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058 修学旅行準備①

 今日のホームルームでは来月の修学旅行のグループ分けを行うらしい。

 一つのグループは四人乃至(ないし)六人で、『リーダーがメンバーの氏名を記入した用紙を提出すること』と担任の先生から通達があった。

 タケル君が代表して教壇から用紙を貰ってきたので見せてもらったら、そこにはリーダーの氏名を書く欄とその下に五人分の氏名の記入欄があった。

 話し合いが始まると、それぞれが自由にあちらこちらで集まって談笑している。僕たちのところにはアイちゃんとタケル君がやってきているけど、これはいつも通りの光景だ。

「うちってリーダーは誰なんだ?」

「やはり学年主席のレイコちゃんではないかしら」

 アイちゃんの質問にアヤカちゃんが答えている。


 でもレイコちゃんは嫌そうだ。

「私よりもタケル君のほうがリーダーシップがあると思うわ。どうかしら?」

「うん、僕もそう思う。細かいところに気が付く苦労人だし、リーダーにふさわしいと思うよ」

 僕の発言を聞いたタケル君が何ともいえない表情で言った。

「うーん、それって褒められてるのかな?『苦労人』って誰に苦労をかけられてるんだろう?」

 女子三人が一斉にアイちゃんのほうを見たのは言うまでもない。


「ん?何だ?そんなに注目されると照れるぜ」

 アイちゃんの発言を聞いたタケル君がやれやれといった風情でリーダー就任を承諾してくれた。

「はぁ、分かったよ。一応、僕がリーダーってことにしておくけど、グループの行動方針は合議制だからね」

 提出する用紙に自分を含めた五人分の氏名を記入していくタケル君。

 早々にグループを結成した僕たちは暇なので、見るともなしに周りを見ていた。すると、一人の女子がフラフラと動き回っているのが気になった。

 人の集まりに話しかけては断られている?グループに入れて欲しいって言ってるのかな?

 三か所くらいに断られて心が折れたのか、自分の席に座ってうつむいているよ。どうにも気になるな。てか、あの子って嵯峨野(さがの)さんじゃないか?治癒の魔女の。


 アヤカちゃんも気付いたのか、事情を話し始めた。

「彼女の父親は市会議員で、斎藤議員と同じ政党に所属しているの。退学した斎藤先輩とは親つながりの知り合いで、この前の全校集会のあとも斎藤先輩を擁護する発言をしていたそうよ。そのときは周りも割と同情的だったみたいだけど、いじめが発覚したでしょう?あれで彼女の立場も悪くなったみたい」

「ああ、いじめ首謀者であることを知らずに擁護するような発言をしちゃったってことか」

「うん、いじめのことを知らなかったのかどうかは分からないけど、例えるなら『いつ爆発するか分からない爆弾』みたいな扱いになってるみたい。それで友達も離れていったらしいわ」

「アヤカちゃん、よく気付いたね。僕は全然気が付かなかったよ」

「私もボッチだったからね。ボッチの(つら)さや苦しさはよく知ってるもの」

「ところで何で『爆弾』なの?」

「だって斎藤先輩の件が誰の逆鱗(げきりん)()れたのかが分からないのだもの。あの子と仲良くしたことで、その『誰か』に目を付けられるような事態は避けたいって皆が思ってるのよ」

 なるほどね。でもあの子自身には何の落ち度も無いよね。

 僕がレイコちゃんを見ると微笑んで(うなず)いてくれた。うん、レイコちゃんも同じ気持ちだと思う。


 僕はアイちゃんに言った。

「アイちゃん、嵯峨野さんを誘ってきなよ。うちのグループに入らないかって」

「え?お前ら良いのか?アヤカが言ってたように(わけ)アリだぞ。まぁ俺は別に構わないけどな」

 タケル君もレイコちゃんもアヤカちゃんも同意してくれたよ。ほんと全員お人好(ひとよ)しだと思う。

 ついでにこれも言っておこう。

「アイちゃん、嵯峨野さんの名前はマイさんだよ。妹さんと同じ名前だから親近感が()くでしょ?」

「おお、そうなのか。良い名前だな。あと美人だよな」

「確かに美人だけど、さっさと誘いに行けや」

 軽~く正拳突きをアイちゃんのわき腹に当ててやった。大袈裟に痛がる演技(フリ)をしてたけど、軽いボディタッチであって決して暴力じゃないよ。

 てか嵯峨野さん、今にも泣きそうになってるから早く行けっつーの。


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