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ひっそりと生きたい最強女子の転生譚  作者: 双月 仁介
第2.5章 閑話集
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088 加藤ハヤト-2③

 俺のお仕えする九条家、そのご一族の内訳をここに記しておこう。

 まずはご当主であり、九条財閥の総帥でもある九条ヨシヒサ様が最上位に君臨している。周りからは『御前(ごぜん)様』と呼ばれている人物であり、政界にも大きな影響力を持っている人物だ。

 御前様の奥方様はすでにお亡くなりになっているが、ご子息様方は二名がご存命であり、それぞれ別の家庭を築いておられる。

 トモコ様というお嬢様が一人いらっしゃったのだが、駆け落ち同然に家出して、そのまま若くしてお亡くなりになったそうだ。そのトモコ様の忘れ形見(がたみ)であり、御前様のお孫様に当たられるのが高月レイコ様だ。

 かなりの美人、高い学力、空手の皆伝(かいでん)等、まさに完璧超人と呼ぶにふさわしいお方である。俺が今の地位(三番隊の隊長職)に()くことができたのはお嬢様のおかげでもある。九条家への忠誠心には欠ける俺だが、お嬢様への忠誠心はかなりのものだと自負しているよ。


 御前様の後継者候補が長男のタカヒサ様、次男のヨシト様のお二人だ。どちらのお方も九条グループの中核をなす大企業のCEOであり、冷徹でカリスマ性もあるタカヒサ様と人情家で配下にも慕われているヨシト様はまさに両極端な性格と言える。

 三国志で例えればタカヒサ様が曹操で、ヨシト様が劉備という感じかな?あくまでもイメージだけど。


 タカヒサ様の奥方様は九条家魔女部隊(ウィッチーズ)の統括であり、総隊長の百地(ももち)さんと共に九条家を支える重要人物だ。ちなみに年齢不詳の妖艶な美女でもある。

 タカシという息子とアスミという娘がいるのだが、この二人によるレイコお嬢様への暗殺未遂事件があったのは記憶に新しい。現在は贖罪(しょくざい)のため、それぞれ別の別荘で軟禁状態になっているけどね。


 次にヨシト様のほうだが、三人のお子様方がいらっしゃる。すでに成人されている長男のヒサト様と長女のリョウコ様、そして高校生である次女のレイカ様だ。

 ヒサト様とリョウコ様はご両親の性格を色濃く受け継がれたのか、とても穏やかで優しい方々だ。

 しかし、レイカ様だけは少し毛色が異なる。伯父であるタカヒサ様に性格がそっくりなのだ。つまり合理主義者であり、目的のためなら手段は選ばない…極論すれば『サイコパス』気味ですらある(ような気がする)。

 しかも魅了魔法(チャーム)を発動できる魔女でもあるらしい。あくまでもレイカお嬢様ご本人がそうおっしゃられているだけなのだが…。


 俺がまだ三番隊の(隊長ではなく)隊員であった頃、高月レイコお嬢様が九州の大学に入学なされた。九州ではトップクラスの国立大学だ。

 お嬢様の学力ならば東京や京都の国立大学であっても十分に狙えたと思うのだが、わざわざ福岡の大学に行ったことを少し意外に思ったものだ。まぁ、2地点間座標接続装置(ゲート)という魔道具が存在している今の時代、物理的な距離はあまり関係ないのだが。

 レイコお嬢様が大学生になられてからは高校生のときほど頻繁に帰省することはなくなった。御前様もいささか寂しそうだ。

 その心の隙間を埋めるように御前様に近づいたのがレイカお嬢様だった。孫の中でも最年少であり、容姿も可愛らしい。ただ、御前様の愛情はレイコお嬢様お一人に向けられているという現状、取り入ることはなかなか難しいようだ。

 レイカお嬢様が魅了魔法(チャーム)を使えることを公言している以上、魔法を使われることを警戒しているという面もある。


 御前様は常に魔法阻害装置(ジャマー)の影響下で行動しているし、屋敷から外出する際も携帯型の魔法阻害装置(ジャマー)を使用している。まず魅了することは不可能だろう。

 その対策として、レイカお嬢様は周りの人間から魅了していくつもりらしい。いわゆる外堀から埋めていくってやつだ。

 屋敷の塀の外側は魔法阻害装置(ジャマー)の影響範囲外だ。しかし、実は塀の内側であっても影響の及ばないエリアが多少は存在する。以前、屋敷の警備を担当していた俺だからこそ知っている事実なのだが、レイカお嬢様はご自分の足で歩き回ってその影響範囲外エリアを確認したらしい。うむ、マメな努力家ではある。

 その魔法阻害装置(ジャマー)影響範囲外エリアに使用人を呼び出しては、魅了魔法(チャーム)をかけているようなのだ。

 なぜ知っているのかって?それは俺にもそれをやってきたからだ。呼び出された先で、(魅了魔法(チャーム)かどうかは不明だが)お嬢様から魔法が飛んでくる。もちろん不自然にならないようにうまく避けているが、かかったフリをしているよ(魔法回避能力を知られたくないので)。

 屋敷内の男性の使用人はほとんどが魅了されているのではないかな?魅了される度合いには個人差があるみたいで、ほとんど魅了の影響を受けていないように見える百地さんのような特殊な例もあるけどね。

 また、同じ人間にも定期的に魔法を発動しているみたいで、俺も何度も呼び出されている。

 ただし、魔法の効果時間はそんなに長くないみたいだな。あと、同じ人に何度も魔法をかけてくる理由は不明だ。


 魅了魔法の効果だが、男性を思い通りに操るといった強力なものではなさそうだ。せいぜい好感度を高めるといったところだろう。美少女ゲームや乙女ゲームで好感度が上がったときにピロローンと効果音が鳴るような状況を思い浮かべて頂きたい。

 もしかしたらこの好感度は累積されていくのだろうか?…だとしたら何度も魔法をかけてくるのも(うなず)ける。


 それにしてもこの程度で『傾国(けいこく)の魔女』を名乗れるものかな?

 国の権力者を思い通りに操って…などという状況は作れそうにないんだが…。

 うーむ、レイカお嬢様の魔法は本当に魅了魔法(チャーム)なのだろうか?…はなはだ疑問だ。


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