102 九条レイカ②
有名私立大学への入学はやはり無試験でOKだった。というか、転生してから勉強らしい勉強をした覚えがない。
まぁ、私には前世の記憶もあるし、大金持ちのお嬢様なんだから学力なんて必要ないわ。受験勉強が必要な乙女ゲームなんて聞いたことないし…。
それにしても魔法阻害装置が本当に邪魔だ。大学のキャンパスにも稼働していて、イケメン同級生や先輩の好感度を上げる作業を邪魔している。
そんなある日、おじい様の付き添いで九条グループ傘下の魔道具メーカーへ訪問する機会が訪れた。
豪華な社長室に通されたおじい様と私は、ここの社長から歓待された。
「御前様、お久しぶりでございます。お嬢様もようこそおいでくださいました。本日はどのようなご用件でございましょうか?」
「うむ、久しいな。今日は儂の孫がなにやら聞きたいことがあるそうでな。詳しいことはこの子から聞いてくれ」
「ははぁ。お嬢様、どのようなご質問でございますか?何なりとお聞きください」
頭が少し薄くなっている小太りの年配の男性、要するに見た目が典型的なおじさんなんだけど、そのおじさん(社長)が私に話しかけてきた。
私がここに来た理由って?…それはもちろん、魔法阻害装置のことについて聞きたかったから…。
「魔法阻害装置って、特定の魔法だけ阻害しないようにすることはできるのかしら?」
ド直球で質問してみた。所詮ゲームなんだから、回りくどい聞き方をしても意味がない。
おじさんは少し困った顔になったけど、同席していた秘書に魔道具の開発責任者を呼び出すように命じていた。
「ただいま詳しい者をここに呼びましたので、少々お待ちいただきたくお願い申し上げます」
ほどなくしてノックの音が響いた。
「お呼びにより参上仕りました。研究開発部長の栗林でございます」
「栗林部長、こちらにおわすお方は九条グループ総帥であらせられる九条様とそのお孫様だ。魔道具のことでこちらのお嬢様からご質問があるそうだ。失礼のないように対応せよ」
「はっ、何なりとお聞きくださいませ」
栗林部長という人が私のほうを向いて言ってきたので、先ほどの質問を繰り返した。
「うーむ、そうですね。阻害対象にしたくない魔法の魔力波を測定して、その魔力波形パターンを魔法阻害装置に登録しておけば可能かと…」
「では私の魔法を阻害しないようにしてもらえる?」
栗林部長が社長の顔色を窺い、その社長がおじい様の顔色を窺った。
「孫の言う通りにしてやってくれ」
おじい様の鶴の一声で私の望みが叶った。これで魅了し放題になるわね。
子供の頃はちょうど良い難易度だと思っていたけど、成長するにつれ魔法阻害装置の存在がウザくなってきたのだ。
この新型の魔法阻害装置が普及するまでには少し時間がかかるだろうけど、普及してしまえばこのゲームをサクサク進行させることができるだろう。
とても楽しみね。
魔法阻害装置の仕組みですが、影響範囲内で発動された魔法の魔力波を位相反転した波(逆位相の波)を生成し、それをぶつけて相殺することで魔法の発動を阻害します。
ツバサちゃんの魔法に効かないのは、重力魔法では魔力波ではなく重力波を媒体に使っているから…。




