057 高月レイコ⑫
私の従兄の護衛は九条家のものとは別で、彼の家独自に雇ったものだそうだ。その護衛を今回の失態(護衛対象を拉致されたこと)をネタに脅して、こちらのスパイに仕立て上げた。要するに、こちらに寝返らせたのだ。
これで私の動きについて、伯父に報告されるのは防げたと思う。まぁ先に仕掛けてきたのは従兄なので、正当防衛ではあるのだけれど…。
なお、『毒の王』に連絡がついて、私の暗殺依頼の取り消しについては成功した。これには本当に安堵した。依頼を達成していないのに『成功報酬を支払う』という申し出が功を奏したようだ。ふふ、所詮は金ね。
ちなみに、報酬を支払うのは従兄なのでどうでも良いのだけれど、手付金は3千万円で成功報酬も同額の3千万円だったそうだ。私の命の値段がそんなに安かったことに、少しショックを受けた。
あと、従兄本人については洗脳までは行っていないものの、今回の自白映像を見せることで新たな動き(私の暗殺)は封じている。変な動きを察知したら祖父(御前様)に報告すると脅したのだ。
もしも祖父が今回の一件を知ったらどうするのだろう?九条家の直系ということで警察に逮捕されることはないだろうけど、一生どこかに幽閉されることになるかもしれないわね。
まぁ従兄は馬鹿だし、放置しておいても危険はないでしょう。…とか言ってると、足元をすくわれる危険性もあるけどね(今回の『毒の王』の一件のように)。
なお、自白映像を見た従兄の反応は面白かったな。自分が淡々と犯罪を自白している様子を見て、真っ青になって震えていたわ。どうやら自白剤などの薬物を使われたと思ったみたいだけど。
あと、怪しい動きを起こしそうな人物はまだまだいるのよね。総資産が兆を超えると言われている九条家だ。権力争いは避けて通れないのだろう。
まずは伯父の妻と長女が要注意だ。叔父のほうは次女が怪しい。
いずれにしても女性なので、私の魅了魔法が通用しない。早めに誰を支持するのかを明らかにしておくべきかな?私としては伯父を次期総帥に考えていたのだけれど、馬鹿息子をきちんと教育できていないという今回の一件が大きな減点になったのは否めない。
ただ、伯父本人は冷徹な経営者で、カリスマも備えているなかなかの人物よ。少し甘いところのある叔父よりは総帥にふさわしいと思う。
私は『神輿は軽いほうが良い』という考えは持っていない。優秀な人物がトップの座に納まるべきだと思っているわ。重かろうが軽かろうが、男性であれば魅了には逆らえないのだし…。最悪なのは私以外の女性がトップになること。それだけは阻止しなければならないわね。
毒事件の後日談です。
次の話からは第2章のクライマックスとなる修学旅行に関する話になります。




