6.目指すのは今とは違う自分①
ごめん、投稿するとこ間違えてた……!
――ああ、復活地点ってここなんですね。
そんな当たり前のことすら、どこか夢のように感じています。けれど、やるべきことは決まっていて、それをどうするかは分かり切っています。
あの少女を取り返すために、自分がすべきことは明白です。
「……強くなる、その手段を見つけなければ。レベルを上げるだとか、そんな正攻法ではない。ズルい手段を……」
10日という短い間に、あのモンスターに勝つためにはそうするしかない。ならば、どうするか。特殊なアイテムとか、武器とか……
けれど、この世界に降り立ってまだ1日も経っていない私ではそんなこと知る由もありません。
「ならまずは、情報の収集……そして――」
そして? 決まっています。
「ふ、ふふふっ……あはは」
あの魔女を絶対に……絶対に、許さない。私の大切な〝価値〟を奪うなら、絶対に奪い返してみせます。そうして、後悔させてやるんです。一体自分が何に手を出したのかを。
……そのために、どうやって情報を集めるのか、ですね。次の街に行く時間すら、勿体ないような気がします。
なので、この街。この街で得られると信じて今は行動しましょう。あ案内してくれた衛兵さんが言っていました。
――〝異邦人〟が集うこの街では色んなものが幅広くある、と。
「なら、この街で1番人が集まる場所に向かえばいいですよね?」
そう……狩人ギルドにです。
◆◇◆
狩人ギルド――それは、モンスターを狩ることを生業とし、報酬を得る……『職業』としての狩人ではなく、役職を示す意味での狩人たちが集い、依頼を受ける場所。
で、あるならば情報を沢山抱えていても不思議ではありません。
しかし、私はなぜか嫌われています。理由は分かりませんが、なぜか険悪な顔をされるのです。
まあ、そんなことも言ってられないので普通に入って、場合によっては脅してでも情報を頂こうかと思います。
「……あの、すみません……」
「はい、狩人ギルドに御用でしょうか?」
「……? いえ、ただ少しお聞きしたいことがえりまして。強くなるにはどうしたらいいでしょうか?」
「そうですね……レベルを上げてみてはいかがでしょうか? もしくは、当ギルドにて併設されている訓練場にて《スキル》の習得を目指してもいいかもしれません」
どうしてでしょう。普通に会話ができます。
不思議に思いつつも、この機を逃してはいけないと会話を続けていきます。
「なるほど……では最後に、持ち主に強力な力を授けるアイテムとか……そういった物が最も集まる場所はどこでしょうか?」
「――ッ!? あ、あなたね! 滅多なことをいわないでください!」
ただの質問のはずなのに、大慌てで口を塞ぎ声量を小さくする。
しかし、その反応で私の欲しいものがこの街にあると理解させてしまった。
……あの慌てようからして、なにか後ろめたい事実があるようです。
「……お引き取りください。これ以上は私からは何も言えません」
「ええ、分かりました」
とりあえず、《スキル》の獲得……その情報が得られただけでもよしとしましょう。ただ、それだけで勝てるとも思っていません。なにか、もう1つ……なにかが必要なはずです。
突破口さえ、発見出来れば……そんな甘い考えが通用するとも思えませんが、今はそこまで考えている暇はありません。
今は、とりあえず……今日の宿から探すといたしましょう。
辺りはすっかり夕暮れに包まれて、薄暗くなり人通りも多くなってきました。仕事帰りの街人が家へ帰るために、歩いています。
◆◇◆
「ふぅ……思えば、かなりログインしてましたね」
時間経過は現実と変わらないので、現在の時刻はおおよそ6時ごろと言ったところでしょう。朝から始めたので、丸1日使って遊んでいたということになりますね。
一応、16歳の身としては不健康なのでしょうが……別に学業などは気にする必要はありませんし、好きにするとしましょう。むしろたくさん時間を使えて喜ぶべきですね。
「明日は……《スキル》が獲得できる訓練場とやらに行って……町の探索ですね。こんな広い街ですし、無法者が集まる場所がありそうな気がしますし、そこにきっとなにかがあるのでしょう」
ギルドの職員が恐れていた、なにか。直感ですが私に必要なものがあるように思えて仕方ありません。しかし何の根拠もなしにそこに至ることが少し怖いです。見えないなにかが「そうしろ」とささやいているみたいにそうしようと思えてきます。
なので、少し目を閉じて探ってみれば……思考が誘導されていますね。
「……まあ、無害みたいですし、その気になれば跳ね除けられますし、放っておきましょう」
このゲームには『職業補正』というものがありまして、根拠もなくそうすべきだと確信したり、気が付いたら変な場所にいたりなどザラにあります。
ロストちゃんの職業は勇者――果たして、これが何を意味するのか……