123 四年ぶりの再会①
4月中旬の日曜日、ついにレイコちゃんと再会できた。てか僕たちって、お互いに疎遠になっていても心が通じ合っているというか、特に連絡を取り合う仲じゃないんだよね。
だから電話番号やメールアドレスは知っていても、共に全く連絡していなかったわけ…。それでも大親友だと心の底から言えるけどね。
まぁ、傍から見たら変な関係性かもしれない。
「レイコちゃん、久しぶり!てか、四年ぶりだね」
「ツバサちゃん、ああ本当に全く変わってないわね。ツバサちゃんの時間だけ止まっているんじゃないの?」
「失礼な!ちゃんと22歳のレディーだよ。レイコちゃんのほうは、いっそう美人に磨きがかかってるね」
そうなのだ。四年ぶりに会ったレイコちゃんってば、顔面偏差値が80くらいはあるんじゃないかって感じだよ。つまり1000人の中の1位か2位ってこと。薄く施した化粧の効果もあるんだろうけど。
美女先輩や三条さんの美貌をも超えていて、まさに『傾国の美女』って感じだ。
うーん、彼氏とかいないのかな?いや、ここまでの美女だと普通の男性は気後れするレベルだから、多分恋人なんてできてないだろうな。でも一応ダイレクトに聞いてみた。
「レイコちゃんって大学で彼氏とかできた?今、お付き合いしてる人っているの?」
「いいえ、ツバサちゃんも知っての通り、私って友達を作るのが下手なのよ。友達すら無理なのに、恋人なんてハードルが高過ぎるわ」
少し悲しそうな表情のレイコちゃんを見て、(悪いけど)ちょっと安心した。性格は全く変わっていないみたいだね。
話題を変えるように、レイコちゃんは京都にいた友人たちに関する最新の情報を教えてくれた。
「アイちゃんはご実家の会社を継ぐために地元に帰ったし、アヤカちゃんはアイちゃんに付いていったそうよ。なにしろラブラブカップルだからね。あ、マイさんやタケル君の現状って、ツバサちゃんは知ってる?」
「マイさんは6年制の薬学部だからまだ大学で、タケル君も大学院へ進むらしいからやはり大学にいるよ。二人とも首都圏住みだから簡単に会えるよ」
「そう、だったら四人で会いたいわね。同窓会ってことで…」
「良いね。でもその前に大事な話があるんだ…。実は…」
ここから僕の長い長い話が始まった。銀行強盗や誘拐犯の話、安西さんの一件で加藤さんと知り合ったこと、BEATの結成とその活動、三条さん(九条アスミさん)と友達になったこと等々。
もちろん僕の魔法についても打ち明けたよ。でないと説明できないことが多いからね。
内緒話をすることは事前に分かっていたから、僕たち二人がいるのはある飲食店の個室だ。半日ほど貸し切りにしたからお金はかかっているけど、別に大したことじゃない。BEATの活動資金は潤沢なのだ。
「ツバサちゃんにはいつも驚かされるけど、今日は一生分の驚きって感じね。それにしても世間は狭いというか、何というか…」
うん、僕もそれには同意だよ。世間は案外狭いよね。
「今度はレイコちゃんから打ち明けて欲しいんだけど、レイコちゃんって九条家の直系なんだよね」
「アスミさんから聞いたのね…。ええ、そうよ。高月ロクロウの結婚相手が旧姓『九条トモコ』で、私の母親にして御前様の娘なのよ」
「トモコおばちゃんのことは僕もよく覚えているよ。師匠もよくあんな綺麗な人と結婚できたよね」
師匠って空手の師範だけあって、割と厳つい感じの人だったからね。九条家のお嬢様となんて、いったいどこで知り合ったのやら…。
このあとレイコちゃんの回想が続いた。
僕が何より驚いたのは、レイコちゃんが『魅了の魔女』だったことだ。しかも異性を人形のように操ることができるというめっちゃ強力なものだ。いや、これこそが本物の魅了魔法だよね。
九条レイカさんの魅了なんて足元にも及ばないよ。いやレイカさんのは『魅了魔法』じゃなくて、『好感度アップ魔法』って言ったほうが適切かもしれない。
でも僕が何より安心したのは、(レイカさんではなく)レイコちゃんこそが『傾国の魔女』だったってことだ。だってレイコちゃんは正義の人だからね。絶対にこの能力を悪用しないって、僕は確信しているからさ。
加藤さんを『三番隊』の隊長に推した話をレイコちゃんから聞いたあと、僕は言った。
「うーん、加藤さんってレイコちゃんに絶対の忠誠を誓っている感じだったんだけど、そういうことだったのかぁ」
「ツバサちゃん、加藤さんと私の件で話をしたの?」
「うん、なぜかっていうとね…」
ここから九条レイカさんの企てている暗殺計画についての話を始めた僕…。
話が進んでいくたびに強張っていくレイコちゃんの顔…。そりゃそうだよね。自分自身の暗殺計画なんだから。




