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1-3.伊吹とは割と気軽になんでも話し合える仲だ

 俺は美空と同居していることを隠していない。

 兄妹なんだから同じ家で暮らしていて当たり前だ。


 同じ時間に家を出て一緒に登校するし、弁当が手違いでおかず二つやご飯二つになっていれば美空のクラスに行って交換する。

 自分の教説に戻らず、そのまま美空のクラスで弁当を食べることだってある。


 体操着はさすがに貸し借りできないが、教科書の貸し借りは当たり前のようにする。


 あ、いや、美空はあまり忘れ物をしないから、俺が一方的に借りるのだが。


 まあ、とにかく他人から見れば、俺達がイチャイチャしているように見えるらしい。


 だから、定期的にやっかみが俺の所に来る。


 全ては九重アイドル独占禁止条例とかいうアホなルールを作った馬鹿のせいだ。おかげさまで、違反者を取り締まるという勝手な正義を後ろ盾にして暴力を振るってくるやつまで現れる始末。


「つうか止めに入ってくれよ。

 お前が隣に立っていたら、絶対に俺は殴られなかった」


 伊吹は胸板が常人の倍くらい分厚いし首や肩も迫り上がっていて、明らかに格闘技経験者の外見をしている。

 姿を見せてくれるだけで先輩は逃げたはずだ。


 なお、俺達が通う高校にレスリング部はないため、伊吹は隣の市にある高校のレスリング部に所属している。知らなかったけど、高校生って他校の部に入れるものらしい。


「パイ先の取り巻きまで殴ってくるようだったら、止めに入るつもりだった」


「マジ?」


「当たり前だろ。

 俺に喧嘩で勝ったことのある唯一の男に、こんな所で土をつけさせるわけにはいかない」


 伊吹がニシシと、歯を見せて笑う。歯の一本ですら親指の第一関節くらいありそうにデカい。


「ガチ喧嘩は小学生の時だろ……。

 今やったら俺は秒で負けるぞ」


「俺はひー君の攻撃を一切避けずに全て受けきる。

 全力を出し切らせた後で倒す。

 だから、秒では終わらん」


「こっちが全力でお前が手加減?

 そんなの惨めさが残って、後の関係が歪になるぞ」


「手加減なんかしねえよ。

 それに、勝ち負けが重要なら、寝てやろうか?」


 ――寝る!


 本来は睡眠を意味する言葉だが、年頃の男子高校生は別の意味を強く意識する。それは、男女間での性行為。

 つまり、セックス……!


 伊吹は俺との友情を深めるために寝ると言っている――。


 なんてことはなく、プロレスファンの伊吹が言う場合は意味が異なる。

 寝るとは、敵の前で寝て、わざとフォールされて負けることを意味する。つまり、勝ちを譲るということだ。


 まあ、確かにこんな歩く冷蔵庫みたいなデカいやつを倒したという噂が広まれば、俺に喧嘩を売るやつなんて居なくなるだろうな。


「ひー君。考え事する時のその顔、マジでやめろって。

 というか、さっきの先輩に殴られたの、その顔が原因じゃないのか?」


「分かった。

 次に俺がそんなヤベえ目つきしていたら、その瞬間を撮ってメールしてくれ」


「やだよ。あの顔を待ち受けにしたら呪われるぜ」


「誰が俺を待ち受けにしろって言った。キモいな」


「俺の待ち受け、ひー君と一緒に写ってる体育祭のだぜ」


「女子かよ!」


 駐輪場に到着し、伊吹が自転車を取りに行く。


 その間、俺は他の生徒の邪魔にならないように駐輪場から少し離れた位置でスマホチェック。


 SNSアプリを開いたら、トーク画面より先に見知らぬ画面が表示された。


 ティロン♪


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