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127 登山③

 太陽の位置から方角はある程度分かるんだけど、太陽すらも幻って可能性もあるんだよな。

 こういう幻術?って言うのかな、幻を見せるような敵とは初めて戦うよ。どうしても疑心暗鬼になってしまいがちだけど、それは仕方ないよね。

 てか、隣にいるレイコちゃんや三条さんすら幻という可能性も…。

 自分の太腿(ふともも)をペンで刺して、痛みで術を解除するなんて対処法をよく漫画なんかで見るけど、それは(いや)過ぎるしなぁ。


「全員、目をつぶって!あとツバサちゃんはプランB」

 突然レイコちゃんから指示が出された。やはりこういう非常時の指揮と言えば、レイコちゃんかタケル君だな。こんなときなのに、なんか安心する。

 僕はあらかじめ作戦を()っていたうちの一つ、プランBに基づく行動をとった。

 目を完全に閉じるのではなく、薄目で周囲を確認していると(それでも離れたところから術をかけている七宝氏には目をつぶっているように見えるはず)、(こぶし)大の石が飛んできた。

 ただ、その石は僕たちのところまでは到達せず、野球のフォークボールのように急角度で落下した。

 次々に石が飛んでくるんだけど、一つとして当たるものは無かったよ。


「どうやらあちらの方角が安全なようね。安全と言っても七宝さんはいるみたいだけど…。少なくとも崖では無いと思うわ」

 レイコちゃんの言葉に僕も同意した。

 石が飛んできた方角には七宝氏(もしくは、その仲間の別の人物かは分からないけど)がいるはずだ。つまり、石を投げてきた人間がいるってことは崖側じゃない…ってことになるよね。

 なお、飛んできた石に実体があることは確認済みです。拾い上げて確認したからね。うん、石は幻影じゃない。


 あと『プランB』は、僕を中心に10Gの重力範囲(グラビティエリア)を発動することだ。

 え?レイコちゃんや三条さんは大丈夫なのかって?もちろん、重力増大の適用除外にしているよ。半径2メートルという魔法適用範囲を広げることはできなかったけど、特定の人物や物に魔法の影響が及ばないようにする訓練には成功していたのだ。どやぁ。

 僕たちが目を閉じれば、七宝氏が何らかの遠隔攻撃(ただの投石だったけど)を仕掛けてくると考えたわけだね。そして、その攻撃の起点を知ることができれば安全な方角も分かるってこと。さすがはレイコちゃんだ。

 ただ、安全な方角は分かったけど、そっちには七宝氏が待ち構えているんだよね。ここは動かないほうが得策かな?


「なるほど。お三方(さんかた)の誰かが魔女ってことですか。そこまではさすがの(わたくし)も把握しておりませんでした」

 姿は見えないけど七宝氏の声が聞こえてきた。投石も止まっている。

「しかし、これはどうですかな?」

 この声のあと、再度投石が始まった。でもさっきと全く同じだよ。飛んできた石が僕たちに当たることはない。

「おじさん、何かしたの?何度やっても同じだよ」

「何っ?そんなまさか…。魔法は使えなくなったはず…」

 初めて七宝氏の(あせ)った声が聞こえてきた。今まで余裕綽々(しゃくしゃく)だったのにね。

 てか、『魔法が使えなくなった』というセリフを言ったってことは、携帯型の魔法阻害装置(ジャマー)でも起動したのかな?くくっ、僕の重力魔法には魔法阻害装置(ジャマー)()かないよ。


「しかし、範囲魔法を長時間維持し続けることなんてできるわけがない。このまま持久戦になれば勝つのはこちらだ」

 ほほう、七宝氏の幻影能力は長時間維持できるってことか…。でも僕の重力範囲(グラビティエリア)だって12時間は余裕で維持できるからね。負けないよ。

「ここでお昼休憩にしない?レイコちゃんと三条さんはお弁当持参だよね。僕も食べ物なら山ほど持ってきてるから、一緒に食べようよ」

「ツバサちゃん、あなたって…」

 レイコちゃんが(あき)れたような表情を見せたけど、僕はさっさとレジャーシートを広げて全員が座れるように準備を始めた。ちなみにレジャーシートも食べ物も、僕の無限倉庫(インベントリ)に入れてきたのだ。

 あ、三条さんには以前、僕の無限倉庫(インベントリ)の秘密を打ち明けていたんだけど、実際に使っているのを見たのは初めてだからなのか、ちょっと驚いたような顔をしていたよ。

 あと、当然だけど無限倉庫(インベントリ)から出した物や、レイコちゃんと三条さんの持ち物(リュックとか)も重力範囲(グラビティエリア)の適用除外にしているよ。でないと、重さが10倍になっちゃうからね。


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