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060 お買い物

 今日は日曜日。駅前で皆と待ち合わせをしている。

 そう言えば、今年の3月にここでレイコちゃんから突然話しかけられたな。あの時は驚いたよ。

 待ち合わせの時間よりも早めに来た僕は一人、所在なさげに立っていた。

「ツバサちゃん、おはよう!」

 いつもの三つ編みではなく自然に髪をなびかせているアヤカちゃんが、丸眼鏡の奥から優し気な目で僕を見ていた。

「おはよう、アヤカちゃん。早いね」

「それはこっちのセリフだよ。まだ約束の時間の30分前だよ?」

「うん、今日のことが楽しみで早めに来ちゃったよ」

「ふふ、私もよ」

 話し相手がいると待ち時間も気にならないね。


 それから10分もしないうちにもう一人やってきた。

 肩に届くくらいのストレートヘアと可愛らしい顔立ち。キリっとしてるときは美人なんだけど、微笑むと可愛い感じになる女の子。

 つい最近友達になった嵯峨野(さがの)マイさんだ。

「ツバサちゃん、アヤカさん、おはよう」

 アヤカちゃんと僕も朝の挨拶を返して、三人での談笑が始まった。ちなみに、マイさんが僕たちを呼ぶとき、レイコさん、アヤカさん、アイ君、タケル君なんだけど、僕だけツバサちゃんって『ちゃん』付けなんだよな。距離の近さを感じるから良いんだけど、子供扱いされてる感じがしてちょっと複雑…。

 あ、マイさんを呼ぶときは『さん』付けだけど、これはアイちゃんの妹の相田マイちゃんと区別するためだ。その辺のこともきちんとマイさんには伝えているよ。


「皆、何時に来てたの?私が遅刻したみたいじゃない」

 腰くらいまである長い髪を風になびかせ、前髪は横一線、いわゆる『パッツン』にした日本人形のような美人がそこにいた。

「レイコちゃん、おはよう。約束の時間の5分前だから遅刻じゃないよ。まぁ僕は1時間前から来てるんだけどね」

 もしもここにアイちゃんがいたら適切にツッコんでくれただろう。『どんだけ楽しみにしてたんだよ』って感じで…。

 でも今日は女子だけで買い物にいくのだ。電車に乗って少し離れた大きな街のデパートに行き、旅行に必要な諸々を買う予定だ。生理用品など女子特有のものもあるから、アイちゃんとタケル君には遠慮してもらったよ。


「おはよう、レイコちゃん。私は30分前ね」

「レイコさん、おはようございます。私はその10分後かな」

 アヤカちゃんとマイさんも続けて発言した。

「海軍5分前の精神で早めに来たのに、私が最後になるとはね。まぁ良いわ。それじゃ行きましょうか」

 『5分前精神』を知っているとはなかなかマニアックだな。…って、それは僕もか。


 いつもの平日はとても混むらしいこの電車だけど、日曜日の朝9時台なのでかなり空席も目立つよ。ただ、目的地はたった数駅先なので、席には座らずにドア付近に立って談笑している僕たちだった。なお、美少女女子高生(JK)が四人も集まっていれば目立つのだろう、チラチラと視線を感じたよ。

 電車はすぐに目的の駅に着き、僕たちは目的地であるデパートへ向かったんだけど、実はまだ開店していない。絶対に遅刻してくる人がいるから早めの時間を待ち合わせ時間に設定してたってのに、誰も遅刻してこないんだもの。

 仕方なく近くの喫茶店で時間を潰すことにした。

 皆、朝食は家で食べてきたみたいだから、本当にお茶するだけなんだけど。


 あ、ちょうど良い機会だからマイさんにも教えておこうかな。

「ねえ、マイさん、レイコちゃんとアヤカちゃんは知ってるんだけど、僕の能力を教えておくよ」

「能力?」

「うん、僕は無限倉庫(インベントリ)という容量無限、時間経過無しの倉庫を持ってるんだよ。だからどれだけたくさん買い物をしても荷物が多くて大変…ってことにはならないからね。どんどん頼ってもらって良いよ」

 マイさんが目を丸くしている。かなり驚いてるみたい。

 するとアヤカちゃんも続いた。

「それじゃ、私の能力も教えておくね。これはレイコちゃんやツバサちゃんも知ってるんだけど、検索(サーチ)といういわゆる『鑑定』能力を持っているの。製品の品質の違いなんかは一目瞭然だから、買い物のときは私のことも頼ってね」

 良いなぁ、鑑定能力。ラノベなんかだと転生者に与えられる能力ってのが定番なのに、僕には備わってないよ。まぁラノベと現実は違うか…。


「す、すごいんだね。私の治癒魔法がかすむレベル…」

「いやいや、僕はマイさんの治癒魔法もすごいと思ってるよ。怪我したときには頼らせてもらうね」

 ここでレイコちゃんが不服そうに発言した。

「私だけ無能力者みたいね。皆が羨ましいわ」

「いや、レイコちゃんには天才的な頭脳と『空手』という物理的戦闘力があるじゃん。僕の中ではレイコちゃんって文武両道の完璧超人だよ」

 僕の言葉を聞いて嬉しそうににっこりと微笑むレイコちゃん、可愛いです。


 その後、開店時間と同時にデパートに入り、ゆっくりと買い物を楽しんだ。アヤカちゃんの『検索(サーチ)』や僕の『無限倉庫(インベントリ)』が大活躍したのは言うまでもない。

 あ、当然だけど収納のタイミングについては、デパートの階段の踊り場なんかでこっそりとだよ。できるだけ秘密にすべき能力だからね。


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