116 誕生日④
結局、僕たちBEATが以前九条家の実行部隊(加藤さんのことね)と敵対したってことは話さなかった。
だってアスミさんは九条家の側だからね。
まぁ、僕たちもこれ以上、九条家(の秘密の実行部隊)と関わるのは避けたいところだ。絶対に勝てそうにないし…。
あ、それからアスミさんの偽名である『三条アスカ』のことは会社には知らせず、継続してその名前を使い続けることになったよ。本名を明らかにすると無用な混乱を招きそうだし…。
「尾錠さん、津慈ちゃん、ありがとう。これからも『三条』ってことでよろしくね」
アスミさんの言葉に笑顔で同意した美女先輩と僕だった。
帰宅用のタクシーを人数分呼んで、店の前で食事会がお開きになったのが午後9時頃。マイさんはタケル君がエスコートして自宅まで送ってあげるそうだ。
なお、アスミさんに対して『帰りは一人で大丈夫か』って質問したらこう返答された。
「大丈夫よ、津慈ちゃん。私にも護衛が付いてるから」
おぉぉ!さすがは九条財閥のお嬢様だ。影の護衛ですな。なんか格好良い…。
タクシーに乗り込む皆を見送る美女先輩と僕の二人…。最後に僕たち二人だけが残された状態で以下の会話をした。
「つつちゃん、三条さんの秘密を会社でポロっと漏らさないようにしてね」
「うん、もちろんだよ。それにしてもビックリしたよね。あー、でも加藤さんの言ってた『お嬢様』が三条さんのことじゃなくて良かったよ」
「そうね。まぁ、BEATの活動に九条家が関わってくることはもう無いでしょう。ヤバいから関わるなという加藤さんの忠告が実感できたわ」
「僕も同感…。絶対に敵対しちゃいけない相手だよね。蟻のように踏み潰されるだけだと思うよ」
そんな会話をしているとタクシーが来たので、二人で後部座席に乗り込んだ。美女先輩のマンションから僕のアパートへと順番に回ってもらうのだ。
それにしても今日って僕の誕生日だったんだけど、22歳になった感慨よりも『三条さんが九条家の人だった』ってことと『あの加藤さんが九条家の部隊長だった』ってことに驚かされたよ。
なんかめっちゃ疲れたかも。精神的に…。
もちろん、皆に誕生日を祝ってもらって嬉しかったのは確かだけどね。うん、皆さんありがとう。
九条家とは敵対したくないって言っているBEATの面々なんですが、将来的には九条レイカと対決せざるを得なくなります。
だってツバサちゃんはレイコさんの味方(大親友)なので…。




