9.目指すのは今とは違う自分④
うーん、久しぶりに書いたから少し変かも
――落下地点に潜む人物を殺さぬよう、あえて攻撃をずらして動きを硬直させる。
相手は、確実に落下直後の私を殺しにかかってくるので……そこを狙います。大剣をインベントリにしまい込み、突き出されてくる腕を切り落とすつもりで手刀を構える。
「はああ!」
「シッ!」
予想通り、わざと外したとも知らずに突っ込んでくるその愚か者の右腕を肘から先まで切り飛ばし、首元を掴んで喉元へ爪をあてがいます。
身じろぎすれば、動くなという意味を込めて少しだけ爪を食い込ませます。
「くっ……殺すなら、ころ――」
「黙ってください。あなたは死んで〝価値〟を得る人物ではありません」
「な、何を言っている――ひっ」
「黙ってください……そう言ってはずですが?」
恐怖に屈して暴れられるよりかは楽ですけど、冷静になられても困りものですね。とりあえず、今は命の危機を感じてもらって、屈してもらいましょう。
今度は食い込ませるのではなく、指で喉を掴むようにして傷つけていく。
そうすれば、味方連中は動けなくなります。
「は、放せ! 卑怯者!!」
「はて? 数でか弱い乙女を狙ってきたあなた方よりはマシだと思いますがね」
「なぁ……!? どこが――」
「……ともかく。そんな無駄話をしている暇はないのです。ほら、上がいるのでしょう? この者の命が惜しければ、そいつに助けを乞いなさい」
「ふ、ふざけ――ガァッ!?」
大人しくしないので、左足を切り落とします。至近距離なので血が噴き出して汚れてきますが……些事ですね。血まみれというのも、慣れてしまえば水を浴びているのとなんら違いはありません。
しかし、ここまでこちらの〝本気〟を見せているというのに、一向に動きが見えてこないのは不自然ですね……まるで、まだ手があるように、余裕が少しだけ見えています。
「――一体、なにを……」
「その質問は、僕が答えるよ」
「――ッ!?」
金色の閃光が私に向けられ、拘束していたはずの左腕が焼き落されます。
その熱量や、焼ける肉の臭いに思わず手を放してしまい……人質は解放されます。
「く、ぅ……っ。誰です!」
「僕? 僕は……何者でもないよ」
「はあ? なんですか。その気取ったセリフは」
そこには、スラムの住人に媚び諂われている金髪の青年が……私に剣を向けていた。住人達はまるで救世主でも見るかのように、その青年に集い、私の所業を伝えていく。
一体、どんな風に伝えれば、あんなにも顔を険しくするのでしょう?
「――君は、彼らがただのデータだとでも思っているのか?」
「……? 何を言っているのですか?」
かと思えば、そんな意味不明なことを言い出す始末……本当に理解できません。
「彼らは、ここで生きているんだぞ? それをまるで、玩具のようにあつかう君の行動は……あまりにも目に余る」
「……」
ああ、なるほど。あの青年は、彼らにも人権のような物があると思っているのですか。
そんな訳、ないのに……彼らの存在意義は、私たちプレイヤーを盛り上げるためにあるのです。それがNPCというものの価値です。
……なんていうか、嫌いです。この人。
人しか見ていない……視野の狭い人ですね。
なにより、そんな彼にへこへことしているNPCに腹が立ちます。
都合よく利用しているつもりなのでしょうが……あなたたちは、そうではないでしょう? そこは、そこの彼を巻き込み、自分たちは逃げるべきでしょう? ――欠陥しています。
ああ……駄目ですね。
そんな欠陥は、私は認めたくありません。
人に媚びるしか〝価値〟がないなら、どうしてあなたたちには考えるという知能があるのか……。
そんなことも分からないなら、私がせめてもの情けとして……殺して、その〝価値〟をゆがめてやりましょう。
「……っ」
「――どきなさい。あなたには用がありません」
「いいや、僕は君に用がある。通すわけにはいかない」
「自分勝手な……つくづく、嫌になります」
「何とでも言うといいさ。僕の目の前で、命は奪わせない」
気取った、青年。
むかつく顔。
気に入らない。
なので――殺すとしましょう。プレイヤーですし。
はてさて……話が進まないねぇ