いながら、神妙な面持ちでお父様を見る。
「いくつか、お教えいただきたいことがございまして……」
「なんだ? わかる範囲で教えてやろう」
(相変わらず上からすぎない? あたし、これだから王族って苦手)
(だから! もういい。ツッコミは疲れた。もう突っ込まないからな!)
(え、なにそれ。まじつまらんやつ。お父様の存在意義皆無じゃん。うける)
(ウケない!!! お父様の存在意義ってツッコミだけなのか!???)
若干涙目になったお父様をお母様が励ましている。まじで器用。
「ありがとうございます」
礼だけは言っておくか。
つられてお母様が感謝を示す。
「ご高配に感謝いたしますわ」
「陛下のご配慮、ありがとうございます。早速なのですが、お話を聞かせてもらった皆様が、国に登録している固有魔法を教えていただけると、調査している件が進む可能性がございまして……閲覧許可をいただけますでしょうか?」
「そうだな。本来の閲覧許可は宰相が出すものだが、この件について、宰相には今別件で動いてもらっている。代わりに国王である私が許可を出そう」
「ありがとうございます」
お父様がお礼を言うのに合わせて、カーテシーをしておく。
(よっしゃ。王サマのおっさんにはもう用はない!! 閲覧室で個人情報漁りまくるぞ!)
「ミシェルちゃん?」
さっさととんずらしようとしたら、お母様に肩を押さえられた。
(お淑やかに、ゆったりと、お母様と一緒に退出しましょうね?)
(ひ、ひぇぇぇぇ)




