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131 暗殺未遂事件の後日談③

 レイコちゃんが加藤さんに質問した。

「加藤さん、あなたのご意見は?」

「はい、レイコ様。九条家への忠誠心は必要無いとしても、レイコ様個人への忠誠心は必須です。この男にはそれがありません。よって私は反対致します」

 うん、加藤さんの意見は正論だ。僕もそれが不安なところなんだよな。


「アスミさんはどうかしら?」

「そうね。戦力としては申し分ないのだけれど、二重スパイではないという確証が欲しいところよね」

 三条さんの意見ももっともだ。僕もそう思う。


「ツバサちゃんはどう?」

「うーん、その前にレイカさんの処分はどうするの?なんだったら、レイカさんの魅了魔法(チャーム)を使って七宝氏を縛り付けたらどう?」

 意気消沈して顔を(うつむ)かせていた九条レイカさんが、自分の名前が出たことでビクッとしながら顔を上げた。

「レイカさんは殺人未遂罪には問われることになるし、多くの人の人生を狂わせたという罪もあります。だけど、人は殺していないのよね。一人もね」

「え?」

 レイカさんが(ほう)けた顔でレイコちゃんを見たんだけど、次のセリフを聞いて泣き始めたよ。

「レイカさんがおじい様を通じて『三番隊』に出した多数の殺害指令は、この加藤さんが全て止めていたの。正確に言えば、殺害対象者は死んだことにして(ひそ)かに(かくま)っていたということね」

「え?え?私、殺人罪にはならないの?そんな、だったら九条家の権力を握ろうとしたことって、別に必要なかったってこと?」

「そうね。情状酌量の余地ありと見て、別荘での禁固三年というところかしら。いえ、ツバサちゃんの言う通り、魅了魔法(チャーム)を九条家のために使ってくれるのなら、このまま魔女部隊(ウィッチーズ)への編入を考えても良いかもしれない。もちろん、大学卒業後になるんだけど…」


 これを聞いたレイカさんが泣きながらも途切れ途切れに発言した。

「ぐすっ、あり、ありがと、ござ、ます。わ、私、この世界が、おと、乙女ゲーム、だと、思ってて…。それ、それで…。うわぁーん」

 ついに号泣(ごうきゅう)を始めたレイカさん。

 てか、今聞き捨てならない単語が…。『この世界』とか『乙女ゲーム』とか…。

 僕は加藤さんと目を合わせて、無言で(うなず)き合った。多分、レイカさんも転生者だ。


「それで(わたくし)の処遇は決まりましたでしょうか?」

 空気を読まない七宝氏の発言がちょっと感動的になっていた空気を吹き飛ばした。

魅了魔法(チャーム)をかけられることに同意していただけるのなら、あなたの申し出を受けましょう。九条家への所属を高月レイコの名において認めます」

「ええ、どうぞ魅了でも何でも(おこな)ってください。この場で実行致しますか?」

「そうね。この部屋にはレイカさんの魅了魔法(チャーム)を阻害しない新型の魔法阻害装置(ジャマー)が稼働しているから、この機会にやってもらおうかしら」

 おそらく七宝氏はレイカさんの魅了魔法(チャーム)をなめている。自分には魅了はかからないってね。

 レイコちゃんが僕にアイコンタクトを取ってきた。了解です。

 僕は1Gで重力範囲(グラビティエリア)を発動して、レイコちゃんの魔法が発動できるようにした。なお、1Gの重力範囲(グラビティエリア)というのは、誰にも気付かれないという隠密性を持っているのだ。


 とりあえず泣き()んだレイカさんが、七宝氏に向かって魅了魔法(チャーム)をかけたのだろう。ちょっと首を(かし)げている。

「私への好感度を上げるだけの魔法なんですけど、あまり上がってないです。加藤さんもそうなんだけど、()きにくい人がいるんですよ」

 余裕の表情だった七宝氏がいきなり苦しみだした。

「うぐっ、これは…。ど、どういうことだ?」

 ふふ、レイコちゃんの魅了魔法(チャーム)が発動したんだろうな。ちなみに、レイコちゃんが魔女であることを知っているのは僕だけだ。

 レイコちゃんが発言した。

「七宝さん、九条レイカさんへの好感度を高めなさい。あと、九条家への帰属を決めた先ほどのあなたの言葉は本心なのかしら?」

 表情を消した七宝氏が淡々と答えた。

「はい。本心です」


 レイカさんが驚いて声を上げた。

「こいつの好感度が上限いっぱいに振り切れました。こんなこと初めてです。でも良かった。魔法が成功して」

 成功したのはレイコちゃんの魔法だけどね。でもレイカさんが隠れ(みの)になってくれたおかげで、レイコちゃんが魔女であることを秘密にできたんだから結果的には良かったよ。

 それに七宝氏という強力な戦力がレイコちゃんの配下になった(見かけ上は九条レイカさんの配下だけど…)のは、まじで喜ばしいことだと思う。


 次回、大団円…。


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