006 秘密
突然、銀行内の電話が鳴った。
あ、そろそろ要求した期限である一時間が経ったのかな?多分、警察からの電話だろう。
銀行員の人に電話に出るように言って、スピーカーフォンにしてもらった。
『もしもし、警察だ。私は交渉人の武藤警部補というものだが、犯人と話をしたい』
「私は強盗犯の鈴木、鈴木マコトと申します。これから人質を解放して投降します。なお、人質は一人も傷つけていません。あ、銃で撃ってしまった方は大丈夫だったでしょうか?」
『うむ、なんとか一命はとりとめたようだぞ。君たちにとってもこれは朗報だろう?』
「ああ、良かった…。本当に申し訳ないことをしました。すぐに扉を開けますので…」
警察との電話が切れたあと、僕は全員を見回して言った。
「皆さんにお願いなんだけど、僕がメグミさんを助け出したことを秘密にしてほしいんだ。メグミさんにもすでにお願いしてるんだけど…。廃工場でメグミさんを助けたのは、通りすがりのヒーローってことにしてもらってるんだよね」
「つつちゃん、あとで事情は説明してもらうわよ。うふっ、でも良いわ。強盗さんたちが勝手に改心したってことにしましょう」
美女先輩が怖い顔から一転、笑みを浮かべて僕に言った。本当に良い先輩だな。
他の人も笑顔で頷いている。全員、良い人たちだな。
「あ、認識阻害のお姉さん、めちゃくちゃ役に立ったよ。あと、透視のお姉さんがいなかったら誘拐犯の居場所が分からなかったよ。他の皆さんもありがとう」
頭を下げた僕に倣って、強盗犯A・B・Cも一緒に頭を下げた。
んで、このあと裏口のドアを開放し、そこからなだれ込んできた警察官がこの事態を収拾してくれた。あー、疲れた。てか、会社の昼休みが終わっても戻ってこない僕と美女先輩は、会社の人たちに心配をかけてるだろうな。ほんと申し訳ない。
このあとも事情聴取とかで拘束されるはずだしね。はぁー、憂鬱だ。




