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ひっそりと生きたい最強女子の転生譚  作者: 双月 仁介
第2.5章 閑話集
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083 佐藤タケル①

 魔道具というものがある。

 魔法を使えるのは女性だけというこの世界で、誰でも魔法的な力を発揮できる素晴らしい道具(装置)だ。

 その歴史は電化製品よりも古く、古来より様々な道具が考案されてきたけれど、近年急速に発展してきたのは電子回路による制御が一般化したからだろう。つまりは魔力と電力の融合だ。

 そう言えば、この世界の根源的な力は、電磁気力、強い力、弱い力、重力、そして魔力の五つだそうだ。魔力以外の四つの力を魔法によって制御することはできないと言われているけどね。

 ただし、嘘か本当かは分からないけど、電磁魔法の使い手が外国にいるとかいないとか…。まぁ、二つの核力(強い力と弱い力)や重力を制御できる魔法使いは絶対にいないだろう。そんな魔女がいたら怖すぎるよ。


 ちなみに魔道具は魔力によって動作するので、魔石と呼ばれる魔力が固体化したもの(魔力の集合体)が必要だ。これは魔石鉱山から採掘されるんだけど、日本にはその鉱山が無いため、全て輸入に頼っている。

 あと、魔道具に関しては画期的な発明が二つある。これは『21世紀の大発明』と呼ばれているよ。

 一つは、魔力タンクの発明だ。特殊な材質の容器の内側に魔石を砕いて粉末状にしたものをコーティングし、何度でも魔力の再充填ができるようにしたものだ。一つの魔力タンクの製造には複数個の魔石が必要であり、格納効率もあまり良いとは言えない。でもこの技術が素晴らしいのは、人(魔女)が手作業で魔力を充填(じゅうてん)することができる点だね。つまり再利用性が高い。使い捨ての(というか、魔力が全て放出されると消えてしまう)魔石と比べると、その利点は極めて大きい。特に我が国のように魔石を輸入でしか手に入れられない国は…。

 あ、余談だけど『召喚魔法(サモン)』で召喚した魔物(モンスター)を倒して、その身体から魔石を抜き取ることで入手することもできるけど、あまりにも非効率的だ。


 もう一つの発明は、電力から魔力を得る技術だ。

 魔法で発電機を回して、電力を得るのは簡単だ。ところが、その反対は長い間できなかった。なぜって、魔力の発生条件が分からなかったからだ。

 しかし近年の研究で、魔力は心臓の拍動(心拍)から生じるということが判明した(自然界における魔石の発生条件はまた別なんだろうけど…)。

 そこでクローン培養した心筋細胞を使って模擬心臓と呼ぶべき臓器を作り、それを電気の刺激で動かして魔力を発生させる装置が開発された。これを『発魔機』と呼んでいる。発電機の魔力版だね。ちなみに、その発生した魔力は先に説明した魔力タンクに充填されるというわけだ。

 魔石は魔力タンクの製造原料なので輸入が無くなることは絶対に無いけど、それでも輸入量はかなり減少したそうだ。でも逆に魔道具の製造量は増大しているんだけど、その理由がこの二つの大発明にあることは言うまでもない。それらの特許を持っているのは日本の企業ではないけどね。


 で、僕が魔道具に詳しい理由は、父親が魔道具の研究者であり、ある魔道具メーカーの重役でもあるからだ。まだ先の話だけど、大学卒業後は父さんと同じように魔道具メーカーに就職したいと思っている。『親の七光り』とは呼ばれたくないから、父さんの勤める会社とは別の魔道具メーカーに入るつもりだけど…。


 そんなある日、父さんから相談を受けた。ちなみに僕は大学一年生であり、都内の私立大学(割と有名なところ)に通っている。もちろん、都内の賃貸アパートに一人暮らしだ。ただ、父さんも単身赴任で東京にいるため、最近はちょくちょく会っている。土曜日の今日もそうだ。

「タケル、お前の知り合いに2地点間座標接続装置(ゲート)のモニターになれそうな人物っていないか?」

 いきなり用件を切り出してきた父さんは少し(あせ)っているようだ。

「突然何を言ってるの?2地点間座標接続装置(ゲート)なんて高価な魔道具、そうそう買える家は無いよ」

「いや、無料モニターなんだが、貸し出し条件が厳しいせいで、なかなか適任者が見つからないんだよ」

「条件って?」

「一つは庶民であること。まぁこれは問題ないんだが、もう一つが問題なんだ」

「それは?」

無限倉庫(インベントリ)を持っていること」

「そりゃ確かに見つからないだろうね…」

 無限倉庫(インベントリ)を持っている人はほとんどいないのに、持っている人はそれを隠す傾向にあるからね。でもこのとき僕の脳裏には一人の女の子の顔が浮かんでいた。


「なんで無限倉庫(インベントリ)が必要なの?」

「政治家や実業家たちには有償で貸し出すんだが、設置する屋敷のセキュリティは信頼できるから問題ない。だが、中流階級の庶民に対しては無料で貸し出してモニタリングしたいと思っているんだ」

「ああ、庶民の家に高価な無限倉庫(インベントリ)を置きっぱなしにすると盗まれる可能性が高いってことか…」

「察しが良いな。その通りだ。まぁ今回の新商品はかなり安くはなっているがな。庶民でもローンを組めば買えるくらいには…」

「へぇー、いくらで販売するつもりなの?」

「これは秘密だぞ。前の機種が1000万円超えだったのに対し、今回のはなんと300万円だ。まさに価格破壊だな」

「そりゃまた安いね。かなり機能制限があったりして?」

「魔力タンクは無し。必ず電源が必要だ。あと、発魔機(はつまき)の出力で(まかな)える距離までしか空間を繋げられない。魔石も内蔵できない」

 なるほど。魔力消費は繋げようとする2地点の距離に比例するからね。そんなに遠くへは行けないわけか。

 あと、以前の機種は魔石と魔力タンクと発魔機のハイブリッドだったんだけど、おそらく魔力タンクのコストが大きかったんだろうな。

「普及を図るための廉価版ってことか…。ところで僕の友達に適任者がいるんだけど、僕のほうから本人に意向を聞いてみようか?」

 もちろん津慈ツバサちゃんのことだ。彼女なら(盗まれないように)ちゃんと管理してくれるだろう。なにしろ、しっかり者だからね。


 ツバサちゃんは宇宙の根源的な力を4つであると認識していますが、それは前世の知識に引っ張られているからです。この世界の物理学の常識的にはタケル君の言う通り、魔力を含めた5つの力が根源らしいです。

 ただし、力の統一理論はこの世界にもまだ無いようですが…。


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