071 深夜の激闘②
「物音を立てないようにして隠れていれば見逃してくれるのではないかしら?」
シズクお姉さんが希望的観測を述べたけど、多分それは楽観的過ぎるよね。
とにかく戦闘をいつどこで開始するのか、誰かが指揮・命令してくれないと…。
…っと、ここでタケル君が指示を出してくれた。さすがはリーダーだ。
「外は積もった雪で足場が悪い上に、月明りだけではやはり暗すぎる。ここは建物内で迎え撃とう。あの巨体ではドアから入ってくることはできないから、きっと窓から侵入しようとしてくるはず。足から入ろうとされたらマズいけど、頭から入ろうとしたらチャンスだよ。エアガンでの一斉射撃で敵をひるませて、隙を見て包丁を眉間に突き立てるという作戦はどうかな?」
「足から入ろうとしたらどうする?」
「その場合も一斉射撃することは変わらない。いくら魔物でも痛みくらいは感じるだろう?というか、殺傷力のないエアガンでは敵をひるませることくらいしかできないからね」
アイちゃんの質問にも的確に答えていくタケル君。こんな極限状況だというのに、とても冷静で頼もしいよ。
続けて僕も言った。
「BB弾がうまく目に命中すれば、大鬼と言えども逃げ出すかもしれないよね」
「そうだな。ツバサは狙撃って得意かい?」
「ううん、ライフルは買ったけど、ほとんど使ってないよ。いつも使うのはサブマシンガンのほうだね」
「だったら僕がライフルを使おう。ツバサとアイちゃんはサブマシンガンで弾幕射撃を頼むよ」
ここでレイコちゃんも会話に加わってきた。
「私にはメリケンサックとは別に包丁も貸してくれるかしら。接近戦の得意な私が眉間に包丁を突き立てる役をするわ。あ、私に弾を当てないでね」
「だってさ、アイちゃん。気を付けろよ。レイコちゃんにBB弾を当てたら殺すぞ」
「なんで俺だけに言うんだよ。当てねぇよ。てか、お前のほうこそ気を付けろよ」
なんとなくうまくいくような気もしてきたよ。最悪の場合、重力魔法を発動するけどね。
「あ、窓ガラスを割られたときって、破片が飛び散って危険じゃないかしら?」
マイさんが疑問を呈したけど、確かに危ないな。
「窓枠全面に毛布をカーテンみたいに吊るしたらどうかしら?外から中を覗けなくなるし、一石二鳥かも」
「良いね。すぐに準備しよう」
僕はマイさんの提言に従い、無限倉庫から安全ピンやビニール紐を取り出した。窓枠の上に紐を張って、そこに毛布を吊るすのだ。
すぐに準備は完了し、あとは敵の来襲を待つのみだよ。
「来ました!」
毛布の隙間から偵察していたアヤカちゃんの声に全員の緊張が高まった。いよいよだ。




