048 体育祭準備
夏休みが明けると学校行事が目白押しだ。
10月の体育祭、11月の文化祭、2年生だけは12月の修学旅行と休む暇も無い。
来年には大学受験が控えているから、心から楽しめるのは今年までだな。まぁ僕は大学へ進学するつもりはないけど…。
とりあえず、まずは体育祭なんだけど、チーム分けは4つになるらしい。僕は去年この学校にいなかったので、レイコちゃんから色々と話を聞いたんだけどね。
各学年はA組からD組まであるんだけど、1年A組、2年A組、3年A組が一つのチーム『Aチーム』って感じでチームを作るらしいよ。
ちなみに、Aが優れていてDが劣っているなんてことはなく、能力的には満遍なくクラス分けしているとのこと。
僕たちは2年C組なので『Cチーム』ってことになるね。
今日のホームルームでは各人の出場種目を決めるということで、クラス委員が司会をして副委員が書記役をしている。なお、学年トップのレイコちゃんがクラス委員に相応しいと思うんだけど、特待生は不文律として委員にはなれないらしいよ。これはそれぞれのクラスの代表が集まって話し合いをするときなんかに、特待生では発言力が低くなるのが嫌がられているとのこと。
教師からも一目置かれているレイコちゃんなら全然そんなことないと思うんだけどね。
「えーっと、必ず一人が一つ以上の競技に出場するようにしてください。余裕のある人は多くの競技に出場しても構いませんが、一つも出ないってのは無しだから…」
僕は振り返って後ろの席のアヤカちゃんを見たんだけど、ちょっと目が死んでたよ。苦手なんですね、分かります。
「それじゃ、花形である最後の種目、男子2400メートルリレーの選手四人と女子2400メートルリレーの選手四人を決めようか。立候補でも推薦でも良いけど意見のある人は手を上げてください」
え?一人あたり600メートルも走るの?いやいや、各学年から四人ずつで合計十二人のリレーらしい。なんだ、一人200メートルってことか。400メートルのトラックを半周だな。
「とりあえず陸上部のやつらは確定だよな。残りは体育の授業で計測したタイム順で良いんじゃないか?」
一人の男子が提案すると、ほとんどの生徒が賛意を示したよ。
んで、なんと僕が女子の代表の一人として選出されてしまった。
「ちびっこのくせに速いんだな」
男子の誰かがぼそっと呟いたのが聞こえたよ。てか、誰が『ちびっこ』か。
いやまぁ、実際にそうなんだけどね。歩幅が狭いのを回転数で補っているのだ。ちなみに、魔法を使って不正なことはやってないよ。
余談だけど、個人にかけることができる能力向上の魔法『重力軽減』があるから、それを使えば世界記録も夢じゃないよ。
どんな魔法かというと、重力の影響を0.5Gとか0.8Gとかに減らせる魔法だね。0.17Gとかにすれば月面と同じ重力になるのだ。筋力は変わらず、自分の体重だけが減ると考えればその威力も分かると思う。
まぁ、あまりにもGを小さくすると、飛び跳ねちゃって走るどころじゃなくなるけど…。
ちなみに、体重が軽くなるわけじゃなく重力加速度が小さくなるので、高所から飛び降りた際の落下速度も遅くなるよ。体重が軽くなっただけでは落下速度は変わらないからね。
他の競技にも出ようと思ったんだけど、二人三脚ではペアの相手との身長差が、ムカデ競争でも同じく身長差が、玉入れでは球技の苦手さ(あれって球技か?)などの理由で断念した。
なお、アヤカちゃんは綱引きだけに出場するけど、万能選手のレイコちゃんは三つの競技にエントリーしていたよ。さすがだね。
とにかく、リレーの選手になったからには足を引っ張らないようにしないとね。
「ツバサちゃん、足が速くて羨ましい」
アヤカちゃんから声をかけられたけど、僕としては足の速さよりももっと身長が欲しかったよ。
前世では165cmはあったのになぁ。今世では150cm未満ですよ。いや、まだ諦めるのは早い。きっとこれから伸びていくはずだ。




