1.降り立ち
新作! 見切り発車! 故に毎日執筆頑張る!
――私は生まれつき、外を知らない。
――鳥籠の中に捕らわれて、逃げ出すことの出来ない、哀れな少女。
――――だから、私は電脳の世界に飛び立った……
◆◇◆
「へぇー……『リアリティ・オブ・ファンタズム』……そんな素敵な世界があるんですか」
私はいつもの場所でネットを漁っていると、一つの記事に出会った。
それは、昨今の技術快進により開発が進められたVRMMOなるゲームの紹介なのですが……しばらくネットに繋がっていないせいで、どうも情報に疎くなっていたようです。
「ふむふむ、なるほど。ようは、現実でない空間で、魔法やらすごい力を疑似体験することを目的としたゲームで、五感を完全再現。さらには問題視されていた痛覚の再現も、制限もかけることで可能となり、一躍人気を駆り立てた。リリース開始から、半年経った今でもその人気は衰えず――よし、買いましょう」
その記事を流し読みして、私は即決しました。幸い、VR機器とやらは完備していますし、ダウンロードソフトにすれば、今からでも始められます。
「問題は……あの人ですが……まあ、これくらいなら見逃してくれるでしょう!」
気になるのは、私のことを管理しているあの人です。あまり私に出歩いて欲しくないようですが……私のことを知らず、不特定多数が多いオンラインゲームくらいなら許してくれるでしょう。きっと。
ということで、ポチポチとダウンロード専用の通販サイトから『リアリティ・オブ・ファンタズム』――略してROF……を購入して、環境を整えていきます。
取り分け物が少ない私の部屋なので、用意事態は直ぐに完了して、ゲーム開始に必要な準備を全て済ませます。
「では……行きましょう! その、世界へ!」
その言葉と共に、私の意識は落ちていき……目を開けば、そこは森の中でした。
……一面に広がるのは、木ばかりですが……そこから感じられる〝匂い〟や〝色〟がとても美しく……今の技術でこれほどまでに自然を作り出せるとは……驚きました。
「……で、私は何をすればいいのでしょう?」
なんてことで、やってきたのはいいですけど、案内もなしに何をすればいいのやら……っと、目の前に長方形のウィンドウが現れ詳細を書かれていました。
「えーと、なになに……『この世界に降り立った無垢なる者たちよ。そこで何をするのもお前たちの自由だ。そのための力は与えてある。我らはお前らに望むことは何一つない。ただそこにいるだけで我らの願いは叶ったのだから――』……長いですね。スキップ」
とりあえず、必要な情報だけを抜粋すると『ステータス』を開いて、与えられた職業、スキルを確認し『チュートリアル』をこなして街に向かうのが鉄則のようですね。
で、職業というのが神により与えられた使命であり天職――なんてシナリオ的説明は飛ばして、スキルや今後の成長の仕方。あとはNPCの対応の仕方も違ってくるらしいです。
スキルは、行動に補正が掛かったり特別なスキルで必殺技も放てるみたいです。
「そして、これが私のステータス……」
ステータス
名前:ロスト
種族:人間
職業:『無垢な勇者 Lv.1』
スキル:《徒手空拳》《殺人術》
称号:『勇者?』『無垢なる殺人者』
「……たしか、自動的にその人物に適したスキル、職業を与えるのですよね?」
つまり、そういうことなのでしょう。公式サイトに書いてある情報は粗方探りましたので、知っています。……まぁ、今はそんなことどうでもいいですか。
「それより……これが、チュートリアルですか」
「ゲヘヘ! おい嬢ちゃん、命が惜しくば金を出しな!」
「ぎゃはは! おいおい、見ろよあの貧相な装備をよぉ! なんなら、俺たちの夜の相手してくれるだけでもいいんだぜ?」
森の奥から、柄の悪そうな大柄な男2人が現れます。肌を隠隠そうとも思わないのか、粗末な穴だらけの服の上から上等そうな革鎧を着込んでいます。
そして、頭上にはNPCを表すマークが浮かんでいます。
「おぉ! そりゃいい! 顔はいいもんなぁ!」
「え? そうなんですか?」
そういえば、ゲームで基本となるキャラクリ――分身となるアバターの作成を行っていませんでした。おかしいですね? 説明書にはまずそうするとありましたが……
「おうおう、自覚なしかい。その空みてーな水色の髪に、輝くような金色の瞳。ちぃと起伏は足りねえーけど、バランスがいいっつーか……そう! 完成された器だな! ……って、俺は何を……」
「あぁ、なるほど。あの人ですか」
その言葉で私の容姿を自覚すると、あの人のせいだと理解しました。どうやら見透かされていたみたいですね。まあ、あの人ならそれくらいの事はやってのけますか。
「ま、前置きはここまでとしましょう。……さあ!」
「アァ?」
「――戦いましょう!」
「――ッ!?!?」
感じたことの無い、軽い感触。大地をふみしめるという、尊い行動。拳を構えて、頭に浮かぶ最適解を繰り出すために、体を動かしていく。『スキルアシスト』――スキルによって、行動の補正がかかるシステムが、戦闘初心者の私でもこうもスムーズに動かすことができます。
「かふっ……」
「? ……あは」
一瞬で近づいたことで怯んだ隙をつき、貫手で喉仏を潰し……スキルの兼ね合いもあり、一撃で仕留めることができました。
というか、今肉を抉った感触……どこか、胸に響くものがありますね。
「チッ! 戦えんのかよ!」
もう1人のほうは、間に合わず距離を取られ武器を構えられます。
見た目蛮族なのに、手にしているのはロングソードで少しだけギャップとやら感じさせますね。
「……ええ、ええ! そうですよ! 戦えるんですよ!」
ああ、素晴らしい! これが、人を殴る感触! これが、敵対するという行動! 自分で決めて、自分で動かして……何もかもを自由なこと。素晴らしい……本当に素晴らしい。
私が体験できなかった、その全てがここに! 詰まっている!
「さて……残ったあなたも、すぐに送り届けないとですよね?」
「クソがっ!」
「――ふっ!」
振り下ろしを横にずれて回避すると、すかさず切り返してきますが……1歩遅いです。
既に私の手刀は、首を目掛けて動き出しています。
《徒手空拳》の影響なのか、素手による攻撃に補正がかかるみたいで意外とあっさり首を撥ねることができました。
【レベルアップしました! 称号により経験値にボーナスが付きます! また、NPC殺害により一部のNPCに対して行動の変化が生じます!】
「へぇ、そんなことあるんですね。細かいです」
これは、注意しないといけませんね。不可抗力とはいえこの世界からしたら人殺しとなんら変わりませんし……何より他のプレイヤーからの印象も悪いでしょう。
「しかし、《徒手空拳》と、恐らく《殺人術》……この2つを持ってすれば簡単に人を殺すことができるんですね――おっと」
【チュートリアル達成! それにより街まで転移します。また、報酬として『インベントリ』、『フレンド』機能の開放!】
どうやら、この森はこのためだけに用意されたみたいですね。
街まで行く手間が省けるので、ありがたいですけど……序盤から転移とはこれまた珍しい……のではないでしょうか?
下にある評価とかブクマしたり感想など書いてくださると嬉しいですよ!