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6-2.愛沢さんと同じベッドで目を覚ます

「う、ん……」


 瞼の裏が明るい……。そろそろ朝か。


 ムニムニ。


(……?)


 何か左手で柔らかい物を握っている。ちょうど手に収まる大きさで弾力があって、俺の指を押し返してくる……。


(なんだろう、これ……)


 ムニムニ。


(まさか。ラブコメ漫画でよくある、寝起きに異性の胸を触るというやつでは……?)


 いや、いくらなんでもそんなことあるはずがない。


 ムニムニと感触を確かめる。


(球体の中央に何か突起があって……。おっぱいみたいな形だけど、違う。

 触ったことないけど、美空の胸はこんなに大きくない……)


 同居していればお風呂あがりの無防備なところや、襟元が緩い服装の時に、ちょっと胸元が見えてしまうことはある。美空の胸は同年代よりも控えめだ。

 だから今、触っているのは美空の胸ではない。


(なんかいい匂いする……)


 少しずつ脳が覚醒してくる。


 寝起きは瞼が重いからもう少し目を閉じていたいんだけど、柔らかい物の正体を確認するため、薄らと明ける。


 目の前にある黒髪を見た瞬間、一気に脳が覚醒した。


「……ッ!」


 誰かが俺のベッドの中に居る。


 だ、誰だ?!

 知らない人だ!


 ……いや、違う。

 昨日、家に帰ってきたら美空が五人に増えていたんだ。


 寝具が足りないから両親の布団を割り当てたり、美空のベッドをみーちゃんと美空ちゃんの二人に使ってもらったりして……。


 俺のベッドには愛沢さんが!

 二十四歳に成長した美空が寝ることになっていた!


 あっ、ああっ……!

 色々と思いだしてきた。

 俺は客間で寝ることになっていたけど、風呂あがりに眠すぎたから無意識のうちに、自室に戻ってしまったんだ。


 ということは、俺が左手で揉みしだいていたのは、愛沢さんの胸だ……!


 俺はそっと手を放す。


(愛沢さん寝ているよな?

 起こさないようにベッドから出て、客間に行かないと)


 慎重にゆっくりと布団を動かさないように体を回転させ、仰向けになったところで――。

 

「ひー君のエッチ……」


 聞き逃しかねないほどの小さな囁き。


「――ッ!」


 起きてた!


「ち、違ッ……! えっと……!」


「最初は寝ぼけていたのかもしれないけど、途中から手つきがいやらしくなってた……」


「そ、そんなことないです!」


「おっきい声出すと、みんな起きちゃうよ?」


「言い訳させてください」


「聞きましょう」


 熱のない声は俺に感情を悟らせない。


 愛沢さんは背を向けたまま。


 俺は心臓がバックンバックン鳴っているのに、なんで愛沢さんはこんなにも冷静で居られるんだ。


「俺はいつも十時に寝ています。

 昨日は色々あって〇時をすぎていたから眠くて頭が死んでいました。

 間違えて自分の部屋に戻ってしまいました。

 下心はありませんでした」


「しっかり触っていたのに?

 むしろ、柔らかな膨らみに指を這わせて、女の温もりを堪能してたよね?」


「寝ぼけていました。本当です。そんないやらしいことはしていません」


「本当かなあ」


「本当です。信じてください」


「……ん。信じるよ。からかいたかっただけ。

 ベッドで私が寝ていても気付かずに入っちゃうくらい眠かったんだよね。

 シングルサイズのベッドだから空きスペースなんて殆どないんだけど、割りこんじゃうくらい眠かったんだよね」


 なんか拗ねたような口調というか、子供っぽいというか、今の美空が怒った時みたいな喋り方だ。


「怒ってますよね? 本当に気付かなかったんです」


「許す」


「本当に?」


「本当。いきなり触ってきた時は驚いたけど……。

 別にひー君なら嫌じゃないし……」


 最後の方は小声になってよく聞き取れなかったけど、背を向けたままだから、怒っているのでは?


 愛沢さんの耳が赤い。頭にかなりの血が上っている?


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