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054 文化祭②

 午前中、色々なところを回ってそろそろ足も疲れてきた。お昼時なので、屋台で何か買って休憩がてら食べようということになった。

 校内にはたくさんの屋台が出店されていて、休憩用のテーブルや椅子も多く置かれている。すでに何人もの生徒や外部から見に来た人たちが、談笑しながら飲んだり食べたりしているよ(あ、飲むと言ってもジュースや水のことで、お酒じゃないよ)。

 生徒が出す屋台の場合は食中毒なんかが怖いけど、この学校では調理師資格を持つ料理人が出店する屋台しか出ていないらしい。安心安全だね。


 アヤカちゃんとマイちゃんには四人掛けのテーブルを確保してもらって、レイコちゃんと僕が注文した料理を運ぶ係だ。三つくらいの屋台を回って色々な料理を揃えたいから、二人で手分けして屋台に並んだ僕たちだった。

 なお、無限倉庫(インベントリ)を使えば持ちきれないほど多くの料理を運ぶのに便利なんだけど、その能力をできるだけ隠しておきたい僕は、屋台とテーブルを頻繁に往復することになったよ。仕方ないね。


 …っと、ここでレイコちゃんが並んでいた屋台で何かあったみたい。

 刑事っぽい感じのスーツを着た男性が二人、屋台の店主を拘束していた。何なの?指名手配犯とかかな?

 ちょうどレイコちゃんの順番だったのに、料理を受け取る前に店主がいなくなってしまったため、仕方なく別の屋台の列に並びなおしていた。なんだか間が悪いというか運が悪いというか…。

 僕の持ってきた料理が()めちゃうな。日差しが暖かいとはいっても、もう11月の屋外だからね。うーん、悩んだ末にテーブル上に並べていた全ての料理を無限倉庫(インベントリ)に収納したよ。無限倉庫(インベントリ)の中なら時間経過無しだからね。

「うわっ、き、消えた…」

「え?え?何?」

 マイちゃんとアヤカちゃんが驚きの声を発した。ごめん、事前に説明するべきだったね。

「料理が()めちゃうから、一旦僕が預かっておくよ」

「え?まさかツバサちゃんって無限倉庫(インベントリ)を持っているの?」

 さすがは優等生のアヤカちゃんだ。すぐに無限倉庫(インベントリ)ってことに気付くとは…。


 しばらく待っていると、レイコちゃんが大きな紙袋を抱えて僕たちの座っているテーブルのもとへと戻ってきた。

「あら?ツバサちゃんの買った食べ物は?」

 困惑した様子のレイコちゃんに聞かれた僕は、無言のどや顔で無限倉庫(インベントリ)から取り出してテーブル上に並べていった。

()めちゃうから僕が収納しておいたよ」

 レイコちゃんが目を細めて僕のことを見つめている。こ、これはジト目ってやつですか?

「ツバサちゃん、これって無限倉庫(インベントリ)でしょ?親友の私にも秘密にしてたんだね。悲しいわ」

「いやっ、その、これは…」

「うふふ、嘘よ。秘密にするのは当然だわ。いえ、ここで私たちに秘密を明かしてくれたことが逆に嬉しいわ」

 ジト目から一転、柔らかい微笑みで僕を見るレイコちゃん。ごめんよ、もう一つ秘密にしていることがあるんだよ(僕が重力魔法を使う魔女だってことね)。


 マイちゃんが不思議そうに聞いてきた。

「いんべんとり?それって魔法なの?ツバサお姉ちゃんって魔女なの?」

 これにアヤカちゃんが答えてくれた。

「いいえ、無限倉庫(インベントリ)は魔法ではなく、超能力みたいなものよ。その証拠に魔法阻害装置(ジャマー)の影響を受けないわ」

「じゃまーって聞いたことあるよ。魔法が使えなくなるんだよね?」

「うん、そうらしいわね。私は魔女じゃないから良く知らないんだけど」


 これを聞いたマイちゃんが僕のほうを見て不思議そうに質問した。

「ツバサお姉ちゃん、なぜ秘密にするの?私だったら友達に自慢しちゃうなぁ」

「うーん、この力を持っている人ってほとんどいないんだよ。悪用もできるから変な目で見られがちだし…」

 殺人や傷害事件に使った凶器なんか、完璧に隠蔽(いんぺい)できちゃうしね。死体すら収納できるから完全犯罪も可能だよ。

 密輸も簡単だし、違法薬物も見つからないように所持できる。まじでやばい能力です。


 ここでレイコちゃんが補足してくれた。

「他人に知られると誘拐されたりする危険性があるの。とても便利な力だから…。だから、ツバサちゃんの能力はここにいる四人だけの秘密にしましょう。マイちゃんはお兄さんやタケル君にも言っちゃダメよ」

「…分かった。ツバサお姉ちゃんが襲われたりしたら嫌だから、誰にもしゃべらないって約束するよ」

「ふふふ、良い子ね。アヤカちゃんもよろしくね」

「もちろん。それにしても料理が()めるのが嫌だから収納しちゃうって、ツバサちゃんらしいというか何というか…」

 いやいや一応、周りの人の視線は気にして無限倉庫(インベントリ)から出し入れしたんだよ。気付かれないようにね。

「容量無限で時間経過無しだから、何か持ち歩きたいものがあったら言ってね。生き物以外だったら何でも入るよ」

 僕の言葉にレイコちゃんが答えた。

「そうね。将来お願いすることがあるかもしれないわ。そのときはよろしくね」

 お安い御用だよ。なにしろ魔力を使わないので無制限に使えるからね。はっきり言ってチートですよ。さすがは転生者特典。


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