049 体育祭当日
体育祭の当日、すでに競技は最後のリレーまで進んでいる。
まずは女子リレー、そして本当に最後の競技になるのが男子リレーだ。
現在の得点状況は、Aチーム187点、Bチーム165点、Cチーム185点、Dチーム178点だ。A>C>D>Bの順だね。
リレーで入る得点は1位が10点、2位が8点、3位が4点、4位は0点。これが男女あるので最大20点が入ることになる。…ってことは、Bチームの優勝の目はすでに無い。残り3チームには優勝の可能性があるってことだね。
我がCチームはトップのAチームと2点差なので、男女どちらも1位なら確実に優勝だ。どきどきだよ。
走る順番はまず1年生4人、次に2年生4人、最後が3年生4人と決まっている。僕は2年生の第1走者になっている。後輩からバトンを受け取る役目だね。
号砲が鳴り響き、最初の走者がスタートした。各チームの走行レーンは決まってないけど、スタートラインは横一線だ。最も内側が有利になるため、その時点の総合得点順で開始位置が決められている。得点の低いほうが有利になるようにね。つまり、Cチームの走者は外側から2番目の位置からスタートする。
序盤はあまり差が付かず、数十秒後にはすぐに次の走者にバトンが渡る。一人あたりの担当が200メートルなので、非常にスピーディーな展開だ。
トラックは一周が400メートルなので、一人半周、計6周で決着がつくわけだね。観衆の応援も最高潮だ。燃える!
僕の順番はすぐにやってきた。現在、D、B、C、Aの順番だけど、ほとんど差は無い。バトンの受け渡しが重要だ。
バトンを受け取ったあとは全力で走ったよ。なんとか2位のBチームの走者を抜いて、先頭のDチームに迫ったところで次の走者にバトンを渡した。次は陸上部で短距離走をやっている子だ。
アンカーである最後の3年生走者にバトンが渡った時点で、先頭は我らがCチーム、2メートル後ろにAチーム、そのすぐ後ろに迫るのがDチーム、かなり遅れてBチーム。
僕もチームメンバーも声を嗄らして応援しているよ。もちろん、レイコちゃんや内気なアヤカちゃんもね。
ゴールテープを最初に切ったのは僅差でCチームのアンカーだった。2位がAチーム、3位Dチーム、4位Bチームという結果だ。
これで総合得点がAチーム195点、Bチーム165点、Cチーム195点、Dチーム182点となったため、優勝争いはAチームとうちのCチームに絞られた。
残る最後の競技、男子リレーで1位になる必要はなく、Aチームよりも上位になるだけで良い。それは向こう(Aチーム)も同じだけどね。まさに一騎打ちだ。
待機位置へと移動する男子たち。あるAチームの3年生男子がBチームの1年生男子に近づいて何か話しかけているのが見えた。クラスと学年がなぜ分かったかというと、体操服の襟の色で学年が、付けているゼッケンでクラスと何番目の走者かが分かるようになっているからね。
今年の3年生は襟が赤色、1年生は緑色だよ。ちなみに僕たち2年生は青色だ。んで、来年の新入生は襟の色が赤色になるってわけだね。
つまり、赤い襟でゼッケンに『A-4』とあったのでAチームの3年生でアンカーだと分かる。僕がその男子を見ていると、隣に座っていた同じクラスの陸上部女子が教えてくれた。どうやら陸上部のエース格の人らしい。あと話しかけられていた1年生の男子も陸上部だそうだ。なるほど、同じ部の先輩から後輩へ激励の言葉でもかけていたのだろう。
スタート位置はAチームとCチームのキャプテンがじゃんけんをして、負けたCチームが最も外側になった。内側からB、D、A、Cの並びだ。
どうしても最初のコーナーで外側は不利になるため、1年生最後の走者にバトンが渡った時点ではB、D、C、Aの順になっている。ただ、ほとんど差はついていない。でもここでCチームの走者がDチームの走者を外側から追い抜いた。さらに先頭を走るBチームの走者までも抜き去ろうとしたそのとき…。
Bチームの走者の右手がCチームの走者の体操服の襟にかかって引き倒した(ように見えた…僕には)。突然転倒したCチームの走者…しかも前のめりではなく、後頭部を地面に打ちつけるような姿勢での転倒だ。
DチームやAチームの走者が転倒したCチームの走者の横を次々に通り過ぎていく。だけど、Cチームの走者は起き上がってこない。これはちょっとヤバいんじゃないか?
レースはまだ続いているけど、応援していた周りの人たちは騒然とした雰囲気になっている。生徒もその父兄もね。
養護教諭や保健委員によって編成された救護班が駆け寄ろうとしたとき、ようやく起き上がってのろのろと走り始めた。ちょっとフラフラしている。なんとか2年生の第1走者にバトンを渡したあと、コースから出たその子は両膝を地面に付けてうなだれていた。
結局、Cチームは3位と一周以上の差を付けられて最下位に終わったよ。最終結果はA、B、D、Cの順だった。
これにより、総合得点はAチーム205点、Bチーム173点、Cチーム195点、Dチーム186点となり、優勝はAチーム、我がCチームは準優勝に終わった。ちょっと残念だったけど、大健闘だよね。
まぁ、あの謎の転倒が無ければどうなっていたかは分からないけど…。




