103 九条レイカ③
以前訪問した魔道具メーカーの社長さんから緊急連絡がおじい様に届いたみたい。
おじい様が私にも報告された内容を教えてくれたのだ。なぜなら私の要望に関することだったから。
「レイカよ。お前の希望していた新型の魔法阻害装置についてだが、どうにも厄介な事態が発生したようだ」
詳しく聞いてみると、会社の品質管理部門に所属する女が魔法阻害装置の改良点(私にとっては改良なのよ)についての資料を社外に持ち出したらしい。マスコミに不正の告発をする直前だったみたい。…って別に不正なんかじゃないわよね?
まぁ、すぐにおじい様が『三番隊』という裏仕事専門の部隊を動かして、その女を拉致監禁したみたいだけど…。
「おじい様、どうなさるおつもりですか?」
「うむ、とりあえず『無かったこと』にするためにサンプル品の回収と証拠となる資料の破棄を命じておる。その告発者の買収に成功すれば良し。ダメなら別の手段を考えるとしよう」
えぇ~、改良版の魔法阻害装置が普及しないと、好感度上げの作業が面倒くさくなっちゃうんだけど…。
いえ、これもまたイベントの一つなのかな?なにしろ新型魔法阻害装置があれば、このゲームの難易度がめちゃくちゃ下がることになるものね。
そしてその一か月後…。
百地さんという渋いおじ様(イケオジ)がおじい様に報告している場に同席させてもらった。
ちなみに、この百地さんにも魅了魔法をかけたことがあるんだけど、好感度の上がる量が少ない上に、それが時間経過ですぐに下がってしまうという人だった。加藤さんのように全く上がらないわけではないんだけど、上がる量よりも下がる量のほうが多いという事実に魔法をかけ続けるのを断念したのよね。だって3上がっても、すぐに5下がるとかなんだもの。
「御前様、対象品の回収と証拠隠滅は完了致しました。ただ告発者自身の意志を変えることにつきましては成功しておりません」
「ふむ、そうか。レイカよ、お前はどうしたい?」
そんなの決まってる。邪魔者は排除よ。
「その女がいなくなれば何も問題はないのですよね?でしたら、いなくなってもらうことはできませんか?」
おじい様が眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。
ほどなくして百地さんに向かって指示を出した。
「その女の姿を二度と儂やこの子の目に触れないようにせよ。できるな?」
「御意」
短い返答をした瞬間、百地さんの姿が煙のように消え失せた。え?これも魔法?瞬間移動なの?…ってそんなわけないか。この世界では女性しか魔法を使えないからね。
純粋な体術なんだろうな。いや、忍者かよ!
さらに一週間後、テレビのニュースで次のように報道された。
『○○山を登山中に行方不明になっていた安西ハツミさんが本日午後、遺体で発見されました。警察によれば事件性は無く、登山中の遭難事故という見解となっております』
これって九条家の仕業よね?
ふふ、事故死に見せかけて殺したわけね。まぁNPCの一人がこのゲームから退場しただけだし、別に罪悪感は生まれない。いえ、これでゲームクリアへ向けて大きく前進したわけだから、逆に精神が高揚してくるってものだ。
もしもこの女がAI制御のプログラムじゃなくて、本物の人間だったら罪悪感を覚えることになっただろうけどね。
これで第1章のラストに繋がりました。
レイカお嬢様がサイコパスっぽい理由も判明…。この世界が乙女ゲームだと確信しているからこその言動(人命軽視)なのです。




