010 会食
待ち合わせの場所に行くと、そこには美女先輩のほかに二人の女性が待っていた。美女先輩と二人っきりじゃなかったでござる。
…って、あの二人って、透視のお姉さんと認識阻害のお姉さんじゃん。
「え?え?どうして?」
混乱する僕に美女先輩が二人を紹介してくれた。
「つつちゃん、こちらの女性は銀行員の有村さん、有村ユカリさんよ。それとこちらの方が江藤さん、江藤マユミさん。認識阻害の魔女さんね」
僕は慌てて自己紹介した。
「あらためて名乗りますけど、津慈ツバサです。尾錠サヤカ先輩とは同じ会社で働いています。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、ツバサちゃん」
「よろしくね、つつちゃん」
透視の魔女であるユカリさんと、認識阻害の魔女であるマユミさんが挨拶してくれた。
ユカリさんは銀行の窓口業務を担当しているだけあって、凛とした雰囲気を持つ美人だ。にっこり笑いかけられたら、勘違いする男たちが激増しそう。
マユミさんは小動物のような可愛い系だけど、誘拐犯の全殺しを主張するような過激な人だ。
美女先輩が言った。
「この二人には昨日の件でお世話になったからね。警察署でこっそり連絡先を交換していたのよ」
ほへぇ~、さすがはできる女性…。僕とは頭の回転が違うよ。
予約していた店は待ち合わせの場所のすぐ近くで、案内された先は個室だった。秘密の話ができそうだね。てか、それが目的だろうな。
「さて、食事のメニューに関しては、すでに勝手にオーダーさせてもらっているわ。食べたいものがあったら、後で個別に頼んでね。この部屋には30分ほど誰も入ってこないようにお願いしてるから…。それじゃ、まずは私からね。私、尾錠サヤカは読心の魔女よ。精神感応系の魔法が使えるわ」
えええ?知らなかった!美女先輩が魔女だったなんて。まぁ、僕も魔女であることを隠してたけど…。
「私はご存知の通り透視の魔女よ。遠隔感知系ってことになるわね」
ユカリさんがいなかったら、誘拐されたメグミお姉さんを助け出すことはできなかったんだよね。本当に感謝です。
「私は認識阻害の魔女。サヤカさんと同じく、精神感応系ね」
マユミさんの認識阻害は、1対多の戦闘ではめちゃくちゃ役に立つよね。この魔法が無かったら、六人もの誘拐犯を制圧できなかったかもしれない。
「さぁ、あとはつつちゃんだけよ。きりきり白状しなさいな」
美女先輩のプレッシャーがすごい。
三人が自身の持つ技能を明かしているのに、僕だけがダンマリってのは難しいよね。ちなみに、美女先輩が僕に対して読心の魔法をかけないのは、この部屋の中にも魔法阻害装置が働いているからだろう。
「うう、仕方ないですね。僕の技能は重力魔法です。重力を操作できる魔法ですね」
僕は『重力範囲』の効果や制約を明かした。ただし、攻撃魔法である『重力子攻撃』については秘密にしたよ。
「なるほどねぇ。たしかに魔法阻害装置が無効になるってのは秘密にしないとまずいわね。山奥の施設に幽閉されるか、こっそり暗殺されそう…」
「でも、銀行内でその魔法を使った勇気は大したものよね。SNS全盛の今の時代、どこから情報が漏れるか分からないのにね」
ユカリさんとマユミさんの純粋な感想が僕の心をえぐるよ。でも後悔はしていない。あれが最善の行動だったと今でも思っているよ。




