120 新たな依頼③
「九条家が持っている戦闘用の部隊ってどういう構成なの?あと、それらの部隊に対して九条レイカさんは命令できるの?」
僕の質問に三条さんが答えてくれた。
「私もそんなに詳しくはないんだけど、一つの部隊が20人前後の男性隊員で構成されていて、それが五つあるらしいわ。あと魔女の部隊が三つ、こちらは一つの班が5~6名らしいけど…。あと、九条レイカが命令できるのはあの子の護衛に付いている者へだけだと思う」
体術専門の男性が約100人と魔女が約15人ってことか。なるほど、これなら私設軍隊と言っても過言ではないね。
問題は魅了魔法だな。100人の男性戦闘員が全員魅了されてるのなら、僕らに勝ち目なんか無いよ。
「魅了と言っても好意を持つくらいで、行動を操れるほどじゃないみたいよ。それに高月レイコさんを害するのに九条家の部隊は使えないと思う。そもそもレイコさんを護衛している部隊もあるんだし…」
魅了魔法ってそんなにショボいんだ…。僕が思っていたのと違う。てっきり魅了魔法をかけられた人間は操り人形みたいになるんだと思っていたよ。
「うーん、とにかく四六時中守り続けることはできないし、それは本来の護衛の仕事だよね。あくまでも僕たちは保険という形で、もしものときに備える感じになるのかな」
「そうね。そのためにも三条さんにはスパイとして情報収集をしてもらわなければならないわね。それもまた危険な任務だけど」
美女先輩が心配そうに言ったけど、僕もそう思うよ。スパイって分かったら酷い目に会わされるかもしれない…。
あ、そうだ。加藤さんに貸しがあったな。この機会に返してもらおう。
「私のことは良いの。レイコさんの力になれるのなら、多少の危険なんて覚悟の上よ」
いやいや、三条さんの身も大切だよ。まぁ、加藤さんに影の護衛を依頼しておけば、まず大丈夫だとは思うけど…。
あ、ついでにレイコちゃんを守る任務にも加藤さんを巻き込んじゃえ。
結局、現時点での結論としては以下の通りとなった。
・敵(九条レイカさん)は九条家の部隊を使わず、外部の協力者の手を借りてレイコちゃんを暗殺しようとするはず…。
・その時期は来年の4月以降(レイコちゃんが大学を卒業して東京に戻ってきてから)の予定。
・三条さんが内偵することで敵の動向を探る(暗殺の日時や場所など)。
・加藤さんに三条さんの護衛を依頼する(できればレイコちゃんの護衛もお願いしたい)。
…って感じかな。
最後に三条さんが言った。
「あ、兄にも仲間になるようにお誘いがあったみたいなの。もちろん断ったみたいなんだけど…」
「神、いや九条タカシ様はレイコちゃんを恨んでないの?」
「ええ、理由は分からないけど『高月レイコ』という名前を出しただけで異常に怯えるのよ。いったい何があったんだか…」
まぁ、神が僕たちと敵対しないってのは良かったよ。何気に神のことを気に入っている僕だった。
ツバサちゃんが『気に入っている』ってのは恋愛感情ではなく、単に人として好ましいという感情です。
てか、あまり『神』呼ばわりしてると、プロジェクトで隕石を落とされるかもしれない(笑)




