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118 新たな依頼①

 ある日の昼休み、美女先輩と三条さん、そして僕の三人は昼食を()るためにパスタの美味しい喫茶店に来ていた。

 店の中でも奥まった位置にある四人掛けの席だったので、声を(ひそ)めれば内緒話も可能だ。そう、あえてこの席に座ったのだ。

 三条さんが小さな声で僕たちに話し始めた内容はBEAT(ビート)への依頼だった。

尾錠(びじょう)さん、津慈(つじ)ちゃん、あなたたちBEATのお力を貸していただけないかしら。命の危険があるかもしれない依頼で本当に申し訳ないんだけど、私の恩人である一人の女性の危機なの。どうかお願いします。助けてください」

 座ったままではあるものの、深く頭を下げている三条さんに僕は言った。

「とりあえず頭を上げてよ。事情を聞いてみないと依頼を受けられるかどうかは分からないんだけど、詳しく話してみて欲しいな」

 頭を上げて居住まいを正した三条さんは詳細を語り始めた。それは僕にとっては驚きの内容だった。


「九条財閥総帥である九条ヨシヒサの孫の一人、私の従妹(いとこ)にあたる九条レイカという女性からある提案をされたのよ。それがもう一人の従妹(いとこ)を殺害するための仲間にならないかってことだったの」

「え?孫同士で殺しあってるの?骨肉の争いってやつかな?大金持ちって怖い…」

「うん、おじい様の一番のお気に入りを二番目のお気に入りが殺そうとしているって言えば分かりやすいかな」

「二番じゃダメなの?」

 ある女性政治家の有名なセリフを思い出したよ。あ、前世の話だけどね。


「理由は分からないけれど、どうしてもトップに立ちたいみたい。おそらく権力欲だろうけど」

「なぜ三条さんが仲間に誘われたの?」

「言いにくいんだけど、最初にその子を殺そうとしたのが私だったからよ」

 えええ~?この優しい三条さん(本名は九条アスミさんだけど)が殺人未遂を?

 信じられないけど、本人が自白してるんだから間違いないよね。


「私の三年間の引きこもり生活って、実はこの殺人未遂に対する刑罰としての軟禁だったのよ。刑務所じゃなく、九条家の別荘だったんだけどね」

「その従妹(いとこ)さんを恨んでないの?」

「逆に感謝しているわ。だからこそ、私の『恩人』なのよ」

 僕は美女先輩に目を向けた。美女先輩は僕と目を合わせて軽く(うなず)いた。なるほど本心ってわけだね。

 魔法阻害装置(ジャマー)の影響を消すため1Gで重力範囲(グラビティエリア)を発動し、美女先輩には読心魔法を使ってもらっているのだ。これはBEATの活動で依頼人と会うときの鉄則です。依頼人が本当のことを言っているとは限らないからね。


「殺害対象である女性はまだ大学生で、この首都圏からは遠く離れた九州の福岡にいるわ。護衛の部隊は付いているはずだけど、心配なのよ。彼女が大学を卒業後、東京に戻ってきたときに暗殺を実行するつもりだとレイカさんは言っていたけど、もしかしたら予定が変わるかもしれない」

 ん?福岡?そういえば親友のレイコちゃんも福岡にいるんだよね。レイコちゃんに頼んでその女性を護衛してもらうって手もあるな。いやいや、レイコちゃんを危険なことに巻き込んじゃダメか。空手の腕前はすごいけど、魔女ってわけじゃないんだし…。


 でも、僕たちBEATって『捜索』系の案件は得意だけど、『護衛』の案件はやったことがないよ。それに『関わりたくない』『絶対に敵対できない』って言っていた九条家が相手なんだよね。

 リーダーである美女先輩はどう判断するんだろ?

「仕事もあるから常に護衛をし続けることはできないわ。襲撃の正確な日時が分かっていれば、つつちゃんが応援として参戦することもできるでしょうけど」

「ええ、そのためにも私が仲間になったふりをして、暗殺実行日時と場所を内偵するつもりです」

「つつちゃん、どう?戦闘になりそうな案件だけど、つつちゃんが嫌ならこの依頼は受けないわ」

「うーん、どんな相手と戦うことになるか…だよね。もしも暗殺者が何かの魔女だったら、少し厄介かも…」

 そうなのだ。例えば認識阻害を使う相手だとしたら、加藤さんなら分かるだろうけど、僕には気配が分からないんだよね。

 あと、魔法による遠隔攻撃も怖い。

 僕や加藤さんのような転生者って、たしかにチートな能力はあるんだけど、別に『無敵』というわけじゃないからなぁ。


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