119 新たな依頼②
「うん、決めたよ。人が殺されるってのに、やはり見て見ぬふりはできないよ。僕は自分の正義を貫きたい」
この決断が無ければ護衛対象者の名前も明かされなかったし、そうなったら僕は死ぬほど後悔することになったはずだ。本当に良かった。
美女先輩が三条さんに尋ねた。
「護衛する女性のお名前は?」
「はい、私の従妹である『高月レイコ』という女性です。私なんか足元にも及ばないような優しくて聡明な女性なんですよ。あ、津慈ちゃんと同い年じゃないかしら?」
「ええええええええええ?」
驚いた。めっちゃ驚いた。レイコちゃんと同姓同名だよ。え?まさかレイコちゃんなの?
「つつちゃん、どうしたの?」
「三条さん、その人って前髪パッツンの日本人形みたいな美人さんだよね?」
「ええ、そうよ。そんな美人にもかかわらず、何とかって流派の空手の有段者らしいわ」
ああ、やはりレイコちゃんだ。福岡の大学に通っているという点も符合する。
まさかレイコちゃんが九条家の直系だったなんて…。
「あのー、津慈ちゃん?どうしたの?」
「レイコちゃんは僕の幼馴染で、大・大・大親友なんだよ」
「えぇぇ!」
これには三条さんも驚いたようだ。世間は狭いな。
「だったら尚更助けないといけないわね」
美女先輩の言葉に深く頷いた僕だった。
「あれ?そう言えば5年前のことなんだけど、湖で水の魔女に襲われたり、文化祭で毒殺されそうになったり、修学旅行で大鬼に殺されそうになったりしたことがあるんだけど、それってまさか…」
「先の2件は兄の犯行で、大鬼については私の指示です。本当にごめんなさい!」
「えええ?神様も殺人未遂犯なの?てか、召喚の魔女による襲撃事件って三条さんが黒幕だったんだ。うーん、ビックリだよ」
「怒ってるわよね?」
「いや、それほどでも…。もう昔の話だし」
そう、水の魔女を撃退したのはレイコちゃん自身だし、毒を見つけたのはアヤカちゃんだし、大鬼を倒したのもレイコちゃんだ。
僕はあまり役に立ってないんだよね。
レイコちゃんが神と三条さんに対する罰を三年間の軟禁で済ませたのなら、僕が言うことは何も無いよ。
そういうニュアンスのことを話したら、三条さんは涙ぐんで感謝していた。
「それよりもそのレイコさんという女性を護衛する方法を考えましょう」
美女先輩の言葉に、あらためて真剣な表情になった僕たちだった。




