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ひっそりと生きたい最強女子の転生譚  作者: 双月 仁介
第2.5章 閑話集
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090 ある土産物店店主の回想①

 私はこの地で長いこと土産物屋を営んでいるしがない中年オヤジだ。

 有名な観光地であるここには頭の痛い問題が一つ存在する。それが大規模な不良グループだ。

 素行不良の人間などいつの時代でもどの地域でも必ずいるものだし、なんなら私の若いころは私自身がそうだったのであまり強くも言えない。

 ただ、現在それが問題となっている背景には一人の人間の存在がある。腕っぷしの強さとカリスマ性で複数の不良グループをまとめ上げ、警察が安易に手を出すのを躊躇(ちゅうちょ)するくらいの勢力を作り上げた人間がいるのだ。

 暴対法により地元のヤクザが締め付けられている反面、半グレ集団であるこの不良グループは私たちから『みかじめ料』を徴収するところまできている(もちろん『みかじめ料』ではなく、『自警団費用分担金』という名目になっている)。支払いを拒否した店には嫌がらせを行い、お客さんが寄り付かないようにする等、被害は甚大だ。そのため多くの店が仕方なく、毎月『みかじめ料』を支払っているという状況だ。

 もちろん、うちも支払わざるを得ない。店だけじゃなく、私の家族にも被害が及ぶ可能性がある以上、仕方ないことだと割り切っている。

 なお、警察に訴え出た店もあったが、民事不介入などとふざけたことを言って取り合ってもらえなかったらしい。グループ内のある不良の親が県警のお偉いさんだという噂もあるが、真偽は定かではない。


 ただし、この地域が衰退するおそれがあるかというと、実はそうでもない。やつらは私たちの店が繁盛すればそれだけ甘い汁を吸えることを理解しているため、観光客に対する積極的な嫌がらせなどは行わないのだ。

 もちろん、『みかじめ料』を払わない店にはいかにもヤンキー風の格好をした人間が常にうろうろしているため、お客さんが入り辛くなっている。店からの退去を求めるとおとなしく店を出るのだが、そのあと店の前の公道で(たむろ)する。決して警察のお世話になるような不法行為は行わないように徹底されているのだ。本当にいやらしい奴らだ。

 店自体やそこで取り扱う商品を破損したりすれば警察沙汰にできるのだが、そんなことは絶対に行わない。ただ、その店の娘さんが学校の登下校時につきまとわれるという事案が発生したと耳にしたことはある。下手したらレイプに繋がるおそれもあり、その店の店主は泣く泣く不良グループに屈したそうだ。


 そんなある日、ある二人組の観光客がやってきた。

 一人は20歳(はたち)前後のクールビューティーとでも言うべき超絶美人で、隣を歩く中学生くらいの弟さんと会話している際に見せる笑顔がとても可愛らしい女性だ。

 弟さんも可愛らしい顔をしていて、女装すれば可愛い女の子(最近流行(はや)りの言葉を使えば『男の()』か?)になるのは間違いない。

 談笑しながら土産物店を見て回る二人は、当然不良グループにも目を付けられたようだ。通常は観光客に手を出さないことが徹底されているはずだが、女性の美しさはその(おきて)を上回ったみたいだ。


「ようよう姉ちゃん、俺たちとちょっと付き合ってくれよ」

 不良グループに所属する金髪で鼻にピアスを付けたいかにもヤンキー風の若い男が女性に声をかけると、その女性はうんざりとした顔になった。きっと毎度のことなのだろう。

 隣の弟さんが目を輝かせて満面の笑みを浮かべているのが不思議な感じだ。お姉さんがモテて嬉しいのだろうか?

「お断りします。それでは失礼します」

 軽くかわしてその場を立ち去ろうとした二人は、金髪の合図で出てきた不良たちに囲まれてしまった。

「なあなあ、良いじゃん。俺たちと良いことしようぜ。気持ちよくさせてやるからさ」

「そこをどいていただけませんか?でないと後悔することになりますよ」

「へぇー、面白いなぁ。ぜひ後悔させてくれや」

 金髪がその言葉を発した直後、姿が消えた。そしてそこにはなぜか弟さんが右手を突き出して立っていた。

 え?金髪野郎は?

 10メートルくらい離れた位置に仰向けで寝っ転がっていたよ。え?どういうことだ?

 弟さんがしゃべり始めた。ちなみに声変わりしていないのか、可愛らしい声だった。

「後悔させてほしいって言ったから、その通りにしてやったよ。だから僕は悪くないよ。ここには魔法阻害装置(ジャマー)があるのかな?だったら治癒はできないけど、手加減したから多分大丈夫だと思うよ」

「内臓破裂していないかしら?」

「あの金髪ヤンキーが吹っ飛ばないように、つまり力を浸透させるように打ったのなら内臓破裂するけど、あれだけ吹っ飛べば大丈夫。打撃力は移動エネルギーで消費されたよ」

「ふふ、さすがはツバサちゃんね」

 まだ不良集団に囲まれているというのに笑顔で会話する二人…。

 呆然としている不良たち…。

 あまりにも平然としている二人の観光客を見て、周りの店からプッと吹き出し笑いが発生した。私も思わず笑いそうになったよ。


 タイトルの『最強女子』って名前負けじゃん?

 え?主人公ってレイコさんだよね?は?ツバサちゃんなの?

 などとお思いの皆さま、私もそう思います(笑)


 ってなわけで、ツバサちゃんが活躍するエピソードを入れておきますね。


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