132 第3章エピローグ
加藤さんの運転する車で僕のアパートまで送ってもらう途中、二人っきりで色々と話し合った。
「なぁ、ツバサちゃん。レイカ様が転生者ではないかという推測は正しいよな?」
「うん、あの言い方だったらまず間違いないと思うよ。乙女ゲームの世界だと思っていたから、転生時に好感度を上げるための魔法を貰ったんだろうね」
「…あと、レイコ様の最後の発言が気になるんだが、何か心当たりは無いか?」
「そうだねぇ。これからもレイコちゃんの味方でいてもらうためにも、加藤さんにだけは教えておいたほうが良いかもしれないね。でも僕から聞いたことは秘密にしておいてね」
運転中なので、助手席からは横顔しか見えないんだけど、加藤さんの表情がキリっと真面目なものになった。
「分かった。教えてくれ」
「レイコちゃんは『傾国の魔女』なんだよ。九条レイカさんのような低いレベルじゃなくて、それこそ誰でも操れるような強力なやつ」
「魅了魔法の使い手かっ!」
驚きつつも、これでさっきの七宝氏の態度が腑に落ちたみたいだね。
どうせ加藤さんには魔法が効かないんだから、このことを知ったとしてもレイコちゃんを変な目で見ることはないはずだ。
「うーむ、驚いた。でもレイコ様が魅了魔法を使ったことなんて今まであったか?俺の知る限り、そういう操られたような男を見た記憶は無いぞ」
「レイコちゃんが私利私欲のために魔法を濫用するはずがないじゃん。この世界にとって、ううん、この世界に生きる全ての人にとって、レイコちゃんが『傾国の魔女』であった幸運に感謝するべきだね」
「なるほどなぁ。確かにそれは言えるかもしれん。それにたとえレイコ様が道を踏み外そうとしても、ツバサちゃんが止めてくれるだろうしな」
「それは加藤さんの役目でもあるよ」
「くくっ、そうだな。お互いに頑張ろうや。あと今後、外国の工作員との戦いが始まるかもしれんが、ツバサちゃんの魔法にも期待してるからな」
はぁぁぁ?僕を巻き込まないで欲しい。レイコちゃんの力にはなるけど、九条家の戦力に組み込まれるのは勘弁だよ。
「BEATへの依頼というなら正式に申し込んでね。九条家からの依頼だったら超高額報酬で受けるよ」
「金取るのかよ。ボランティアじゃなかったのか?」
「外国の工作員との戦いなんて命懸けじゃん。そんなのボランティアで受けるわけないよね」
「まぁ、そりゃそうか…」
ちょうど車が赤信号で交差点に停まったタイミングだったから、加藤さんと僕は顔を見合わせて笑いあった。
「それにBEATに依頼するのなら、尾錠さんにも会えるしな。なぁなぁ、尾錠さんをデートに誘ったら受けてくれるかな?ツバサちゃんはどう思う?」
「うーん、僕の見た限りじゃ恋人はいないし、ワンチャン可能性はあると思うよ。読心魔法が効かない加藤さんって、美女先輩にお似合いなのかもしれないしね」
加藤さんの目が輝いてるよ。単純なやつ…(笑)
そして、このあとの話…。
外国勢力との戦いだけど、九条家の勝利に終わったよ。僕も少しは手伝ったけど…。これで当分の間は外国からちょっかいをかけられることはないだろう(ってレイコちゃんが言っていた)。
九条レイカさんは大学を卒業したあと、九条家魔女部隊に入隊し、真面目に働いているみたい。『四番隊』の黒木さんという人とちょっと良い雰囲気になっているらしい。
七宝コウジン氏は九条家隠密部隊の『一番隊』に所属して活躍したあと、今後は新設される『六番隊』の隊長に内定しているとのこと。
加藤さんは相変わらず『三番隊』の隊長職を続けていて、なんと美女先輩と付き合い始めたってさ。まじかよ…。
三条さん(九条アスミさん)はうちの会社で事務仕事を頑張っているし、僕や美女先輩とも仲良しだ。もちろんレイコちゃんとも仲良しだよ。
そして最後にレイコちゃん。九条グループとは関係のない東京のある企業に就職してるんだけど、九条財閥とは距離を取ったままらしいよ。ただ、次々代の九条家総帥候補の筆頭って噂だけどね(加藤さん情報)。
あと、僕なんだけど、誰か素敵な男性とラブロマンスが始まる兆候も無く、日々仕事に追われている。趣味の人助け(BEATの活動)も順調だし、充実した日々ではあるね。
でもなぜだろう…。誰からも愛の告白をされないというのは…。
僕って、自分では美少女だと思ってるんだけどなぁ。はぁ~(溜め息)
外国勢力との戦いを第4章として著すこともできますが、それは省略します。
んで、とりあえずはこれで完結です。
誰も不幸にならないというハッピーエンドで終わることができて、ほっとしています。ざまぁ展開になる話は書くのも読むのも苦手なのです。
なお、需要があれば第4章を書いても良いんですが、おそらく無いでしょうね…(笑)
『完結ブースト』ってことで多少はPtがいただけるかもしれませんが、おそらく大して上がらないはず…。
あと、どうでも良いのですが、ツバサちゃんに彼氏ができない理由は簡単です。だってロリだから(笑)




