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ひっそりと生きたい最強女子の転生譚  作者: 双月 仁介
第2.5章 閑話集
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087 加藤ハヤト-2②

 突然、お嬢様の雰囲気が軟らかいものに変化した。

 張りつめていた空気が霧散し、お嬢様は満面の笑みを浮かべている。

「合格よ。すぐにとはいかないけど、将来あなたを三番隊の隊長に任命します。隊長になったあと、もしもおじい様や総隊長の百地(ももち)さんから暗殺指令が下されても、うまく偽装しなさい。つまり、暗殺した(てい)で対象者を(かくま)ってもらいたいの。そのための資金は私が提供します」

「それは…要するに『証人保護プログラム』のようなものですか?」

「暗殺対象者は事故死に偽装されるのが常だけど、あなたが隊長になってからは『事故死に偽装して死んだものと偽装』するわけ…。自分で言ってて頭がこんがらがるわね」

 お嬢様が小首を(かし)げながら続けて言った。

「あ、もちろん死んだほうが良い人間には死んでもらうわよ。悪人を見逃すという意味じゃないからね」

 なるほど…。このお嬢様、すでに『死んだほうが良い人間』を殺しているんだな。うん、間違いない。さきほどの殺気は普通の人が身に付けられるものじゃないからね。


 この会話のちょうど一年後、俺は『三番隊』の隊長に就任した。もともとの隊長は『一番隊』の隊長に栄転し、『一番隊』の隊長を兼任していた総隊長の百地さんは総隊長専任となったのだ。

 この人事に不服を申し出たのが『三番隊』の副隊長だった。俺が『三番隊』隊員だったときの上司であり、本来なら自分がスライドして隊長になれると思っていたのだろう。

 俺としてもかつての上司を部下として使うことに多少の躊躇(ためら)いがある。


 結局、双方の精神的なしこりを解消するため、俺と副隊長は御前様やお嬢様のご覧になられる中、体術勝負を行うことになった。そして、あっさりと俺が勝利した。俺と同等の戦闘力を持っているのは、百地(ももち)総隊長や『二番隊』隊長くらいじゃないかな?

 なお、その試合中に俺に向かって外野から不可視の魔法が飛んできたのだが、難なく回避し(こと)なきを得た。おそらくあれは能力低下(デバフ)の魔法だったのだろう。副隊長の差し金だろうが、別に卑怯とは思わない。

 逆に、さすがは副隊長だと思ったよ。まぁ俺には通じないけどな。なにしろ俺には魔法を察知して回避する能力があるからね。


 試合のあと、お嬢様が御前様に提案した。

「おじい様、副隊長には新しい隊長の監視任務をさせてはいかがでしょうか?つまりは監察官ですね。若い隊長ですから我が家への忠誠心に問題があるかもしれません。裏切らないように監視させておきましょう」

「ふむ、そうだな。おまえの言う通りにしよう。双方それで良いな」

「「ははぁ」」

 なるほど。副隊長の遺恨を解消させるため、俺を監視する任務を与えるわけだな。さらに暗殺偽装を行う上でも、これでさらに信憑性が高まるわけだ。なにしろ俺に反感を持つ人間の監視下なのだから…。

 お嬢様がゲームの難易度を上げてきたわけだが、それは俺の望むところだ。受けて立つ。副隊長の監視のもと、しっかりと俺の正義を貫かせてもらうよ。

 お嬢様が一瞬、悪い笑みを俺に向けたが、俺はそれに気付かないふりをした。

 高月レイコというこのお嬢様…、正邪でいえば『正』のほうだとは思うし、超絶美人でもあるんだけど、なんとも油断ならない人物と言わざるを得ない。まさか転生者じゃないだろうな?


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