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004 戦闘

 廃工場の出入口はシャッターが閉まっている。その前には見張りの男が二人ほど立っていた。これで誘拐犯は5人組ってことか。

 僕は銀行内で発動した魔法とは、また別の魔法を発動した。さっきのは範囲魔法だったけど、今度のはピンポイントで特定の対象に対して発動する魔法だ。

 突然、男の一人が片目を手で押さえて痛がり始めた。間髪入れず、もう一人の男も同じように苦しみ始めた。

 僕は一人ずつ鳩尾(みぞおち)を拳で殴り、どちらの男も失神させた。ちなみに、銀行内でこの魔法を使わなかった理由は、同時に三人を攻撃できないから…。あと、この魔法は相手に傷害を与えるもので、しかも治癒魔法では元に戻せない性質のものなんだよね。

 つまり、どちらの男も片目は失明です。まぁ、自業自得だよね。


 男たちの叫び声が聞こえたのだろう。工場の中から一人の男が出てきた。

「おい、お前ら、寝てんじゃねぇぞ。誰か来やがったのか?」

 男は倒れている二人の見張りを足で蹴りつけながら問いかけているけど、無駄だよ。気絶してるからね。

 まだ僕にかけられている認識阻害魔法の効果は継続中だ。すぐそばに立っているにもかかわらず、男は僕に気付かない。

 当然、この男も見張りたちと同じ目に会わせてやった。


 工場のシャッターの横に小さなドアがあって、そこから三人目の男は出てきたわけなんだけど、現在そのドアは開きっぱなしだ。

 僕はするっとそのドアから工場の中へと侵入した。

 中の状況はさっき窓から見えたのとあまり変わっていない。人質女性の前と後ろに一人ずつ男が立っている。残り二人か…。


 …っと、工場の奥にある事務所みたいな部屋からもう一人出てきたよ。あっぶねぇ、気付かなかった。

 しかも女性、ぼさぼさの髪で小太りの中年女性だった。

「おい、何が起こってる?外がどうなってるか確認してこい」

 その女性が男たちに命じている。

「へい、ボス。見てきやす」

 一人の男が工場の外に出ようと、僕のほうへとやってくる。僕は一緒に外へ出て、さっきと同じようにこの男も倒した。


 ボスと呼ばれた女性が誰にともなくしゃべり始めた。

「おい、透明化か認識阻害してるやつがいるんだろう?姿を現せ。すぐに出てこないと、この女を殺す」

 ボスは(ふところ)からナイフを取り出し、人質女性の首元に当てた。出てこいと言われて、あっさり出ていくほど馬鹿じゃないよ。それに人質は誘拐犯にとっても生命線だからね。そんなに簡単に殺せるはずはない。

 僕はナイフに向けて魔法を発動した。アルミ箔をくしゃくしゃにしたときのような感じで、ナイフの刃が圧縮されて小さくなった。

「こ、こいつは!こんな魔法、聞いたことない…」

 ナイフの残骸を見ながら呆然とつぶやくボスをそのままにして、先に最後に残った男を片付けよう。そして、五人目の犠牲者が誕生した。片方の目玉が重力で圧縮されて小さな粒上になったはずだ。目の上を手で押さえているから見えないけど…。


 さて、残るはボスと呼ばれた女性だけだね。問題は女性であるということだ。つまり、魔法が使えるかもしれないってことだな。この世界、男性は一切魔法が使えないんだけど、女性の3割くらいは何らかの魔法技能を持っているからね。

 このボスが何かの魔法を使ってくる可能性は想定しておかないと…。それが認識阻害などの精神系魔法だと厄介なんだよな。


 …っと、ボスが火球を生成して闇雲に撃ち出している。なるほど火属性の魔女か。見えない相手にパニックになっているのだろう。ちょっとやばいな。

 僕は人質女性のすぐそばまで近づいて、手首と足首、それに胴体のロープをハサミで切ってあげた。どうでも良いけど、このハサミは銀行から借りたものだよ。常にハサミを持ち歩く危ないやつではありません。

 僕はボスに語り掛けた。

「ちょっと落ち着きなよ。火に巻かれて死ぬつもりなの?」

 声を出したことで認識阻害の効果が失われ、ボスや人質女性の前に初めて姿を現した僕は、現在ボスと人質女性の間に立っている。火球から人質女性を守らないといけないからね。

「そこかぁ!」

 不安な表情から喜びの表情に変わったボスは、僕に向かって火球を射出した。避けるのは簡単だけど、後ろの人質女性に当たっちゃうから動けない。

 でも、その火球は僕の目の前で上方へと直角に向きを変え、天井にぶち当たった。うぉ!天井が落ちてきちゃうよ。失敗した。

 学習した僕は、二発目の火球については向きを変えずに、そのまま圧縮して消滅させた。

「何で当たらねぇんだ?お前、何しやがった!」

 ボスがうるさく(わめ)いているけど、そろそろ終わりにするかな。


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