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012 相談

 その後、僕たちの間では『美女先輩の年齢に関する話題はNG』ってことが暗黙のうちに決まったようだ。

 食事自体は(なご)やかに楽しく終わったよ。全員のメアドや電話番号も交換したんだけど、僕のスマホはメグミお姉さんに貸しっぱなしなので、PCのほうのメアドや自宅の固定電話の電話番号も一緒に教えておいた。信頼できる(であろう)チームメンバーだから問題ないしね。

 あと、困りごと相談サイトみたいなWebページを作ろうという話になって、僕が自分の勉強のためにコンテンツ()マネジメント()システム()…ブラウザからログインして、Webページを随時書き換えられるシステム…を作ることになった。あ、勉強ってのは、プログラミングの勉強のことね。

 専門学校でも似たようなものを少しだけ作ったことがあるんだけど、その時はチーム製作でほんの一部分だけ担当しただけだからね。美女先輩も指導してくれるって言ってくれたから、一人で頑張って作ってみようと思う。

 明日の日曜日に要件定義と基本設計くらいは終わらせちゃいたいね。いやいや、明日はメグミお姉さんが持っている僕のスマホに電話して、会いに行かないといけないや。さすがにずっとスマホが無いのはキツイよ。


 てなわけで翌日の日曜日。

 あまり朝早くは迷惑だろうから、午前9時くらいに自宅の固定電話からかけてみた。てか、自分のスマホに電話するのって、スマホを無くしたとき以来だよ。

「もしもし、津慈です。メグミお姉さんですか?」

『あ、ツバサちゃん?スマホを借りっぱなしでごめんなさいね。スマホの返却とお礼をしたいのだけど、今日会えないかしら?』

「良いですよ。あ、でもお礼なんて気にしないでくださいね。僕が勝手にやったことなんで…」

『そんなわけにはいかないわ。私を含めてうちの家族全員があなたにどれだけ感謝しているか、言葉では言い尽くせないくらいなんだから』

「いや、本当に気にしないで欲しいです。とにかく、お会いしましょう。時間と場所は…」

 こうして僕はメグミお姉さんと会う約束を取り付けた。お昼を一緒に食べて、昼食代を(おご)ってもらうくらいで良いよね。


 駅前のファミレスで待ち合わせたメグミお姉さんと僕は、問題なく合流できたことにホッとした。なにしろ僕は携帯電話無し状態だからね。

 店員さんに案内された席についてからのメグミお姉さんの第一声が次の言葉だった。

「ツバサちゃん、一昨日(おととい)は気が動転してて(ろく)にお礼も言えなかったんだけど、あらためて言わせてください。本当にありがとう。心から感謝しています」

 座席に座ったまま深々と頭を下げられたけど困る…目立ってしまうよ。

「メグミお姉さん、頭を上げてください。それよりも体調や精神状態は大丈夫?PTSDとか、なってない?」

「ええ、捕まっていたときはとても怖かったけど、殴られたり犯されたりはしなかったからね」

 ちょっと声を(ひそ)めるように発言しているけど、日曜日でお客さんが多いから、話を聞かれそうで冷や冷やするよ。

「本当に良かったです。僕が銀行にいなかったら、おじさんたちが銀行強盗をしなかったら、そう考えると、純粋にメグミお姉さんの運が強かったんじゃないかと思うよ」

「ふふ、そうかもね。そうそう、私のスマホは誘拐犯に壊されちゃったから、昨日携帯ショップで機種変更してきたのよ。これ私のメアドと電話番号ね。それとツバサちゃんのスマホ、お返しするわ。一応充電もしておいたけど、すぐにロックをかけたほうが良いわよ」

 僕のスマホをメグミお姉さんに貸すとき、ロックを無効にしておいたからね。僕は受け取った自分のスマホにロックを設定し直して、貰ったメモを見ながらアドレス帳にメグミお姉さんの情報を登録した。


「もし何かあったらすぐに連絡してくださいね。ご縁ができた人が不幸になるのは(いや)なので…」

 この僕の言葉にメグミお姉さんが涙ぐんでいたよ。

「うん、ありがとう。私の婚約者と違い過ぎて泣けてくるよ。昨日の夜、新しいスマホに婚約者から電話がかかってきたんだけど、婚約を解消したいんだって。家族が銀行強盗するような女とは結婚できないって言われたわ」

「いや、悪いのは誘拐犯だってテレビでも言ってたじゃん。失礼だけど、その人って馬鹿なの?」

 あ、つい思ったことを声に出しちゃった。

「ふふ、大丈夫よ。馬鹿と結婚しなくて済んだ幸運を噛みしめてるところよ。一方的な婚約破棄だから、違約金も貰えるだろうし…」

 もともと精神的に強い人だったのか、はたまた今回の事件で強くなったのかは分からないけど、あまり気にしてないみたいで良かった。内心では悲しんでいるのかもしれないけど…。


「そう言えば、携帯ショップの店員の女の子と雑談していたんだけど、その子のお姉さんが失踪して行方不明になってるらしいの。警察にも届け出ているけど、何もしてくれないんだって。もし良かったら、ツバサちゃんの力を貸してもらえないかな?」

 赤の他人の事情だろうに、真剣な顔で僕に頼み込んでいるメグミお姉さんはやはり良い人だな。てか、さっそく『BEAT(ビート)』の出番かな?


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