041 別荘①
時は過ぎて二年生の夏休み。
僕たちはアイちゃんからのお誘いを受けて、アイちゃん家の別荘に来ているよ。招待されたメンバーは言うまでもなく、レイコちゃん、アヤカちゃん、タケル君、それに僕だ。
有名な別荘地でもあり、周りにはたくさんの別荘が建ち並んでいる。その中でもそこそこの大きさの建物で、相田家の財力がよく分かった。ちぇっ、金持ちめ。イケメンで、学校の成績も良く、金持ちの子息って、世の男性からの反感しか買わねぇな。人生勝ち組かよ。
「ツバサお姉ちゃん、ほらこっちこっち。ここからの景色がすごいんだよ」
僕の右手を取ってあちこち引っ張りまわしているのは、可愛い小学生の女の子。そう、アイちゃんの妹のマイちゃんだ。てか、もう一人妹がいて、ミーちゃんと言うんじゃないだろうな?だとしたら、相田家のご両親の名付けセンスを疑うよ。
幸いなことにミーちゃんは存在せず、二人兄妹だそうだ。そう言えば、うちのクラスの治癒の魔女である嵯峨野さんの名前も『マイ』だったような…?さらにどうでも良いけど、うちの家で飼っている猫の名前も『マイ』だったりする。この子、相田マイちゃんには内緒だけど…。
なお、初対面なのにやたらと僕に懐いているのは、僕がマイちゃんとほぼ同年代に見えるから…だろうな。くそっ。
「ツバサ、マイの相手をしてもらってすまんな。あと、俺の両親は仕事が忙しくて来られないから、別に気を遣う必要はないぞ。皆、気楽に過ごしてくれ」
マイちゃんは小学五年生だそうだ。とても明るくて可愛い子で、イケメンのアイちゃんの妹なだけはある。僕としても相手するのは楽しいよ。
でもこれだけは確認しておこう。
「ねぇ、アイちゃん。新学期の最初、僕に声をかけてきたのって、自分の妹と僕の姿を重ね合わせたからって言わないよね?」
「ま、ま、まさか、そんなわけないだろ。純粋にツバサが、か、可愛いから声をかけたに決まってるじゃないか。なぁ、タケル」
動揺しているみたいで、なんだか怪しいな。
タケル君も冷たい口調で言った。
「僕に振らないでくれるかな。まぁ、そのおかげでこうやって友達になれたんだから良いけどさ」
うん、たしかにそうだな。それについては僕も同意するよ。
「兄がいつもご迷惑をかけているようで、ごめんなさい。私の自慢の兄ではあるけど、残念な人でもあるの。ほんと残念…」
マイちゃんがちょっと気落ちした感じだったけど、レイコちゃんがマイちゃんをハグしてから優しく語り掛けていた。
「大丈夫よ、マイちゃん。残念なところも含めて、私たち全員があなたのお兄さんのことを気に入っているから…」
「お前ら、人のことを残念、残念って…。けなし過ぎだろ。というか、レイコさん、告白はもっとロマンチックな雰囲気でお願いしたいんだけど…。うん、よろしくお願いします」
レイコちゃんに向かって右手を差し出して頭を下げているアイちゃん。あれ?さっきのって告白なの?
「ごめんなさい」
…って、いきなり振られてるじゃん。この世の終わりみたいな顔になっているアイちゃん。ちょっと気の毒かも…。てか、やはり残念なやつだ。
ここで場の空気を変えるように、タケル君が仕切り始めた。
「まぁ、コントはここまでにして夕食の準備を始めようか。今夜は庭でBBQの予定だから、女性陣は食材を食べやすいように切ってくれるかな。アイちゃんと僕は機材や炭の準備をするから」
さすがはフォローすることに長けたタケル君だ。『苦労人』の称号は伊達じゃないぜ。あ、僕が勝手に言ってるだけなんだけど…。
レイコちゃんもアヤカちゃんも、さらにはマイちゃんも食材を洗ったり、包丁で切り分けたりと普通に女子力が高かった。僕も前世では自炊してたから、料理は一通りできるよ。
楽しい食事のあとは庭で花火をして遊んだよ。別荘地と言っても建物が密集しているわけじゃなく、隣まではかなり離れているからね。大声で騒いでいても迷惑にはならないはず…って、アイちゃんが言っていた。
ところが、この静かな別荘地にうるさい感じのエンジン音が近づいてきた。ウォンウォンと頻繁に空ぶかしを繰り返しているね。こんなところにまで暴走族がいるんだ。てか、どこにでもいるな、あいつら。いい加減、絶滅しろよ。




