077 修学旅行四日目
今日は土曜日なので品川駅も通勤ラッシュじゃないみたい。30以上のグループがそれぞれ自由に行動するんだけど、とりあえず山手線に乗るのは共通だね。内回り(反時計回り)か外回り(時計回り)かはそれぞれのグループごとに違うけど。
僕たちのグループは内回りの山手線電車に乗って、まずは秋葉原を目指すことになった。てか、アイちゃんが駄々をこねて仕方なかったからだ。子供か、お前は。
「アイちゃんって金持ちのくせに東京は初めてなの?」
「おう、実はそうなんだ。俺の両親が東京嫌いでな。なんか若いころに東京で嫌なことがあったらしい。詳しいことは聞いてないけどな」
「へぇー、…ってことは東京初心者はアイちゃんとアヤカちゃんと僕くらいってこと?あ、レイコちゃんは?」
「私は中学校を卒業してから少しの間だけ大田区にいたことがあるわ。本当に一時的にだけどね」
ここでタケル君がポツリと言った。
「大田区といえば、高級住宅街である田園調布があるね」
「あ、田園調布って聞いたことあるよ。豪邸だらけなんだよね?」
僕の疑問にマイさんが答えてくれた。
「そうらしいよ。セレブの街って感じね」
「ちょっと見てみたいよね。あ、でも観光客が行ったりしたら迷惑かな?」
「ああ、行くのは止めておこう。観光地じゃないしね」
アヤカちゃんの発言に対するタケル君の返答だ。てか、タケル君の佐藤家って何をやってる家なんだろ?年収の関係で特待生資格が取れないって言ってたから、金持ちなのは間違いないけど…。
秋葉原駅を一歩外に出た途端、華やかな雰囲気に圧倒された僕たちだった。雰囲気を味わうだけでも楽しい気分になるね。
ただ、興奮して走り出そうとするアイちゃんの襟をタケル君が片手で引っ張っていたんだけど、なんだか競走馬の手綱を握る騎手みたいだったよ。めっちゃ笑える。
秋葉原のあとは地下鉄に乗って国会議事堂前駅で降りて国会議事堂を見たり、浅草寺や東京スカイツリーなんかを観光したよ。あれ?東側ばっかりだな。西側の渋谷、新宿には時間的に行けなかったけど、仕方ないね。
こうして何のトラブルもなく、半日ほど東京観光を堪能することができた僕たちだった。召喚の魔女にしても、至る所に魔法阻害装置があるせいで何もできなかったのだろう。
「アヤカ、すまねぇな。お前は原宿とか行きたかったんだろ?」
「ううん、大丈夫だよ。秋葉原もスカイツリーも楽しかったし…」
「お詫びに今度、プライベートで俺が連れていってやるよ」
「え?そ、そ、それって、で、で、デートのお誘いなのかな?」
「ば、ば、馬鹿野郎。皆で、だよ。なっ!タケル」
アイちゃんとアヤカちゃんの会話なんだけど、いきなりタケル君にパスが渡された。てか、いつものことか。
タケル君がうんざりしたように言った。
「別に二人でデートすれば良いじゃん。僕を巻き込まないでくれよ」
これには僕も激しく同意だよ。なので、一応言っておこう。
「アイちゃん、アヤカちゃんを泣かせるようなことをしたら僕が許さないからね。アヤカちゃん、こいつは馬鹿だけど悪いやつじゃないし、お幸せにね」
二人とも動揺しまくって言い訳してたけど、お互い好意を持っているのは見え見えなんだよ。てか、リア充かよ!
修学旅行に関する最終話です。
ちなみにアイちゃんとアヤカちゃんはお似合いのカップルです。…って、いつの間に?




