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061 修学旅行一日目

 修学旅行先は東北にある、とあるスキー場だ。

 東京駅で東北新幹線に乗り換え、さらに在来線に乗り換えてようやくたどり着いたんだけど、宿泊場所はすごく立派なリゾートホテルだったよ。そしてそこには大きなスキー場(難易度の異なるコースが何本もある)が併設されていて、すぐにリフト乗り場に行けるようになっていた。

 旅行費用の積み立ては特待生も関係なく(おこな)われたんだけど、かなり高かったんだよな。うちの高校って裕福な家庭の生徒が多いとはいえ、かなりの金銭的負担を()いられたと思う。普通の公立高校とはレベルが違うよ。

 旅行費用を出してくれた両親に感謝だね。心配なのは一人暮らしをしているレイコちゃんだけど、師匠(レイコちゃんの親父さんで僕の空手の師匠)の死亡保険金で(まかな)えたのかな?ちょっと気になったけど、レイコちゃん本人には何も聞いていない。いや、聞きにくいからね。

 一応、旅行費用の積み立てが厳しい家庭のため、就職後に返済しなければならないタイプの奨学金貸付制度もあるらしいんだけど…。


 あと、旅行の日程だけど、まずはここに二泊して、帰路は都内(港区らしい)のホテルに一泊する予定なので、三泊四日ということになるね。今日は今から初心者のためのスキー教室で、明日は丸一日スキーを楽しむことになる。三日目の午前中までがスキーで、午後からは東京に移動する。四日目の午前中は都内観光(グループごとの自由時間)を楽しみ、その後、帰路に()くという計画だ。

 初日は時間が無いためリフトを使わず、なだらかな斜面でボーゲンの練習をするだけだ。

 各グループごとの行動になるんだけど、なんとインストラクタがグループごとに一人付いてくれるという親切仕様。まぁインストラクタと言ってもそれほど大層なものではなく、近くの大学に通う学生アルバイトらしいけどね。

 僕たちのグループに付いてくれたのは女子大生の日高シズクという名のお姉さんだった。すでに成人している美しい女性だったよ。担当が美人で良かったな、アイちゃん。


「それではスキーは初めてという人は手を上げてください」

 シズクお姉さんの声に従い、挙手したのはレイコちゃん、アヤカちゃん、僕の三人だった。

 マイさんとアイちゃん、タケル君は経験者か。ちぇっ、羨ましくなんてないんだからね。てか、今日から僕らもスキー経験者だし…。

 なお、スキー板とストック、あとスキーウェアやスキーブーツなんかはホテルが貸し出してくれるから安心だ。アイちゃんだけは自分の愛用の板やスキーウェアを事前に宅配便でホテルへ送っておいたみたいだけどね。このブルジョア野郎。


 まずはスキー板の装着方法から教えてもらい、立ち上がった後は板を八の字にしてボーゲンで滑る練習だ。

 あっという間にマスターしたのがレイコちゃんで、アヤカちゃんと僕はなんとかゆっくりと滑っては転び、すべっては転びって感じだった。

 てか、アヤカちゃんと僕がプルークボーゲン(足が常に八の字)で方向転換しているのに対し、レイコちゃんはすでにシュテムターン(曲がるときに足を平行に揃える)まで進んでいた。

 マイさん、アイちゃん、タケル君の三人はパラレルターンってのができるらしいよ。くそ、かっこいいな。

 一時間ちょっと練習して、なんとか(さま)になってきた(ような気がする)。

 明日は朝からリフトの乗り方を習って、そのあとは初心者用コースを滑り降りるらしい。上級者の三人にはちょっと申し訳ないな。


 ホテルの部屋は一人一人個別のシングルルームなんだけど、夕食は大きな食堂に全員が集まって()ることになっている。ただし、テーブル席はグループごとだ。

 出てきた料理はこの地方の郷土料理っぽいもので、とっても美味しかったよ。

「うー、身体がだるい…。明日は筋肉痛になりそうな気がする」

「だらしねぇな。明日は俺が手を引いてやろうか?」

 思わず出た僕の愚痴にアイちゃんがすかさず合いの手を入れてきた。てか、いつものことながら発言がキモいんだよ。

「僕よりもアヤカちゃんの面倒を見てあげてよ。そう言えば、アイちゃんのスキー板って自前のものだよね。お値段って、いくらくらいなの?」

「おお、アヤカのお世話なら俺に任せておけ。ちなみに俺の板の値段は、安物で恥ずかしいんだけど10万円くらいだな」

「10万円が安物なのかよ。死ね、金持ち野郎」

 アイちゃんと僕の会話を聞いていたアヤカちゃんが頬を赤く染めて恥ずかしがっている。まったく、アイちゃんのセリフってナチュラルにキモいんだよ。しかも、自覚がないのが(たち)が悪いという…。


「あとでツバサちゃんの部屋に遊びに行っても良いかしら?」

 レイコちゃんの問い掛けに僕は即答した。

「もちろん良いよ。アヤカちゃんとマイさんも一緒にどう?」

「お、良いのか?じゃあ俺も…」

「てめぇは呼んでねぇ。殺すぞ、まじで」

 女子の部屋に男子を呼ぶわけないだろ!

 アイちゃんと僕のいつも通りの掛け合い漫才に、笑いに包まれる僕たちのテーブルだった。


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