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027 加藤ハヤト⑤

 ツバサちゃんが走行中の車内から誰かに電話をかけている。そう言えば、ツバサちゃんの身元が分からないんだが、プロの探偵か何かなのか?

 答えてくれるかどうかは分からないが、一応質問してみた。

「ツバサちゃんって探偵事務所の人なのかい?今の電話相手って上司か先輩かな?」

「僕は普通の会社員だよ。ハツミさんを助けに行ったのは妹さんからの依頼だけど、あくまでも無償奉仕(ボランティア)だから」

 何だって?まじかよ。プロじゃなく素人に負けたのか、俺は…。

 自覚しているのかどうかは分からないけど、忠告だけはしておくか。

「いやいや、無償奉仕(ボランティア)で命を懸けるのはどうかと思うぞ。天に宝を積むのは良いことだけど、正当な報酬は受け取るべきだと思うがな」

 善行を積む行為は褒められるべきだが、命懸けになる荒事(あらごと)に無償で(いど)むのはどうかと思うよ。怪我したときの保障も無いしね。


 そのあとツバサちゃんからお誘いを受けた。

「ねぇ、加藤さん。今日の午後って時間ある?もう一度会えないかな?」

 おそらく、俺の口から安西さんの妹さんに事情を説明させるつもりだろう。でも、一応ボケておくか…。

「お、デートのお誘いか?うーん、俺ってロリコンじゃないんだけどな」

「デートじゃない!てか、誰がロリか!殺すよ」

 予想通りの反応だ。微笑ましい。

 それにしても、『殺す』って口癖は矯正したほうが良いな。ふふ、殺すつもりなんて全く無いくせにな。


「まぁまぁ軽い冗談だから。そうだな、何気(なにげ)に忙しいんだが、なんとか時間を作るとしよう。君との縁は繋いでおきたいしな」

 これは俺の本音だ。この子の正義感は好ましいものだし、それを実現するだけの実力もある。でも、なんか危なっかしいんだよな。娘がいたらこういう感じなのだろうか。

 俺は続けて言った。

「明日の午後も車で迎えに来てやるよ。なんか娘の送迎をする父親みたいだな。あ、ちゃんと戸締りして寝ろよ」

「ありがとう。てか、誰が娘か。加藤さんって娘さんがいるの?」

 いねぇよ。てか、結婚したこともねぇよ。前世でも今世でも…。

 一応、正直に答えておくか。

「いや、バツ無しの独身だぞ。というか、彼女すらいねぇよ。こんな仕事じゃなけりゃ、小さな子供の一人や二人はいてもおかしくないんだがなぁ」

 実際、31歳って年齢は、結婚していてもおかしくないよな。裏仕事さえ無ければ結婚もできると思うんだが…。って、相手がいねぇよ(自虐ネタ)。

 ツバサちゃんにも気の毒そうにこう言われた。

「あ、なんかゴメン。僕で良ければ、娘の役をやってあげても良いよ」

 うーん、中学生に見えても、この子は21歳。娘と言うよりは、歳の離れた妹って感覚だな。

「余計なお世話だ。くだらないこと言ってないで、早く寝ろ。じゃあ、また明日な」

「うん、おやすみ~」

 まぁ、良い子だよな。それだけは確かだ。


 このあと近くのコンビニの駐車場に車を停めてから車内で仮眠を取り、翌早朝に部下から電話とメールで報告を受けた。

 安西ハツミ嬢の妹である安西モエ嬢の自宅マンションに人の出入りがあったらしい。しかも、四人も…。その中に中学生くらいの女の子、津慈ツバサ嬢がいたとのこと。って、これってあのツバサちゃんだろうな。

 ん?ただ、入室時間を考えると、あの時間に山奥の別荘にはたどり着けないはず…。完璧なアリバイだ。やはり別人か?

 しかし、俺の勘は同一人物だと(ささや)いている。別荘に現れた手段は不明だが…。


 あと、他の三人の身元と魔法技能も判明した。さすがは俺の部下、仕事が早い。

 どうやらツバサちゃんを含めたこの四人で、安西モエ嬢から姉ハツミの捜索依頼を受けたのだろう

 別れ際にツバサちゃんと話したのだが、今日の昼からの行先は安西モエ嬢のマンションだ。ということは、俺が拉致・監禁の実行犯として彼女たちに説明することになるのだろう。あー、憂鬱だ。


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